疲れがとれにくい、意欲が低下しがち、髪のボリュームが減った、皮ふが乾燥する……。年をとるにつれ、こうしたトラブルにお悩みではないでしょうか? 著書『老いない体をつくる中国医学入門 決め手は五臓の「腎」の力』を上梓した薬膳料理家の阪口珠未さんは、中国に留学していたとき、師事していた先生に「若さの秘訣」を教えてもらったといいます。それはいったいどんな秘訣なのか、阪口さん本人にうかがいました。
* * *
先生が教えてくれた「3つの秘訣」
── 本書の「はじめに」にある、阪口さんが中国に留学していたときに師事されていた、薬膳の先生のエピソードが印象的でした。
ありがとうございます。その先生は、お年を召した男性の方だったのですが、肌が美しくて、いつも元気で、世界中の学会を飛び回っているような方でした。
あるとき、先生に「どうしてそんなに肌がきれいで、いつも元気なんですか?」とうかがったんです。そうしたら、「3つの秘訣がある」と教えてくれました。
1つめは、「毎日、ひと握りのナッツを食べること」。ナッツには種子から大きな木へ成長するエネルギーが詰まっている、だから食べると身体を若々しく保つことができると教えてくれました。
2つめは、「骨つきの肉を食べること」。豚足をお酢で煮たものを奥さまにたくさんつくってもらって、毎日少しずつ食べているとおっしゃっていました。そうすることで、肌がプリプリになるそうです。
先生は、「年寄りはきれいじゃないとダメなんだ」とおっしゃっていました。まわりの人たちから、「こんな年寄りになりたい」と思われなくてはいけないと。それで骨つきの肉を食べて、肌の美しさを保つようにしていたそうです。
── 最後の1つはなんですか?
「食べすぎないこと」です。先生はいろんな学会を飛び回っていましたから、会食をする機会がよくありました。そういう日は、「今日はたくさん食べたから、もう食事はおしまい」と考え、夜はネギとショウガのスープだけ飲んで寝ちゃうんです。
すると、翌日にはお腹が空っぽになって、朝から元気に動くことができる。「もし、他の人みたいに3食、お腹いっぱい食べていたら、僕は今ごろこの世にいないよ」と笑っていました。
「この3つを守ると、僕のように元気でいられるよ」と、先生はおっしゃっていました。この教えは、私に大きな影響を与えました。なので、本のいちばん初めに紹介しようと思ったんです。
腎は生命エネルギーの「バッテリー電池」
── タイトルにある「五臓」とは、そもそもどういうものなのでしょうか?
中国医学の言葉で、「肝・心・脾・肺・腎(かん・しん・ひ・はい・じん)」の5つの臓器を指します。ただし、西洋医学のそれとは少し違っているんです。
たとえば「腎」は、西洋医学では身体においてろ過を担う臓器とされています。いるものといらないものを分ける働きですね。しかし、中国医学ではそれだけでなく、腎を生命エネルギーの「バッテリー電池」としてとらえます。私たちが持って生まれたエネルギーを宿していると考えるんです。
この生命エネルギーを、中国医学では「腎精」と呼びます。腎精が減ることで老化が進み、病気になり、そして腎精が尽きると死が訪れる。逆にいえば、腎精を目減りさせずに、うまく長持ちさせることが、若さを保ち、いつまでも元気でいるための秘訣だということです。
── 中国医学では、臓器と心はつながっていると考えるそうですね。
はい、たとえば腎は「恐れ」という感情とつながっています。年をとると、新しいことに挑戦するのが怖くなるときがありますよね。この「怖い」という感情は、実は腎の衰えによって出てくる感情でもあるんです。
ですから腎をケアして、腎精をチャージすることで、恐れや不安をやわらげることもできるというわけです。
逆のアプローチとして、恐れという感情に挑戦することによって、腎精をチャージすることもできます。自分が怖いと感じているもの、不安に思っていることに、思い切って飛び込んでみる。すると、腎にエネルギーが送られて、若さを保つことができるんです。
── 中国医学には「医食同源」という言葉がありますが、腎精をチャージするにはどんなものを食べたらよいですか?
「精をつける食材」というと、ヤマイモやウナギなどを思い浮かべるでしょう。実は中国医学でも、それらは腎精をチャージする効果があると言われています。
西洋医学が入ってくるまでは、日本でも中国医学が主流でした。それで昔の人は、「腎精をつける食材」としてヤマイモやウナギを食べていたんです。ところが、いつしか「腎」の部分が取れてしまい、「精をつける」と呼ばれるようになったんです。
──「精をつける」というと、男性向けのように思われがちですよね。
エッチな響きになってしまうんですよね(笑)。でも、男性向けと思われているスッポンも、中国医学では腎精をチャージする食材です。男女問わず、食べることで腎精をチャージすることができるんです。
あとは、「黒い食材」ですね。五臓にはそれぞれ違った「効く色」があるんですが、腎は黒なんです。具体的には、海藻、黒豆、黒ゴマ、黒米。こうした食材は、腎精をチャージする効果があります。
中国医学では、すべての食材には薬の効果があり、身体の不調は食べもので治すのが基本です。黒いものを見たら、ぜひ積極的に食べていただきたいですね。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】阪口珠未と語る「『老いない体をつくる中国医学入門 決め手は五臓の「腎」の力』から学ぶ体内から作る健康法」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
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この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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