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勝てるデザイン

2021.03.25 更新 ツイート

元・任天堂デザイナ―が語る「自分の仕事」をする方法

待ってたら作りたいものなんて一生作れない 前田高志

任天堂のデザイナーとして14年半を過ごし、独立。現在はオンラインコミュニティ「前田デザイン室」代表としても活躍する前田高志さんは、入社した直後、周りの先輩社員、同期社員との能力差がありすぎて衝撃を受けたそうです。そんな厳しい状況の中で「自分の仕事」をするためにどのような方法をとったのか。予約殺到で発売前重版となった話題の書籍『勝てるデザイン』から一部をお届けします。

* * *

「いいや、勝手に作っちゃおう」がすべての始まり

僕のデザイナーとしての転機になった仕事の一つが、入社4年目で作った任天堂の採用ポスターです。

マリオにリクルートスーツを着せ、文字は最小限に。これは様々な意味で、僕にとって画期的な仕事になりました。

どういうことか。順序だてて話しましょう。

まず僕は、デザイナーなら誰しも思う「ポスターを作りたい」という願望をどうにか実現しようと思っていました。しかも消費サイクルが早い広告ポスターではなく、アート寄りのものを……。ですが、そんな案件がまだ駆け出しの僕に降ってくるわけがありません。

そんなある日、小さなチャンスの芽を見つけました。

僕がいたチームは、任天堂の会社案内や、投資家向けに配るマニュアルレポートなどを作っていました。僕も毎年、会社案内の案を考えプレゼンしました。

そのため、毎年時期が来ると「さて、今回の学生はどういう年に生まれてどういう世代なのか」を毎日考えます。すると、2005年に入ってくる学生は、ちょうどファミコンが世に出た頃に生まれた世代だということがわかりました。

そこで、マリオがリクルートスーツを着ていたらどうだろうかと考えました。ただ、会社から求められた仕事はあくまで、会社案内の制作でした。しかもすでにコンセプトはあって、リクルートスーツマリオはマッチしていなかったのです。

でもせっかくいいデザインを思いついたのだから絶対に出したい。

「いいや、採用されなくてもいいから勝手に作っちゃおう。誰かに見せたい」

僕はそう決心し、秘密裡にポスター制作を進めました。

そして迎えた社内会議の当日、僕はその場で、その年の会社案内をプレゼンした後に、実は……と話を切り出しました。その結果採用されることに。

世界で最も歴史ある国際的な広告賞を受賞

ものづくりに興味がある人に刺さってほしいので、自由度も高くし、印刷にもこだわりました。

バフン紙というザラザラした和紙のような紙を使い、オフセット印刷でしたがとにかく濃く刷ってもらうと、ポスターカラーのように鮮明な色が出て、一枚の絵のように仕上がりました。

このポスターは、まず掲示した美大から「参考作品としてあと数枚いただけませんか?」とわざわざ会社に連絡があるほど好評でした。

さらに、ニューヨークADC賞(The ADC Annual Awards)で、入賞ですが賞を獲りました。ADC賞は、デザイナーなら誰しも憧れる、世界で最も歴史ある国際的な広告賞です。「美術品同様に厳しい基準で広告が審査される」ことで知られ、非営利団体「Art Directors Club」(アート・ディレクターズ・クラブ)が1920年に創設しました。現在は非営利団体「The One Club」と「ADC」が合併し、「The One Club for Creativity」が運営しています。

30歳までに獲りたかった賞なので、心から嬉しかったのを今でも覚えています。やっと自分の仕事ができた、と思えた瞬間でした。

このポスターに関しては、僕がもともとやってみたかったデザインから発想が始まりましたが、そういうものじゃなくても、「こういうものがあった方が便利じゃないか? もっと売れるんじゃないか?」という目線で提案してみるのもいいと思います。

