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ホームレス消滅

2020.10.27 更新 ツイート

IQ70未満が34%…ホームレスが抱える知的障害というタブー 村田らむ

最近、路上生活者(ホームレス)の姿を見かけなくなったと感じることはないだろうか? 実際、各自治体の対策強化により、ここ10年でおよそ70%も減少したという。『ホームレス消滅』は、そんなホームレスの現状を取材歴20年のライター、村田らむさんが体当たりでレポートした1冊。決して他人ごとではない、彼らの生活のリアルが伝わってくる本書から、印象的なエピソードをいくつか紹介しよう。

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精神疾患、アルコール依存症の影響も?

都市周辺に住んでいれば一度は見たことがあるだろう、周囲に悪臭を放つホームレスは、なぜあのようになってしまったのか。ホームレスを取材してきた僕の答えは、彼らは脳か心に何かしらの障害や疾患を抱えているからではないだろうか、というものだ。

(写真:iStock.com/Tuayai)

こういった人の多くは、声をかけても、会話の受け答えができない。また受け答えができたとしても、支離滅裂なことをいう人も多い。たとえば、上野公園にいた全身ボロボロの服を着た70代後半に見えるホームレスは、「自分は四国の会社の社長をやっている。人材を求めて上野に来た。なかなか人が見つからないから困っている。よかったら、あんた働くか?」と真顔で僕をスカウトしてきた。

ホームレスは取材に対して軽度な嘘をついたりホラを吹いたりする人が少なくはない。しかし、後日、同一人物に話を聞いた際も、同じ内容の話をしていた。どうやら、本気でそう信じ込んでいるのだ。ボロボロの身なりでファストフード店から廃棄されたポテトを食べている自分と、社長である自分が、矛盾せずに同居しているのがとても不思議だった。

 

こういった人は、認知症や統合失調症といった精神的疾患を抱えたり、アルコール依存症が進んで幻覚を見る離脱症状などが出ていたりする可能性が非常に高いと推測できる。

これは僕の憶測だけではない。日本においてはこの手の話はタブー視され、無視されてきたため、長らく調査も行なわれていなかった。しかし、2009年、野宿生活者の支援をする精神科医の森川すいめいが東京・池袋で168人のホームレスを対象に行なった調査によれば、そのうち10~15%の人が精神障害を抱えている疑いがあり、19%の人がアルコール依存症と判断された。

さらに同調査ではIQが70未満の人が34%もいたという結果も出ている。ウェスクラー式の知能検査(WAIS-III)によれば、IQ70未満は「精神遅滞」と診断され、知的障害がある判定基準のひとつとなる。出現割合は2.2%とされているため、森川の調査の34%という数字がいかに高いかわかるだろう。

福祉の手を差し伸べるべき

同じような調査結果は他にもある。2014年、全日本民医連の精神医療委員会が研究者とともに行なった名古屋市内の路上生活者114人の精神保健調査でも、対象者の34%に知的障害があり、42%に統合失調症やアルコール依存症など精神的疾患があることがわかっている。

(写真:iStock.com/byryo)

つまり、ホームレスの少なくない人が、精神的疾患や知的障害を抱えているというのだ。

しかも、こういったホームレスの中には、特別支援学級に通った経験もなく、障害者手帳を持っていない人も多い。生活実態調査によれば、ホームレスの中で、障害者手帳を持っている人は1.6%、以前に持っていたがなくした人が1.3%と、合わせても2.9%しかいない。つまり、可視化されていない障害者がたくさんいるのだ。

 

そんな中で、仕事もなかなか得られず、自力で生活していくのもままならない。日常会話もできず、不衛生で体臭がきつければ、ホームレスの仲間もできない。ホームレスの中でも、孤立してしまうのだ。

なお、国・自治体が行なうホームレスのアンケート結果を本章では多く引用しているが、調査員がコミュニケーションの難しいこのようなホームレスにアクセスしているのだろうか。もし調査から溢れていたら、国・自治体の調査結果にすら、彼らの状態は正しく反映されていない。

僕は、他人に極度に迷惑をかけていなければ路上で生活するくらい自由にさせてあげればいいと思っている。しかし、精神的疾患や知的障害を抱えた結果、仕方なくホームレスになっているのだとすれば、それは、ホームレスというよりも、単に福祉からこぼれてしまっている人だ。「汚い」「臭い」と周りに思われてしまうホームレスの少なくない人が、このような人ではないかと思っている。

 

彼らが事故に遭遇したり犯罪に巻き込まれたりする可能性は高いだろう。彼らの場合は、一刻も早く保護して路上生活から脱出させるべきだと思うのだが、皆手を差し伸べないし、街の安全を守る警察官も見て見ぬふりだ。

そのため、2020年代の今も、こういったホームレスが路上でさまよっている。

関連書籍

村田らむ『ホームレス消滅』

現在、全国で確認されている路上生活者の数は4555人。年々、各自治体が対策を強化し、ここ10年で7割近くが減少した。救済を求める人がいる一方で、あえて現状の暮らしに留まる人も少なくない。しかし、ついに東京は2024年を目標とした「ゼロ」宣言を、大阪は2025年の万博に向け、日雇い労働者の街・西成を観光客用にリニューアルする計画を発表。忍び寄る"消滅"計画に、彼らはどう立ち向かうのか? ホームレス取材歴20年の著者が、数字だけでは見えない最貧困者たちのプライドや超マイペースな暮らしぶりを徹底レポート。

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ホームレス消滅

最近、路上生活者(ホームレス)の姿を見かけなくなったと感じることはないだろうか? 実際、各自治体の対策強化により、ここ10年でおよそ70%も減少したという。『ホームレス消滅』は、そんなホームレスの現状を取材歴20年のライター、村田らむさんが体当たりでレポートした1冊。決して他人ごとではない、彼らの生活のリアルが伝わってくる本書から、印象的なエピソードをいくつか紹介しよう。

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村田らむ

1972年、愛知県名古屋市生まれ。ライター兼イラストレーター、カメラマン。ゴミ屋敷、新興宗教、樹海など、「いったらそこにいる・ある」をテーマとし、ホームレス取材は20年を超える。潜入・体験取材が得意で、著書に『ホームレス大図鑑』(竹書房)、『禁断の現場に行ってきた!!』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)、『樹海考』(晶文社)、丸山ゴンザレスとの共著に『危険地帯潜入調査報告書』(竹書房)がある。最新刊は20年にわたって取材し続け、ホームレスの今後を予測する『ホームレス消滅』(幻冬舎)。

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