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ゴルフは名言でうまくなる

2022.11.20 更新 ツイート

第238回

「疑わしいことは、しないこと」――中部銀次郎 岡上貞夫

プレー中の練習器具使用で失格に

2014年のAT&Tペブルビーチナショナルプロアマでのことだ。第2ラウンドの終了後、本大会で2011年に優勝しているダレン・アンドリュー・ポインツ選手に、PGAツアーのオフィシャルから一本の電話が入る。

「あなたを失格とします」――いったい何が起こったのか?

ポインツ選手はこの日のラウンド中、雨のなか、ティーグランドで15分から20分待たされた。プロアマ戦ではよくあることだが、通常のトーナメントよりプレーがかなり遅くなっていたのだ。

そこで、ポインツ選手は数週間前にコーチからもらった、テニスボール大のスウィング矯正用スポンジボールを右脇の下に挟んで素振りをしたのだった。

USGAのルールの14-3では、「公式戦の最中にプレーヤーは人工的に考案されたもの、不自然な道具、マナー的に不自然なものを使用してはならない」となっている。

どうやら、スウィング矯正用のスポンジボールが「人工的に考案された不自然な道具」とみなされたようだ。

もしもポインツ選手の使用したものがヘッドカバーやグローブであったならば、練習のための道具ではないからセーフだったのにとの同情の声もあったが、裁定がくつがえるものでもない。

ポインツ選手は、「ドライなスウィングをするためにあのスポンジを使って身体をほぐしていた」と釈明したが、自分の間違いを素直に認めたうえで「でも、故意に違反をしたのではない」とコメントした。

「何もそこまでしなくても」と思うかもしれないが、公式競技では年に何回かこの手の違反で失格になる選手が出る。審判がいないゴルフ競技では、自分がルールの番人にならなければいけないということだろう。

このように、公式競技では自らがルール違反にならないように、自分自身でルールに抵触しない行動管理をしなければならない。私も今年の春からクラブ競技に復帰したが、ルール違反での失格はゴルファーとして恥ずかしいので、かなり気をつかうようになった。

とくに競技中の練習に関するルールはわかりにくく、ポインツ選手のようにうっかり違反してしまうことが多いので要注意だ。

意外と知らない「練習ストローク」禁止のルール

自分のクラブを使って練習スウィングをする場合、ただ素振りをするだけでは当然ながら違反にはならない。ただし、練習器具の使用など、人工の機器または異常な携帯品を使用したりすることでルール違反になる。また、素振りでライを改善してしまったり、ボールを動かしてしまったりしても違反となる。

ライの改善は、素振りでなくとも、たとえばアドレスの具合を確かめながらクラブのソールでボールの手前側を押さえつけて平らにするような行為は、程度がひどいと咎められることがある。

とくにラフでは芝の葉が長いので、ボールのそばの芝をソールで押さえつけるようにアドレスする人が多いが、厳密なことを言えばクレームされかねない。表題の言葉を残した中部銀次郎さんは、ラフではバンカーショットのときと同じように、明確にソールを浮かせてアドレスしていたそうだ。

練習スウィング(素振り)に似ているが、これとは別の練習ストロークに対するルールはさらにわかりにくい。まずは、練習ストロークの定義から頭に入れておきたい。

ルールでは、「練習ストローク」とは 練習のためにボールを打つ意図を持ってクラブを振り 、ボール(プラスチックの練習用ボールなども含む)を打つ行為と定義されている。

ホールをプレーしている間(ティーオフからホールアウトまでの間)に、たまたま見つけたロストボールなどを持っているクラブでポンと打ってしまうと、「練習ストローク」とみなされる。スウィングして打った場合はもちろん、邪魔でまぎらわしいからとコース外へ軽く転がして打ち出したような場合でも2打罰となるので要注意だ。

