思わず人に話したくなる「給食トリビア」満載の著書、『給食の謎 日本人の食生活の礎を探る』を上梓した、管理栄養士・学校栄養士の松丸奨さん。小学校勤務のかたわら、執筆・講演活動、テレビドラマの調理監修、海外での食育指導など、多方面で活躍する松丸さんですが、とてもユニークな勉強法で「合格率8%」の難関資格に合格したとのこと。いったいどんな勉強法なのか、くわしくうかがいました。
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子どもたちの喜んでいる顔を見たい
── 松丸先生は朝、始発に乗って出勤されているそうですね。
始業時間は7時半なのですが、早く行くといいことが多いので、自主的にそうしています。4時38分の始発に乗って、5時半には学校に到着しています。
というのも、6時半くらいに、業者さんが食材を届けに来てくれるんです。7時半に来ていたら、顔を合わせることができませんよね。自分が責任を持って発注しているんだから、電話やファックスのやりとりで終わるのではなく、顔のわかる関係でいたいなと思うんです。
だから、業者さんより早く学校に行って待ち伏せするんです(笑)。毎日、顔を合わせて「おはようございます」と挨拶していると、業者さんもいろんなことを教えてくれます。「台風であの地域の野菜がやられちゃって高くなるから、こっちの地域のにしたほうがいいよ」とか、貴重な情報やアドバイスをたくさんもらえる。
顔のわかる関係っていいなって、つくづく感じました。それから始発通いがやめられなくなって、朝は毎日、早く行くことにしています。
── 本の執筆などの仕事はいつやっているんですか?
夜、家に帰ったらずっとやっていますね。本の執筆の他にも、講演だったり、テレビ出演だったり、本業以外の仕事はかなりあるので、メニューの試作をしながら横にノートパソコンを置いてずっと作業しています。
でも、始発で出勤しているので、どうしても眠くなってしまうんですよ。だから、家では座らないようにしています。座ると寝てしまうので、パソコン作業も立ってやることが多いです。
── そこまで「給食バカ」になれるのは、どうしてなのでしょうか。
子どもたちの喜んでいる顔を見たいからですね。新人の頃は、いろいろと失敗もありました。すごく薄くておいしくないスープを出してしまったことがあるんですが、それを食べた子どもたちの顔を見たときは、すごくショックでしたね。「本当にごめんなさい」って心から思ったんです。
そういう経験があって、献立づくりにはより真剣に取り組むようになりました。子どもたちの悲しそうな顔は、もう見たくありませんから。その逆に、子どもたちが「おいしい」と言って、うれしそうに食べているのを見ると、すごく幸せなんです。それが、この仕事の醍醐味ですね。
テキストをすさまじいスピードで見る
── 松丸先生は、国家資格である管理栄養士の資格と、栄養教諭の資格をお持ちですが、やはり勉強は大変でしたか?
管理栄養士の勉強は、本当にきつかったですね。社会人として働いて、実務経験を積みながら勉強しなくてはいけないので。だから、管理栄養士の合格率ってめちゃめちゃ低いんです。私のときは8パーセントくらいの狭き門でした。
そこで自分なりに、いろんな本を読んで研究したんです。「エビングハウスの忘却曲線」ってご存じでしょうか。人は覚えたことを20分後には約40パーセント忘れる、1日たったら約75パーセント忘れるということが、研究でわかっているんです。
つまり、人はどんどん忘れていく生き物なんですね。なので、忘れていくタイミングで復習をすると定着すると言われているのですが、管理栄養士のテキストはめちゃめちゃ分厚いんです。覚えることが山ほどあって、復習なんてしている暇はない。
そこで、テキストや過去問題をすさまじいスピードで見まくる、という勉強法にたどり着いたんです。ノートも取らないし、線も引かない。ていねいに向き合って「なるほど」と理解するなんてこともしない。
「それ、本当に読んでいるの?」というレベルで、高速でページをめくっていく。何度も何度も、「薄く見る」をくり返す。そうすると、だんだん「濃く」なっていくんです。ペンは一回も持たなかったですね。
── 先生らしい、ユニークな勉強法ですね。
あと、テキストはすべて電子書籍化しました。よく、寝る前にスマートフォンやタブレットを見ると眠れなくなるって言うじゃないですか。それを逆手にとって、スマートフォンやタブレットで見るようにすれば、眠くならないと思ったんです。画面もわざと明るくしていましね。
このやり方にしてから、予備校にも行っていないのに、模試の点数がどんどん伸びていったんです。自分のやり方は間違っていないと確信して、合格まで突っ走った感じです。
── 最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。
給食の話題って、どんな人とでも話が盛り上がるんですよね。世代によっても、住んでいた地域によっても違いがあるので、「こんなメニューが出るんだ」とか、「最近の給食ってこんなふうになっているんだ」といった驚きや発見を楽しむことができます。
給食には、みなさんが知らないようないろんな謎があって、いろんな秘密があります。その答えがすべてこの本には書かれているので、読んでいて思わず人に話したくなるような面白い内容になったと思います。
誰もが味わってきた給食の本当の姿がわかる本なので、ぜひ手にとって読んでいただければ幸いです。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】松丸奨と語る「『給食の謎 日本人の食生活の礎を探る』から学ぶ給食の裏側」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
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この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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