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オタク女子が、4人で暮らしてみたら。

2020.10.28 更新 ツイート

【刊行記念対談】後編

オタク女子に必要なのは、欲望の洗い出し。アラフォーからのオタク活動とルームシェア 岡田育/藤谷千明

先月発売のエッセイ『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』の著者、藤谷千明さんと、文筆家の岡田育さんによるオタク女子対談。後編では、アラフォーの2人がこれからもオタク活動を続ける上での関心ごとや健康管理、そして自分自身の欲望との向き合い方について熱く語ってもらいました。

前編「交渉の末にたどり着く『心地の良い妥協』。アラフォーの私たちが考える快適な暮らし」から読む

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10代の頃は、追っかけをやめる適齢期があると思っていた

藤谷:私が地元の山口県にいた時は20歳過ぎてオタク活動している人は、周囲にはいなかったんです。たいていの人は、結婚して家庭を持って30歳前には家を建てていた。ある時、母親に「親戚の〇〇ちゃんは、グループの最年長が27~28歳だから、それまでは自分も追っかけするって言ってるわよ、あなたはいつまでやるの?」なんて言われ、「私もそのくらいの年齢になったら、ちゃんとするのかな~」と思ってたんですよ。何をちゃんとするのかって話ですけど。

岡田:何の適齢期だって話ですよね。どうせキリストと同じ年齢で死ぬと思ってた、みたいな?

藤谷:昔の人が考えた、亀の上に世界がある地図じゃないけど、若い頃の私は「その先には何もない」って思っていたのかもしれないですね。28歳より先のファン人生が想像できなかった。

その頃は、推しバンド…、ヴィジュアル系では「本命」などといいますが、本命の黒夢は活動休止だったり、ほかにもLUNA SEAやX JAPANは解散(LUNA SEAは「終幕」)していて、バンドが長く続けられないなら、自分もいつまでもバンギャルでいられないのかもって思っていたけど、どころがどっこい2008年頃D'ERLANGERに始まりLUNA SEAもX JAPANも黒夢復活し…。

岡田:わかります、周年記念と再結成ブームに踊らされ続けて幾星霜。まさか30過ぎてLUNACYの「黒服限定GIG」に行くとは思ってなかったよ。一方でBUCK-TICKは解散もなく淡々と33年続けているので、それはそれで淡々と通ってしまう…。何か考えて行動しているわけではないので、「オタクを長く続けるコツ」なんて聞かれたら、キョトンとしてしまいますね。

藤谷:好きなミュージシャン、推しがそこにいるからかな。山がそこにあるから的な。

そうそう、最近はアラサー以上の友人たちと「推しが年下である」問題で盛り上がったりします。ジャンルにもよりますけど、これまで自分の好きなバンドは年上ばかりだったので、急に推しが年下になるとどうしていいかわからないし、「変に威圧的になってないかしら?」とか不安になるというか…。当然、なにかのファンになることに年齢は関係ないですし、気にしすぎてもよくないのですが。それに、最近は好きなミュージシャンのお子さんが芸能界デビューしたりすると、情緒が乱れることがあります。親は親、子は子とは頭では思うものの!

岡田:ぎゃー! 私はもう最近、宮沢氷魚さん(父がTHE BOOMの宮沢和史)のご活躍がね、こちとら、おめでたの速報から音楽雑誌で読んでましたから、映画賞獲る前どころか、生まれる前から祝福してましたから。そして2020年といえば、やはり、芥川賞作家の遠野遥さん(父がBUCK-TICKの櫻井敦司)でしょう……公表されたのがちょうど新譜の発売直後ということもあって、大変な騒ぎでした。ああ、子供の頃、吉本ばななや梅宮アンナの話をしてるのに隆明や辰夫のネタばかり挟んでくるおっさんおばさんを心底ウザいなと思ってたのに、同じことする大人になってしまった。そしてこれ、ライブハウスの後ろで腕組みして「こっちはデビュー前から追っかけてんだからね?」と「歴」でマウンティングしてくる人のメンタリティだ、よくない……。

 

藤谷:Dragon Ashの頃は「どうでもいいじゃん!」って言ってる側だったのに。公表されてないのに騒いだり、「DNAが~」と書き立てるメディアもあって、それはどうかど思うし、一歩間違えたら優生思想まっしぐらなので、どうしても理性と情緒がバトルしてしまいますね。心が弱いので、もうしばらくは冷静に「破局」を読めないです…。先に読んでいてよかった。

(「推しが年下である」問題についても盛り上がるお二人。右:岡田育氏、左:藤谷千明氏)

推しは健康にいい

岡田:ジャンルの組み合わせによっては、まさかの「親から子への担降り」もあり得ますからね……歌舞伎の世界などではよくあることなんだろうか? 私は先日、坂本美雨さん(両親が坂本龍一と矢野顕子)がお嬢さんのなまこちゃんと「ラーメンたべたい」を歌う動画を泣きながら観た後、今まであの御一家に乱されまくってきた情緒がスーッと溶ける感覚をおぼえました。本当に好きなものはこうやって数十年単位で推していくんだな、と。しかしそうなると、自分の加齢と同じくらい、それぞれの推しの老後が気になってもくるわけです。

藤谷:これまでロックンロール!酒!みたいな感じだった人が健康を気にし出すと「どこか悪いところあるの?」って勝手に心配してしまったり。

私は、「老後と趣味」についての連載もしているんですが、「氷川きよしくんのライブに行くために手術します」とか「純烈のためにリハビリを頑張ります」ってモチベーションを高めているという話を伺うと、「推しは健康にいい」説を信じたくなりました。

岡田:私が今いるミュージカル沼も年齢層が幅広いので、観劇と観劇の間に入院スケジュールを組むとか、よく聞く話ですね。私自身、推しを拝んだ後に受けた人間ドックの数値はめちゃくちゃ良かったですし。昔は「現場で死ねたら本望」なんて言ってましたが、推しをはじめ各方面に多大な迷惑がかかるだけなので、リアリティが増してきた今は、選べるなら畳の上がいいです!

