
著書『なぜ理系に女性が少ないのか』を上梓した、東京大学教授の横山広美さん。「科学技術社会論」という、幅広い分野に分野にまたがる研究をされている横山さんは、どのように大量の情報をインプットしているのでしょうか? 学生や研究者はもちろんのこと、ビジネスパーソンにも役立つであろう極意に迫りました。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】横山広美と語る「『なぜ理系に女性が少ないのか』から学ぶジェンダー意識」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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インプットの入り口に新書は最適
── このポッドキャストでは、ふだんの勉強法や読書法など、「インプットでどのような工夫をしているか?」についてもお尋ねしています。先生の研究は、幅広い分野にまたがる内容ですが、何か心がけていることはありますか?

やはり、一番の情報源は本ですね。今回、新書を書かせていただいて光栄に思ったのは、私自身、すごく新書にお世話になっているんです。
私の研究は学際的なので、研究を進めるうえでは国際政治から心理学まで、さまざまな分野の情報が必要になるのですが、何か気になるテーマがあったとき、一番初めの情報源として新書はとても役に立っています。
専門の領域は論文になってくるのですが、「グーグル・スカラー(Google Scholar)」で論文を検索するところからスタートしていきます。
あとはオピニオン誌ですね。いくつかのオピニオン誌は、なるべく目を通すようにしています。新書、論文検索、オピニオン誌。これらを複合的に活用して、インプットに努めています。
(情報源で言い忘れたのですが、SNSも活用しています。最近は論文誌(ジャーナル)がメトリックスといって、SNSからのアクセスを重視しており、ツイッター投稿時に論文の冒頭部を画像でいれたり、私がエディトリアルボードを務めているJournal of science communicationはFacebook投稿の際にイラストを入れたりして、アクセス増を目指しています。そうした効果で、私もツイッターに流れてくる論文をチェックすることが多くなりました。注:著者追記)
── 本は紙と電子書籍、どちらで買うことが多いですか?
私は紙のほうが好きですね。気になったページに折り目をつけたり、線を引いたり、自分の痕跡を残しやすいところが紙のいいところです。自分が読んだことの証として、最後のページには日付とサインも入れておきます。
そうやって読んだ本は、何日か経ってからもう一度、読み直すようにしています。中でもお気に入りの本は、机のまわりにずらっと並べておいて、日常的に学び直しができるようにしています。
ただ、海外の本は、電子書籍で購入することが多いですね。紙だと手もとに届くのに時間がかかりますから。あと、電子書籍の場合、検索ができるのも大きな利点です。何百ページもある英文の本をじっくり読むのは時間的に難しいので、キーワードで検索をかけて、必要なところだけを読む場合もあります。
── 書店で本を買うことも多いんですか?
はい、本屋さんにはよく行きます。大きな本屋さんに行って、いろんな分野の棚を眺めながら歩くのが好きなんですよ。自分の専門分野だけでなく、趣味のコーナーとか、お料理のコーナーとか、あらゆる棚を見てまわって、気になる本があったら手にとってみる。
進路で悩んでいる学生さんから相談を受けることがあるのですが、私はよく「本屋さんに行ってみたら」とアドバイスしています。「大きな本屋さんに行って、うろうろ歩いていると、きっと自分の好きな本が見つかって、そこから将来の夢へとつながるかもしれないよ」と。
でも、最近は大きな本屋さんが次々と閉店していて、少し寂しい思いをしています。
平等な環境をつくるのは私たち一人ひとり
── でも、紙の本が多いとお部屋が本で埋まってしまいますよね。

それをどうするかが悩みです(笑)。自宅では「このスペースだけ」と決めて、あとはぜんぶ研究室に持っていくようにしています。オピニオン誌についてはあっという間にたまってしまうので、ある程度、期限を決めて処分するようにしています。
正直なところ、本の整理はきちんとしていません。リストをつくったりもしていないので、「積ん読」のまま、同じ本を2冊、3冊と買ってしまうこともありがちですね。重複してしまった本は、学生さんに「よかったら持っていって」とさし上げたりしています。
── 最後になりますが、リスナーのみなさんへメッセージをいただけますか。
私はさまざまな分野の研究をしていますが、今回は「なぜ理系に女性が少ないのか」というテーマでお話しさせていただきました。ここまで述べてきたように、問題はいろいろとありますが、一人ひとりが才能を豊かに発揮できる社会になるために、まず必要なのは平等な環境です。
そして、平等な環境をつくり上げていくのは、私たち一人ひとりです。ぜひ、みなさんと一緒に社会をよくしていけたらと思っています。今日はありがとうございました。
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。
この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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