ゲームキューブの売り場を見て「これじゃだめだ」

例えば僕が作ったCDサイズのミニパンフレット。入社してすぐは目の回るような忙しさでしたが、程なくしてそのピークが過ぎました。しかし僕はじっとしていられない性格です。ある日、電気屋さんのゲームキューブ売り場を見に行きました。そこで見たのは、ホームページの画像を家庭用のプリンターでプリントアウトした、解像度が粗い画像で商品が魅力的に見えないPOPでした。

「なんだこれ……これでいいのか? デザインすることはまだまだたくさんあるじゃないか!」

そう思った僕は、会社に帰りCDサイズのミニパンフレットを勝手に作って、提案しました。電気屋さんで見た状況も話して。

結果は、採用。すぐに制作スタートとなりました。

自分で勝手に提案して通った仕事は、やりたいことだから、最高の自分ごととして進められます。仮に人から依頼されたことだとしても、自分ごとにしてしまえば自分の企画になります。

仕事は「いかに自分ごとにできるか」で面白さが変わるのです。

だからこそ、どんどん勝手に提案して、仕事を最高の自分ごとにしていきましょう!

 

* * *

 

「どうせダメだろう」「自分なんて」と思わずに、とにかく作ってみる。やってみる。その「ちょっと」の勇気が、その後の人生を変えるかもしれません。前田高志さん『勝てるデザイン』好評発売中です!(編集部・か)

前田高志『勝てるデザイン』

【デザイン力を伸ばす! 15個のワーク収録】さぁ、ともに学ぼう。人気クリエイティブ集団を率いる元・任天堂デザイナーが、若きデザイナーへ向けその思考と技術を公開!「本質を見抜いて、そこに遊び心を足してくれるのが、前田さんのデザインだ」佐渡島庸平(編集者/コルク代表)著者は、F1フェラーリ車体掲載のロゴ制作など第一線で活躍しながら、「ナスの形をした本」「モザイク柄のパンツ」といった、おもしろおかしいプロジェクトを行う人気クリエイティブ集団「前田デザイン室」を率いる、元・任天堂デザイナーです。「Illustrator時短術」「おすすめフォント3選」などデザイナー必見の技術はもちろん、「ダサいデザインはなぜ生まれるのか?」「プレゼンはラブレター」などデザインを武器にしたいビジネスマン必読の内容が詰まっています。

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勝てるデザイン

デザインはデザイナーだけのものじゃない。ビジネスマンはデザイナーの思考と技術を知れば、より売れる・刺さる・勝てるコンテンツを作ることができる。人気クリエイティブ集団「前田デザイン室」を率いる元・任天堂デザイナーが書く、デザインのすべて。

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前田高志 デザイナー/株式会社NASU代表取締役/ 株式会社VIEW代表取締役/前田デザイン室室長

1977年兵庫県生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、任天堂株式会社へ入社。約15年プロモーションに携わったのち、父の病気をきっかけに独立を決意。2016年2月からNASU(ナス)という屋号でフリーランスとしてスタート。NASUとは、デザインで成(為)すの意。同年4月から専門学校HALにて非常勤講師に。2017年から大阪芸術大学非常勤講師に(現在はいずれも退任)。幻冬舎・箕輪厚介氏のオンラインサロン「箕輪編集室」でのデザインワークで注目を集めたのち、2018年、自身のコミュニティ「前田デザイン室」を設立。 2018年、雑誌『マエボン』、2019年自身の集大成となる書籍『NASU本 前田高志のデザイン』を前田デザイン室として出版。前田デザイン室でのコミュニティ作りの経験を活かし、2019年10月よりNASUの新事業としてコミュニティ事業を開始する。2020年1月よりレディオブック株式会社のクリエイティブディレクターに就任。NASUで手掛けた名刺が、レディオブックが「スクーデリア・フェラーリ」と日本企業として13年ぶりのパートナーシップ契約を結ぶきっかけとなる。ブログ、学校、デザイン会社、コミュニティにて、デザインの価値を伝えるべく 日々発信中。

Twitter:@DESIGN_NASU
HP:https://nasu.design/

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