ここでややこしいのが、ホールをプレーしていないとき、つまりホールアウトして次のホールをティーオフするまでの間の「練習ストローク」だ。この間のパッティングとチッピングに関しては、ボールを実際に打ってもルール上は許されているのだ。

よって、ホールアウトしたばかりのグリーンで外したパットをもう一度打ってみるのはセーフ、昼食後に練習グリーンで練習するのもOK、前の組がプレー中なのを待ってティーイングエリアで小さなアプローチ練習をするのもOKだ。

ただし、競技の主催者はプレー進行を早めるためなどの理由から、ローカルルールでこれを禁止することができる。禁止されているのを知らずにうっかり練習してしまうと2打罰、そのまま申告せずにスコアを提出してしまうと失格となる。

また、許されているのはパッティングとチッピングだけだから、昼食時間中にドライビングレンジへ行ってボールを打つのは「練習ストローク」で違反となる。

松ぼっくりを打ったら違反?

では、ホールをプレー中、たとえばセカンド地点で前の組のプレーが終わるのを待っているようなとき、近くにあった松ぼっくりを打って練習スウィングをした場合はどうか。

これは、以前のルールでは明確な記載がなかったため、たびたび議論になったものだ。しかし2019年に改正されたゴルフ規則のオフィシャルガイドで、練習として「プラスチック製の練習ボールなど、ゴルフボールと同様のサイズのその他の種類の球を打つこと」は禁止する一方で、「ティーや自然物(石や松ぼっくり)をクラブで打つことは練習ストロークではない」と明記された。

つまり、松ぼっくりはボールと同じようなサイズだが、プラスチックボールのような人工物ではないので、枯れ葉と同じく大きめのルースインペディメントになるわけだ。

ルールというのは、熟知しているつもりでも、ついうっかり違反してしまうことが起こるものだ。とくに、ホールをプレーしている間は、疑わしい練習スウィングや練習ストロークはしないほうが無難だろう。

最後に、ポインツ選手が使ったような練習器具・用具についても触れておこう。これは練習用やトレーニング用といっても、一応クラブの形をしていて打とうと思えばボールを打てるものと、クラブとはみなされないものに大きく分かれ、扱いが異なる。

クラブの形をしている練習器具で、ルール適合クラブとして使用できるものは、それを含めて14本以内であれば、携行してもスウィングしても実際にそれでボールを打っても違反ではない。つまり、ルール適合クラブそのものとして取り扱われる。アイアンの形をした少し重い練習クラブなどが、これに当たるだろう。

クラブの形をしていてルールに適合していない練習用クラブは厄介で、14本以内でも携行しているだけで違反、使用してボールを打ってしまうと失格となる。違反クラブとしての取り扱いになるからだ。

一方、素振り用バットなどクラブの形をしていない練習器具は、キャディバッグに入れて携行しても無罰だが、それを使ってスウィングするとポインツ選手のように失格となる。加重用のリング型ウェイトやスウィング矯正ベルトなども、持ち歩くことは罰にならないが、それを使用して素振りをすると失格になる。

もちろん、競技でなければここまで厳格である必要はないかもしれない。しかし、日頃からプレー中の練習で違反する癖がついていると、コンペやクラブ競技でもやってしまいかねないだろう。

疑わしい練習スウィングや練習ストロークはしない、余計な練習器具は持ち込まないことが無難だといえる。銀次郎さんの言うとおり、「疑わしいことは、しないこと」が一番だ。

 

参考資料:
・「素振りで失格!?こんなルール知っていましたか?」Gridge https://gridge.info/article/movie/detail.php?id=8581

・「ラウンド中の練習|ゴルフルール解説」ゴルフ豆辞典 https://www.mamejiten.com/golf/diary/R/035.html

・「【ゴルルとルール】待ち時間に松ぼっくりを打ったら2打罰と指摘。これって練習ストローク?」Myゴルフダイジェスト、2021年9月8日 https://my-golfdigest.jp/rule/p37295/

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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