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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2023.02.17 公開 ツイート

「2040年の日本」はもはや先進国ではない? これから経済成長できるかが運命を分ける 武器になる教養30min.編集部

20年後、日本はいったいどうなっているのか……。新刊『2040年の日本』を上梓した、経済学者で一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんは、「このままでは日本は先進国ではなくなる」と警鐘を鳴らします。これからやってくる危機とは、どんなものなのか? どのように乗り越えればよいのか? 重要なヒントをいただきました。

*   *   *

日本が先進国でなくなる日は近い?

── 2040年の世界において、日本の地位はどうなっていると思いますか?

(写真:iStock.com/metamorworks)

日本の経済規模はいま、米国、中国に次いで世界第3位です。しかし2040年には、第5位から第6位にまで下がるでしょう。インドなどの国々では、日本よりはるかに人口増加率が高く、経済成長が著しいからです。

また、一人当たりGDPや賃金といった、豊かさの面でも日本の地位は下がっていくでしょう。

世界が成長していく中、日本だけ成長が止まっている。そのため、豊かさの面でも世界からどんどん遅れをとることになる。日本はいずれ、先進国という地位を失うかもしれません。私たちはいま、そんな危機に直面しているのです。

 

── そうならないために人材育成をしなくてはいけないと、先生は本の中で書かれていますね。

人材は、経済成長にとってもっとも基本的な要素です。ところが残念なことに、日本の人材の質はどんどん低下しています。このことは、さまざまな国際比較のデータで明らかになっています。

人材の質を回復するための、もっとも基本的な方法は教育です。しかし、日本の教育システムがそうした要請に応えているかといえば、必ずしも十分とはいえません。さらに重要なのは、日本の社会が高度な専門家を、給与面などで優遇しているかということです。

 

── 米国では資格を持っていたり、大学院を出ていたりする人を、きちんと優遇していますね。

その通りです。先端的なIT企業のトップエンジニアは、年収1億円、2億円といった、信じられないほど高い給与をもらっていることが珍しくありません。

ところが日本は、1000万円がやっとといったところです。平均で見れば、米国の給与は日本の給与のせいぜい2倍です。しかし、高度な専門家に支払う給与は、10倍、20倍もの差がついている。

日本の企業の報酬体系も、米国のように変わっていくべきです。もちろん実現するのは簡単ではありませんが、このような状況を変えていくことは、日本の将来にとって大変重要な課題だと思います。

社会保障の問題は経済成長で解決できる

── 社会保障についても、日本は危機的状況にあると先生はおっしゃっています。しかし政府は楽観的というか、現実を直視しているように見えません。

(写真:iStock.com/marchmeena29)

この問題は本書の主要なテーマです。数字を使って非常にくわしく議論しています。

日本が直面している明らかな問題のひとつは、若い人が減って、高齢者が増えていることです。年金にしろ介護にしろ、社会保障はおもに若い人たちが負担をして、高齢者が恩恵を受けるしくみです。したがって、将来の社会保障の財政状況が厳しくなるのは明らかでしょう。

重要なのは、費用の負担と便益の構造をどうしていくかです。社会保険料や税金を増やしていくのか、あるいは便益を減らしていくのか。それに関する議論が必要です。

しかし現実には、この問題についてほとんど議論がなされていない。最近、政府は後期高齢者の医療費の自己負担額を少しだけ増やしましたが、この程度で解決できる問題ではありません。思い切った改革が必要です。

 

── 具体的には、どうすればよいのでしょうか?

この本で議論している「なぜ成長が必要なのか?」というテーマが、この問題に深くかかわってきます。今後、若い人たちの負担が大きくなることは避けられません。けれども、経済が成長すれば所得が増えるわけですから、相対的に若い人たちの負担を小さくすることができます

成長によって、社会保障の問題を解決することができるわけです。このように、社会保障の問題を考える際に、日本がこれからどれだけ成長できるかがもっとも重要なポイントなのです。

 

── 将来的には、日本にもGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような世界的企業が誕生する可能性はあるのでしょうか?

GAFAのようなきわめて高度な技術を持った企業が日本に登場することは、残念ながら考えられません。優秀な人材を育てる体制もできていないし、新しい企業が成長できる社会的なしくみもない。

たとえば、グーグルやメタのビジネスの基本はビッグデータですが、日本にはビッグデータを集めるしくみがありません。

日本からGAFAのような企業が誕生すれば、素晴らしいことですが、残念ながら不可能と考えざるを得ません。したがって、もっと地道な成長の道すじを日本は考えるべきです。

このように、日本の将来は決して楽観できるものではありません。そのときに大切になってくるのが、国民一人ひとりが問題意識を持つことです。問題意識を持たないかぎり、政治を動かすことはできません。

この本で、日本が危機に直面していることをぜひ知っていただきたいと思います。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】野口悠紀雄と語る「『2040年の日本』から学ぶ日本の危機」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

 

書籍『2040年の日本』はこちら

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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。

この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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武器になる教養30min.編集部

AmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』を制作する編集部です。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

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