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2014.03.20 公開 ツイート

久住昌之と土山しげるのタッグに腹が減る理由 南信長(マンガ解説者)

『喧嘩ラーメン』に始まる、土山しげるの食マンガ

 一方の土山は、アクションマンガの巨匠・望月三起也のアシスタントを経て、1973年「月刊少年チャンピオン」にてデビューする。その後、青年誌に活躍の場を移し、アクションものや任侠ものを中心に執筆。原作付きの作品も多く、いわば職人的作家であった。

 そんな土山が最初に食をテーマに描いたのが『喧嘩ラーメン』('95~'98年)という作品だ。主人公は暴走族の総長でラーメン屋の息子。頑固一徹の父親に反発し、〈あんなラーメン屋誰が継ぐかよ!!〉〈コンビニにでも建て替えりゃ絶対に儲かるのによォ!!〉と言いながら、いざ店がピンチに陥ると父に代わって厨房に立つ。最初は〈ラーメン屋なんて簡単じゃねーか!〉とナメてかかっていた主人公だったが、ラーメン作りの奥深さを知り、チェーン店との勝負、ラーメン修業の旅へと物語は展開する。

『喧嘩ラーメン』日本文芸社

 この設定と展開、実は食マンガの元祖的作品である望月三起也『突撃ラーメン』('70年)と似ているのだ。『突撃ラーメン』は、アクションスターが一流のラーメン職人だった父を死に追いやった中華料理界のドンに復讐するため、ラーメン修業の道に入るというもの。『突撃ラーメン』と『喧嘩ラーメン』というタイトルの類似はもちろん、土山が望月のアシスタントになって最初にやった仕事が『突撃ラーメン』の鍋を描くことだったという点からしても、土山が初めて食マンガを描くにあたって師匠の作品をヒントにしつつ、オマージュ的意味合いも込めていたことは間違いない。

〈その頃から徐々に自分が描いてみたい作品を自由にやらせてもらえるようになりました。描いて行くうちに今度は「食」ものがさらに描きたくなりました。「食キング」を描けることになった時は、本当に嬉しかったですね〉(日本漫画学院web掲載のインタビュー)と語る土山は、『食キング』('99~'04年)、『喰いしん坊!』('04~'09年)、『極道めし』('06~'12年)と、立て続けにヒットを飛ばす。

 食マンガは土山にとってキャリアを重ねたうえでめぐり合った“ハマり役”だったのだ。

『喰いしん坊!』日本文芸社

 

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南信長(マンガ解説者)

1964年大阪生まれ。マンガ解説者。朝日新聞読書面コミック欄を10年以上にわたり執筆。著書『現代マンガの冒険者たち』(NTT出版)、編共著『消えたマンガ雑誌』(メディアファクトリー)、『文藝別冊・総特集いしいひさいち』(河出書房新社)など。食のシーンでマンガを読み解く新刊『マンガの食卓』(NTT出版)が好評発売中。

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