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聞き出す力 「まさか」「ウソでしょう」で秘密の話が聞ける

2022.06.30 公開 ポスト

「魔が差したんやな…」刑事が自供を引き出す“寄り添い”のテクニック近藤勝重(コラムニスト、ジャーナリスト)

人づきあいに苦手意識はある人は、もしかしたら雑談が苦手で、そんな自分にダメ出しして疲れてしまっているだけなのかも。聞き上手になるコツを覚えておくと、コミュニケーションは難なくうまくいきます。伝説の特ダネ記者・近藤勝重さんが「この人なら話してもいい」と思わせる秘訣を解説する書籍『聞き出す力 「まさか」「ウソでしょう」で秘密の話が聞ける』より、会話のヒントを抜粋してお届けします。

*   *   *

「まさか」「ウソでしょう」の驚嘆で、秘密の話が聞ける

前に、竹下登元首相の「ほーっ」「なるほど」「さすが」「なんと」「まさか」との相づちを打ちつつの話法を紹介しましたが、これらの言葉の中で人の話を聞き出すうえで一番効果があるのは「まさか」なんですね。

「まさか」と言葉を返されると、相手は信じてもらいたい一心で「いや、先生。本当なんですよ」と、それまでの話にプラスして秘話も含む話まで口にする。竹下氏の狙いはそこにあるわけで、居ながらにして極秘の政界情報を得て、長年天下人として君臨していたのです。

聞き出す話法では、作家の遠藤周作氏が『ぐうたら人間学』(講談社文庫)でこんなことを言っています。

インタビューにはコツがいる。私は対談をしているうちに次第にそれがわかってきた。

たとえば、ある有名な人の夫人と対談をしていた時、その夫人が若い頃、よく主人に叩かれましたわ、とユーモアをまじえて告白された。

こういう時、

「やはり、そうですか」とか「今でもそんなこと、ありますか」などと聞いてはならない。相手はすぐ、自分のこの告白が御主人に迷惑のかかることを怖れ、

「でも若い頃の話ですわよ。今はそんなことありませんの」

と話を抑えてくるだろう。

だから、こういう時は、全くふしぎそうな表情をして、

「そんな話、信じられん。嘘でしょう。信じられん」

と否定してみせるのである。

すると相手は、

「いいえ、嘘じゃありませんわよ。こんなことも本当にあったんですもの」

と具体的な実例をあげてくるのである。

これに似たことは僕たちの日常の会話でも自然に出てきますよね。

「このブランドバッグ1万円よ」

「えー、ウソでしょー」

「〇〇さん再婚するらしいよ」

「えっ、ウソ!?」

本当にウソだと思っているわけではなく、まさか、信じられないと思うことについて、人は「ウソ!?」がつい口から飛び出すようです。今は「マジ?」とか「マジで!?」とも言いそうですが、ともかく「ウソ!?」と言われると、相手は待ってましたとばかりに、「いや、ホント」と情報をとくとくと話し出します。

もしこれが「へー、そうなんだ」と納得されたらどうですか。「そう、そうなんだよね……」と、盛り上がっていくはずだった話もしぼんで、面白味のない会話になっていきそうですね。

人との会話や、話を聞き出す時には、驚いた調子で「ウソでしょー!?」「本当ですか!?」をうまく取り入れると、相手はもっと話したくなり会話が弾んでいきます。

言葉ひとつで人の気持ちは変わる。聞き出すうえで必ず頭に入れておいてほしい重要ワードです。

「魔が差した」のうまい使い方

魔が差す。ふと、良くない考えが起こることで、ほんの出来心ですよね。

捜査員によると、この言葉もそれなりに自供を引き出す力になるようです。

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信念に基づいて自らの行為を正しいと信じてなすような確信犯なら、出来心も何もあったものじゃないでしょうが、人間、良くないこととわかっていながら悪事に手を染めることは、ままあるものです。

「まあ……魔が差したんやな」

取り調べの際にこう言うと、相手は何かわかってもらえたような気になるのでしょう。小さくうなずいて自供する、という話を捜査員から聞いたことがあります。言ってみれば、事実を聞き出すきっかけになる言葉なんですね。

犯罪とは別問題の事例で、こんな話を上方のある落語家さんが話してくれました。

不倫が奥さんにバレて問い詰められた時、こう言いました。

「つい、魔が差したんや」

「なに、魔が差した!?」

「そや、魔が差したんや」

すると奥さんは、ほんまに、あんたは……とあきらめとも嘆きともつかない口調で言って、許してくれたそうなんですね。

これは何度も使える手ではないでしょうが、“初犯”なら有効でしょう。しかし逆にこれを先の捜査員よろしく、奥さんが聞き出す手立てとして使ったらどうなります?

あまり問い詰めず、「魔が差したのね」とポツリとつぶやく。

「そう、そう、魔が差した。オレって駄目だよな。ホントごめん」

「いったいどこで知り合ったの?」

こうなると男は許してもらっていると思っていますから、しゃべってしまいます。あれこれと。言っちゃいけないことも全部。

余計なことかもしれませんが、優しい口調での「魔が差したのね」には気を付けましょう。

 

話を汚職捜査に当たっていた捜査幹部や、捜査員が取り調べ中の被疑者にかけた一言に戻します。いずれも自供につながったり、つながりかけたりした言葉だそうです。

「無理もないなあ、その気になるのも」

「断ったら男がすたるとでも思ったんだろ」

「情にほだされたんか」

「これが最後のお願いです、と言われたのか?」

「人が良すぎるよ。情けのかけすぎやな」

何気ない言葉ながら、被疑者にしてみれば、その一言に感じられる思いが心に響いたんでしょうね。自ら口を割るんですから。

*   *   *

この続きは書籍『聞き出す力 「まさか」「ウソでしょう」で秘密の話が聞ける』をお求めください。

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近藤勝重『聞き出す力 「まさか」「ウソでしょう」で秘密の話が聞ける』

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近藤勝重 コラムニスト、ジャーナリスト

毎日新聞客員編集委員。早稲田大学政治経済学部卒業後の1969年毎日新聞社に入社。論説委員、「サンデー毎日」編集長、夕刊編集長、専門編集委員などを歴任。毎日新聞(大阪)の大人気企画「近藤流健康川柳」や「サンデー毎日」の「ラブ YOU 川柳」の選者を務め、選評コラムを書いている。10万部突破のベストセラー『書くことが思いつかない人のための文章教室』、『必ず書ける「3つが基本」の文章術』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。長年MBS、TBSラジオの情報番組に出演する一方、早稲田大学大学院政治学研究科のジャーナリズムコースで「文章表現」を担当してきた。MBSラジオ「しあわせの五・七・五」などにレギュラー出演中。

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