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スタンフォードの眠れる教室

2024.06.09 公開 ポスト

朝風呂は睡眠の質を下げる原因に! 「覚醒スイッチ」を切り替えるシャワーとお風呂の使い分け西野精治

睡眠不足から不眠症、夜ふかし、いびきまで、まさに現代病ともいえる睡眠のトラブル。スタンフォード大学医学部教授・西野精治さんの『スタンフォードの眠れる教室』は、そんなあなたのお悩みを科学的エビデンスをもとに解決へ導いてくれる一冊。睡眠の誤った常識をくつがえし、眠りの研究の最前線がわかる本書から、内容の一部をご紹介します。

「覚醒のスイッチ」はオフになりにくい

私たちの体には、緊張状態になって覚醒するスイッチがたくさん備わっています。

例えばよく知られているドーパミンは代表的な覚醒のスイッチ。緊急事態や自分の意思による覚醒に関わっていると考えられています。夜中に眠っていても、地震が起きたり電話が鳴ったりしたら、ガバッと起きるのはドーパミンの働きです。

ノルアドレナリン、ヒスタミン、セロトニンは、ドーパミンと同じ「モノアミン」と呼ばれる神経伝達物質で、興味深いことに、これらの神経細胞は覚醒時に活動が高くなります。同じモノアミンの仲間で脳の青班核に多くあるノルアドレナリン起始核のように、覚醒のみならず注意や情動に関係していると判明したものもあります。

……と、最近の発見を書いていくと脱線してしまいますが、ここでお伝えしたいのは、覚醒のスイッチをオンにする神経伝達物質が少なくとも複数個あるのに対して、眠りに入るオフの神経伝達物質は1~2個程度と、ごく少ないということです。

ヒスタミンも覚醒に関与することは間違いありません。睡眠薬としても用いられている抗ヒスタミン薬を服用すると、眠気が出るだけでなく注意力散漫になります。完全な覚醒には、単に目が開いているだけではなく、周囲に注意を払い、危険を察知し、迅速に判断することが要求されます。

 

進化の過程を考えれば当然です。厳しい環境では、すぐに覚醒スイッチがオンにならないと、獣に食われてしまいます。起きている時には、食料を調達する必要があります。私たちの祖先は日中、クタクタになるまで食物を探していましたから、夜はこれらの覚醒神経細胞は活動をやめ、自然と眠りにつけました。暗闇の中で楽しむための灯りも娯楽もなかったのですから、「寝つきが悪い」ということもなく、オフのスイッチは不要だったのでしょう。

ただしこういった状況でも、緊急用の覚醒スイッチは切ることができません。つまり覚醒のスイッチは、オフになりにくくできているのです。

体温を下げて脳をリラックスさせる

人間が入眠するときは、皮膚内部の血流が増え、体の表面の体温(顔や手足の体感温度=皮膚温)が上がり、やがて皮膚から放熱することで深部体温(体の中の体温)が下がります。覚醒している時、皮膚温と深部体温の差は約2℃ですが、入眠時は深部体温が下がって1.2℃程度の差に縮まります。

深部体温を下げて、皮膚温との差を縮める。これが体温による覚醒のスイッチをオフにし、入眠モードにする方法その1です。

覚醒のスイッチをオフにする方法その2は、脳をリラックスモードに変えること。寝つきが悪い人は、体温を下げて脳をリラックスさせましょう。

アメリカには湯船に浸かる習慣を持たない人も多くいます。日本人に多いお風呂好きなら、深部体温を下げてぐっすり眠るためのスイッチとして、入浴を活用したいものです。

人間はヘビやトカゲと違って恒温動物なので、深部体温の変動は大きくありませんが、昼間に高く、就寝時に低くなります。それならお風呂は入眠に逆効果だと思われる人もいると思うのですが、一時的に上昇した体温はその後下がるのです。

 

例えば、15分ほど入浴すれば、「芯から温まる~!」という言葉通り、皮膚温も深部体温も上がります。ただし熱いお湯や長風呂は禁物。刺激が強すぎて交感神経が優位になってしまいます。38~40℃のぬるめのお湯に15分程度浸かるといいでしょう。

ゆるやかに体温が上がると、体温上昇は体にとっては危険信号ですので、体温を一定に保とうとする恒常性(ホメオスタシス)の働きで汗をかき、手足から放熱するなどして、皮膚温・深部体温はともに下がり始めます。

入浴して1時間半から2時間後、元に戻った深部体温がさらに下がり、皮膚温との差が1.7℃程度と小さくなります。このタイミングで入眠すると、覚醒のスイッチがオフになります。入眠モードなので寝つきは良くなり、「黄金の90分」が手に入るというわけです。

寝る直前と朝の「しっかりお風呂」は良い睡眠の敵!

入浴後、上がった深部体温が元に戻り、さらに下がるまでの所要時間はおよそ1時間半から2時間。逆にいうと、入浴直後は下がりきっておらず、眠りにくくなります。

従って、「ああ、のんびりしていたらもう寝る時間だからお風呂に入ろう」というのは、入眠のためには良くないこと。さっとシャワーを浴びて寝たほうがいいでしょう。あるいは38℃程度のぬるめのお湯に短時間浸かることをお勧めします。

 

ちなみに朝風呂でも、入浴後の1時間半から2時間後に眠くなるので、仕事が始まる頃にぼんやりしてしまうため、お勧めできません。

良く眠るためには、お風呂とシャワーを時間帯によって使い分けるのが正解です。

関連書籍

西野精治『スタンフォードの眠れる教室』

寝られなくても大丈夫! 科学的エビデンスで長年の悩みを解決 究極の覚醒を手に入れろ 睡眠の誤った常識を覆す、眠りの研究最前線

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スタンフォードの眠れる教室

睡眠不足から不眠症、夜ふかし、いびきまで、まさに現代病ともいえる睡眠のトラブル。スタンフォード大学医学部教授・西野精治さんの『スタンフォードの眠れる教室』は、そんなあなたのお悩みを科学的エビデンスをもとに解決へ導いてくれる一冊。睡眠の誤った常識をくつがえし、眠りの研究の最前線がわかる本書から、内容の一部をご紹介します。

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西野精治

スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠・生体リズム研究所(SCNラボ)所長。医師、医学博士。株式会社ブレインスリープ最高研究顧問。

1955年大阪府生まれ。1987年、当時在籍していた大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。

1999年にイヌの家族性ナルコレプシーにおける原因遺伝子を発見し、翌2000年には研究グループの中心としてヒトのナルコレプシーの主たる発生メカニズムを突き止めた。

2007年、日本人として初めてスタンフォード大学医学部教授に就任。睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。

2019年、ブレインスリープを創業。現在は最高研究顧問を務めている。

1963年にウィリアム・C・デメント博士により創設された「スタンフォード大学睡眠研究所」は、世界の睡眠医学を牽引しており、数多くの睡眠研究者を輩出していることから「世界最高の睡眠研究機関」と呼ばれている。

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