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ぼけの壁

2023.01.04 公開 ツイート

認知症・老人性うつを正しく知って「80歳の壁」をラクラク突破。「ぼけたら不幸」ではないんです! 和田秀樹

80歳の壁』が、2022年の日販(総合)、トーハン(総合)の年間ベストセラーランキングでいずれも1位となった、和田秀樹さん待望の新刊『ぼけの壁』がついに発売となります。医師で老年医学の第一人者である和田さんが、「ぼけ」にまつわる誤解を解き、具体的な情報と対応をまとめました。60歳を過ぎ「健忘」に心あたりのある人にも、老親が心配な子の世代にも。これまでになかった画期的な一冊の「はじめに」を大公開します!

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長年、高齢者の精神医療にたずさわってきましたが、正直申し上げて、ここまで増えるとは思いませんでした。わが国の認知症患者の数が、ついに1000万人の「大台」に乗ろうとしているのです。

厚生労働省の、認知症患者数の推移予測によると、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年、認知症患者は、730万人になると予測されています。そして、これに、MCIと呼ばれる軽度の認知障害を含めると、1000万人の大台を超えることが、ほぼ確実となったのです。なお、MCIの60%は、3年以内に認知症を発症するとされています。

さらに、認知症とともに、高齢者の「脳」の大敵である「老人性うつ」傾向の人は、抑うつ気分の人も含めると、300万人はいると、私はみています。高齢者の人数は3640万人(2021年)ですから、高齢者の脳は、かなりの確率で、これらの二つの病気のいずれか、あるいは双方に見舞われることになるのです。

私は、70歳以降の「人生の質」は、この二つの脳の病をどう防ぎ、どう乗り切るかにかかっているとみています。この二つの病を防いで、「脳の健康」を保つことが、「80歳の壁」を乗り越えるための核心部分といっていいと思います。

これら二つの病気のうち、「認知症」は、残念ながら、現代の医学では、完全には予防することや治療ができません。ただし、こうすれば「ある程度、予防できる」、あるいは「進行を遅らせることができる」という方法は、かなりわかってきています。

一方、「老人性うつ」は比較的対処しやすい病です。今の医療、またはその知見にもとづく生活習慣の改善などによって、かなりのところまで、予防と治療が可能になっています。

さらに、そうした「病名」はつかなくても、高齢者の脳は、日々萎縮し、衰えていきますが、そうした加齢による衰えも、ライフスタイルの改善によって、進行を食い止めることができます。脳は、人間の臓器のなかでも、頑強な部類に入ります。日々ちゃんと使ってメンテナンスをしていれば、そう簡単には衰えないのです。

ここでひとつ、声を大にして申し上げておきます。脳の老化の最良の予防薬となるのは、「生きたいように、楽しく生きる」ことです。そうすることが、認知症やボケの進行を遅らせることは、疫学的にはっきりわかっています。残りの人生に「今日よりも若い日」はありません。老いたから何もしないのではなく、今できることをする、始める、楽しむことが、脳寿命を延ばします。

そこで、本書では「80歳の壁」の核心部分を乗り越えるため、「認知症」と「老人性うつ」に関する知識(症状、治療法、予防法など)を紹介していきます。先に上梓した『80歳の壁』(幻冬舎新書)が体と頭、トータルに健康寿命を延ばす本ならば、この本は「脳」にテーマを絞って、その健康寿命を延ばす心得を紹介する本といえます。

「認知症と老人性うつの壁」、ひらたく言えば「ぼけの壁」をらくらくと乗り越えて、最期のときまで、幸せで明るい老後を過ごすため、本書をお役立ていただければ幸いに思います。

関連書籍

和田秀樹『ぼけの壁』

幸せな老後、残念な老後を左右するのは「ぼけ=脳の老化」。その二大原因は認知症と「老人性うつ」だ。認知症は実は進行がゆっくりで、決して「かかったら人生おしまい」ではない。他方、「老人性うつ」は死に至る病で認知症より怖いとも言えるが、適切に治療すれば治る病気だ。そもそも脳は臓器の中でも頑強にできていて、正しく知ってメンテナンスすれば、ぼけが始まっても簡単には衰えない。ベストセラー『80歳の壁』の著者が、老化を遅らせて明るく前向きに過ごすための、脳の正しい使い方を教えます!

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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