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15歳からのリーダー養成講座

2023.01.06 公開 ツイート

ばらばらの意見をまとめるために「多数決」を使うのはNGな理由 工藤勇一

政治の世界や会社だけでなく、家族や趣味の仲間、地域のコミュニティなど、複数の人が協力して物事を進めるときに、リーダーが最も頭を悩ませることのひとつは、「ばらばらの意見をまとめること」。これについて、ほとんどの人がしている「大きな誤解」があります。それは……。数々の大胆な学校改革を実現し、各界からその手腕が注目される工藤校長が「リーダーシップの基本」を講義した『改革のカリスマ直伝! 15歳からのリーダー養成講座』から一部抜粋してお届けします。

*   *   *

(写真:iStock.com/MichaelJay)

この回の最後にもうひとつ、ものすごく重要な話をしておきます。多数決についてです。

みんなの意見をまとめるときに多数決を使うことは、小学校のときからずっとやってきていると思います。当たり前になりすぎていて、大人であっても「多数決こそが正義だ」と信じている人がほとんどです。

しかし、多数決は大きな欠点を抱えています。それは少数派の意見をバッサリ切り捨ててしまうことです。

「日本の議会も多数決じゃないか」という反論もあるでしょう。

たしかにそうですね。日本の政治システムが採用しているのは議会制民主主義と言って、僕たちが議員を選ぶのも、その議員が国の政策を決めるのも多数決です。

民主主義がフランスで生まれるまでの社会は、一部の特権階級が国全体の物事を決めて、国民はそれに従うだけという仕組みで動いていました。これを封建制度や専制主義と言います。

そんな時代から比べると、議員を選挙で選べるいまの時代は、大きな前進をしたといえます。

政治の世界で多数決を使うのは、国として議論すべき課題が膨大にあり、限りある時間のなかで判断を下していかないと、結果として国民の利益を損なうからです。

要は、多数決とは完全に妥協の産物であって、それ自体が理想的なゴールではありません。

でも実際には、このことを誤解している人が少なくありません。多くの人たちが、「多数決による決定=総意」だと勘違いしています。

民主主義のゴールは、全員がOKなものを探し出して、誰一人置き去りにしない社会をつくることです。もちろんその答えは簡単には見つかりませんが、対話を通して頑張って探し出すものなのです。

それなのに、クラス単位や学校単位のように、国と比べたらはるかに小さい組織で物事を決めるときに多数決を使うというのは、あまりにも乱暴だと僕は思います。なかには意見の対立をジャンケンで解消させる先生もいますが、これは論外です。

多数決を使っていいのは、基本的には、「どの案に決定しても全員がOKな場合」です。

たとえば体育祭の種目を決めるとき、「Aもいいけど、Bもいいよね。でも時間が限られるから、ひとつしか選べないね」という場合は、多数決でもジャンケンでも使えばいいのです。

今回の話をまとめます。

チームで何かをはじめるときに最初にやるべきなのは、全員がOKな最上位目標を対話を通して探し出すということです。どれだけ時間をかけてもいいので、そこで合意形成をすることを最優先してください。

それができたら、みんなで実現手段を考える対話をしていきます。アイデアがどんどん出てきたら、その都度、最上位目標に照らし合わせて「これって果たして目的に合ってるの?」というチェックを、みんなで行っていきましょう。

*   *   *

この続きは『改革のカリスマ直伝! 15歳からのリーダー養成講座』でお読みください。

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工藤勇一 横浜創英中学・高等学校校長

横浜創英中学・高等学校長。1960年山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校長(~2020年3月)。教育再生実行会議委員、内閣府規制改革推進会議専門委員、経済産業省産業構造審議会臨時委員など公職を歴任。麹町中学校では、宿題廃止・定期テスト廃止・固定担任制廃止などの教育改革を実行し、教育関係者だけでなく、経営者・ビジネスパーソンの間でも注目を集める。初の著書『学校の「当たり前」をやめた。生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革』(時事通信社)は10万部を超えるベストセラーに。他に『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(SB新書)、『学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか』 (鴻上尚史氏との共著/講談社現代新書)、『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』(苫野一徳氏との共著/あさま社)など。

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