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フィンランドで暮らしてみた

2021.06.11 更新 ツイート

海を渡って突然フィンランドにやって来た人 芹澤桂

久しぶりに、本当に久しぶりにいろんな人に会えた一週間だった。

まず、義両親も親類も皆コロナの一回目のワクチンを打ち終わったので、半年ぶりに帰省した。前回帰省時は子供たちに保育園を休ませ、10日以上外部の誰にも会わず買い物にも行かず、厳重に注意して車で帰った。それに比べたら、だいぶ楽に帰れるようになったものである。

車に乗れば2、3時間の距離。東京都心と諏訪湖間ぐらいの感覚だ。

 

コロナが流行る前は1か月に1回は顔を会わせていたのに、こんなにご無沙汰するのが不思議でならない。とはいえ義両親は方や元医療従事者、方やリスクグループと、注意に注意を重ねて私たちが顔を見せなくても面倒くさがらないのが救いだ。

幸い気持ちのいい初夏で晴れ続き、会うのもできるだけ屋外に留めた。

風に乗って海を渡ってきた人

そして帰省先から戻ってきたその日から来客があった。なんと海外からである。

2021年6月上旬現在、原則フィンランドへの海外からの旅行者の入国はまだ禁止されている。許されているのはもともと住んでいる者か、家族がいるなどどうしても必要な場合のみ。

通常なら隣国のロシア、エストニア、スウェーデンとの間で旅客船が1日に何便も行き交い、気軽に旅できるのだけれどそれもなし。特にこれらの国はフィンランドよりコロナ感染率が高く旅行者なんてもってのほかである。

……のだけれど、「ただし、個人の船は除く」と書かれてある。

つまり、特別お金持ちでなくても持てるセーリングボートで、密航者のように船を渡って来れてしまうのである。

というわけで、何年も親しく付き合っているエストニアのカップルとその友人がヘルシンキで用事があり、去年買ったばかりのセーリングボートを操り、なんとフェリーなら3時間程度のところを風の力を借りて10時間かけてやってきた。

(彼らのボート。キャビンもついててリモートワークもできる)

海上でパスポートチェック

このカップルはうちの夫と肩を並べるかそれ以上の旅行好きで、しょっちゅう旅行をしている。行先も最近では年々熟練していっているというか、常人がなかなか手を出さない、北極、南極などになってきて、彼らの旅行計画や冒険譚を聞くのは会ったときの楽しみのひとつだ。

そこへ昨年のコロナの流行をきっかけに旅行という楽しみが奪われた。それでも彼らの冒険は止まらず、ついにセーリングに手を出す運びになったのである。

同じようにどうせ海外に行けないなら国内を楽しもうと車やサマーコテージ、キャンピングカー、ボートを買う人はコロナ禍で増えた。とはいえ実際に航海に出かけるのは、なかなかできることではない。彼らの場合は決して無謀なのではなく以前からセーリングボートやエンジンボートの講習に出かけ勉強していたからできるというのもある。それにしても、近隣の国への旅を冒険に変えてしまうその心意気は見習いたい。

夜じゅう、白夜で暮れない海の中をセーリングしヘルシンキに寄港、街中で用事を済ませメトロに乗り換えて我が家までやってきた彼らは、疲れているはずだろうにきらきらしていた。

旅はどうだった? と聞くと、途中、エストニアとフィンランドの海峡で警察のボートが待ち受けており、通常ならないパスポートチェックを受けたもののもちろん合法、空港みたいに「ではよい休暇を」と普通に送り出されてきたのだそうだ。

この時点では我が家に集まった全員がコロナ予防接種を受けていたものの、ソーシャルディスタンスを保つためというよりただただ気持ちのよい夏を楽しむために、庭で夕食を囲んで安全な会食となった。

その後彼らは、ボート内にあるキャビンで仮眠を取り、またセーリングで帰っていった。

(水平線上に大型客船も見える)
(みんながキャプテン)

その翌日も、同じ市内に住みながらしばらく会えていなかった友人が訪ねてきてくれたのだけれど、しばらく会わないうちに彼、地方選に出馬していたから驚きである。

彼についてはユニーク過ぎてページが足りないので、またの機会に書こうと思う。

(小さな港はヘルシンキ中にある)

関連書籍

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芹澤桂 小説家

1983年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。2008年「ファディダディ・ストーカーズ」にて第2回パピルス新人賞特別賞を受賞しデビュー。ヘルシンキ在住。

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