
メジャー大会で距離測定器の使用許可。どう変わる?
全米プロゴルフ協会が、主催するメジャー3大会で距離測定器の使用を許可すると発表した。5月に開催される全米プロゴルフ選手権を皮切りに、全米シニアプロ選手権、KPMG全米女子プロゴルフ選手権で使用が認められることになった。
通常プロは試合の数日前に会場入りし、練習ラウンドを行う。その際に、キャディとともに目印となるバンカーや樹木などからグリーンへの距離をレーザー測定器で計測し、あるいは歩測などしてコースマップに書き込む。
キャディは、それ以外にもティーからバンカーや池への距離、障害物になりそうな樹木への距離など、コース攻略に必要と思われる、ありとあらゆる距離を計測し、メモしている。
だから、ボールがどこへ飛んだとしても、目印からの距離をプラスマイナスすることで、正確な距離を把握できる。それでも、目印からボールまでの距離を歩測したり、ピンの位置の変化による補正を行ったりで時間がかかっているらしい。
どうせ正確な距離を見極めるまでは打たないなら、測定にかかる時間を短縮してプレーの流れをよくするには、レーザー測定器の使用を認めてしまったほうがスロープレーを回避できて合理的だと思う。メジャーでスロープレーの抑制につながれば、いずれは他のトーナメントでも距離測定器の使用が進められていくだろう。
距離測定器の使用は、2019年に改正されたルールでも認められている。プロの試合でも、そのルールには準拠したうえでの使用となる。
4.3a 認められる、禁止される用具の使用
(1)距離や方向の情報。
• 認められる。距離や方向に関する情報を得ること(例えば、距離計測機器やコンパス)。
• 認められない。高低差を計測すること。または、距離や方向の情報を解明すること(例えば、プレーヤーの球の位置に基づき、推奨されるプレーの線やクラブの選択に関する情報を得るために機器を使用すること)。(JGA 日本ゴルフ協会 ゴルフ規則) http://www.jga.or.jp/jga/html/rules/rules.html
要するに、直線距離を計測するだけならいいが、高低差による補正や、弾道のアドバイスが付加されるような測定器での計測は違反となるわけだ。
以前、「科学者」ことブライソン・デシャンボーがコンパスを持ち歩いて、正確なピンの位置を(計算方法はよくわからないが)割り出していたところ、ルール違反とされた。今後はこれもOKということだろう。
GPS距離測定器ならアマチュアにも使いやすいが……
生活がかかっているプロにとっては、1ヤードの誤差も許せないのだろうし、また1ヤード刻みで距離を合わせる技術もある。なんだか、だんだんロボット化して人間味が薄れていくような気もするが、厳しいせめぎ合いのプロの世界では、合理的に考えるしかないのだろうか? 少しさみしいような気もする。
では、アマチュアの一般的なゴルファーが、公式試合でもない仲間内とのラウンドやコンペで距離測定器を使うのはどうだろうか。私は、プロのマネはしないほうがいいと考えている。
レーザー距離測定器に関していえば、一般ゴルファーには不要だと私は思う。この計測器は目標物に照準を当て、ボタンを押すことで距離測定ができる。しかし、この照準を当てるのが結構難しい。ピンのような細いものにはなかなか当たらず、後ろの木に当たったりして明らかに異なる距離が測定されてしまうことが多いのだ。
このため、目標をグリーン上に立っている人やバンカーのへりなどに変えて照準を当て、何回も計測ボタンを押すことになりがちだ。これでは、納得できる距離を得るまでにかなりの時間がかかってしまい、スロープレーの温床となる。
私も測定器を使ってみたことがあるし、今も持っている。しかし、距離測定に時間がかかりすぎるのでほとんど使用することはない。なかなか距離が測定できないとイライラしてしまうし、プレーが中断してリズムも悪くなるからだ。
アマチュアの一般ゴルファーは、レーザー距離測定器よりもGPS距離測定器のほうが操作が簡単で、すばやくグリーンまでの距離がわかるからベターだと思う。とはいえ、もっといいのは距離測定器など使わずに、自分の眼と感覚で距離を読むことだ。そのほうがゴルフ本来の魅力が実感できるはずだからだ。
中部銀次郎さんは、常に自分の眼で見て距離を測っていたそうだ。その日の体調やゴルフの調子、天気や明るさ、順光・逆光などで、実際の距離より長く感じたり、逆に短く感じたりすることもあるそうだが、それも含めて自分の感覚を信じるようにしていたという。
その結果、実際の距離と感覚に差が出たとしても、せいぜい5~10ヤード程度のことだから、グリーンセンターを狙っていればグリーンのどこかに残る。アマチュアはそのぐらいアバウトでいいともおっしゃる。
30ヤード以下は自分の眼で判断できるようにしておく
考えてみれば、アベレージゴルファーはもちろん、シングルプレーヤーだって、1ヤード刻みで距離を打ち分ける技術なんて持ち合わせていない。距離測定器で1ヤード単位まで正確に距離を読んでも、その通りに打てる技量もないのだから、あまり神経質に距離を測定する必要もないのだ。
距離判断なら、日本のゴルフ場にはヤーデージ杭があるからそれで十分だ。スプリンクラーの蓋などにグリーンまでの距離が記されているコースも多い。グリーンセンターまでか、フロントエッジまでか、ヤーデージ杭の打ち方についてはスタート前に確認する必要はあるが、あとはセンターからプラスマイナスいくつなど、カートに案内が載っているので、セルフプレーでもそれで判断すればこと足りる。
ただ、10ヤード、20ヤード、30ヤード程度の短い距離は、自分の眼で目測できるようになっておきたい。自分のボールがヤーデージ杭からどれぐらい前後しているのかを判断する必要があるからだ。
また、グリーンまで100ヤード以内に入ると、50ヤードの杭はないことが多いので、ここでも目測が必要となる。100ヤードの杭とグリーンを見比べて、ほぼ中間地点を50ヤードと目星をつければ、半端な距離もおおよそ見当がつくだろう。
銀次郎さんは、街中で歩いているときも「あの電柱まで75ヤード」と目測しておいて、実際に歩いて歩測し、検証するような訓練をしていたそうだ。
ゴルフでは、視覚によって入る情報が80%以上を占めるといわれている。風を読んだりする髪の毛や肌の触覚による情報が2番目。3番目が聴覚だろう。「五感を働かせてプレーせよ」と言われるが、情報収集のほとんどは視覚の一感に頼っているといってもいい。だからこそ、自分の眼で目測してショットし、結果を検証していくことがゴルフの醍醐味なのではないだろうか。
「距離は、自分の眼で目測する」――これは、本当のゴルフの楽しみ方を示唆する意味深い言葉だと私は思っている。
今回のまとめ
1. プロの試合で距離測定器の使用が認められる潮流となっている。スロープレーの軽減になるのであれば、合理的な決断だと思われる
2. 生活がかかっているプロとは違って、アマチュアの一般ゴルファーは距離測定器の使用に関してプロのマネはせず、せいぜいGPS測定器のほうがPLAY FASTになる
3. 一般のアマチュアゴルファーは1ヤード刻みで距離を合わせるような技量はないのだから、必要以上に正確な距離測定に執着せず、自分の眼で目測することで、よりゴルフの真髄を楽しめる
参考資料:「「全米プロ」で距離測定器の使用を許可」ゴルフダイジェスト・オンライン、2021年2月10日 https://news.golfdigest.co.jp/news/etofcl/pga/article/134807/1/
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