10年前に本を出していたら「負け犬」扱いされていたのかもしれない

藤谷:先ほども話したように、39歳になってまでBUCK-TICKの新譜の話をしているとは思わなかったし、そもそもオタクの女性と一緒に暮らしているとは思っていなかった。世の中の空気自体も変化しているように感じます。この本を出したのが10年前だったら、帯に「負け犬」って書かれていたでしょうし(笑)、もっと批判も大きかったかもしれない。

今回受けたとある取材記事がYahoo!にも転載されて、ついついコメント欄を見てしまったんですよね。ヤフコメを見るのは「ライター7つの大罪」と称するくらいの罪だと思っているんですけど(苦笑)。

でも意外と批判的なコメントは少なくて「こういう生活もいいんじゃない?」って声が多数だったから、このまま行くと風向きも良くなるかもしれないですね。

岡田: 私は『40歳までにコレをやめる』という本を出したとき、ものすごい長文感想をいただきまして。「こんな恵まれた環境の人に『適当に生きていいんだ』『子供は作らない』なんて言われたら、苦労して子供を産んで育てて、ずっと真面目に生きてきた自分の人生が、否定されたように感じる。私はこの人と年齢しか共通点がない」と。

藤谷:角田光代さんの『対岸の彼女』みたいですね。

岡田:ただ、私の本を読んで、私とは違うご自分の気持ちを吐き出すことができたのなら、それでいいよ、と思えたんです。これが20代の時だったら、私のほうも全否定された気持ちになって「こいつは敵だ!」なんて思ったかもしれない。でも、彼女には彼女の、私には私の人生があって、お互いに吐き出したい言い分がある、それだけなんですよね。違いを認め合えば、いつか「友」として連帯できる日も来るんじゃないかと、この年齢になってようやく信じられるようになりました。藤谷さんの本も、「他人の人生をのぞき見しながら自分の人生を振り返る」という読み方ができますよね。女4人でルームシェアした経験のない私も、共感するところはたくさんありましたし、今すぐは真似できない人でも、たくさんヒントをもらえると思います。

欲望の洗い出しをしておけば、棚からぼた餅が落ちてきたときに食いつける

藤谷:先日、書店で私の本の隣に置かれていたのは『なかよし別居のすすめ ~定年後をいきいきと過ごす新しい夫婦の暮らし方』というタイトルの本でした。仲良しだけど別居している夫婦もいるそうなので、誰と住むにしても関係性と距離感は重要でしょうね。

岡田:住まいは一緒でも寝室は別って夫婦もいますし、これが絶対という正解もないから色々探っていくのがいいんでしょうね。藤谷さんはご友人3人とのルームシェアだったからこの条件に落ち着いたわけで、相手が恋人だったら譲れない条件も異なるし、またそれぞれに話し合いが必要だと思うんです。今すぐルームシェアはできない人でも、「いつか一緒に住むならこういう相手がいい」って、自分の欲望に忠実になって、箇条書きしておくといいんじゃないでしょうか。理詰めで欲望を洗い出しておくと、棚からぼた餅が落っこちてきたときに、パクっと食いつけるんですよ。結婚願望のなかった私が結婚を即決したときも、そんな感じでした。

藤谷:それができるのもオタクの特性かもしれませんね。何にしても自分の欲望をはっきりと捉えることは大事ですよね。

岡田:あと、フリーランスと会社員が一緒に住むメリットも感じましたね。保証人の関係でフリーランスは不利だったりもしたようだけど、お互いのワークスタイルをフラットに捉えられるのは、家族で住むにしても重要な視点。家賃の分配の話なども、理詰めで公正だったし。

藤谷:日中でも宅配便を受け取りやすいとか、何か設備にトラブルがあった場合工事や修理に立ち会えるのも在宅が多いフリーランスがいるメリットですよ!しかし、これが男女になると急に「養ってもらえて、フリーで好きなことやってていいわね」みたいな空気になったりするんですよ、不思議~。

岡田:何より私は友人が少ないので、一番最初、藤谷さんがLINEグループを使ってメンバー募集できたというのが、いきなり羨ましかったです! 私だって「ちょっとしたパーティ」を開くグループLINEが欲しいな~。こういうのも、ささやかながら大事な欲望ですね。口に出して叶えていこう!

(構成・真貝友香)

関連書籍

藤谷千明『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』

我が家こそ、沼でした! お金がない、推しのグッズは増える、孤独死は嫌だ! そんなわけでアラフォー女子がはじめた快適ルームシェアの日々。 一生を約束したくはないけれど、淋しいから誰かと暮らしたい、 推しのグッズは増える一方なので広い部屋に住みたい、 節約して将来への不安に備えたい…… 意見の一致したオタク女子4人がルームシェアをすることに! 本名すら知らなかった仲間との生活は、 オタクならではの出来事や会話が飛び交う毎日で、全然キラキラしてないけど、すごく楽しい。 そんな4人が同居に至るまでと、春夏秋冬の暮らしを綴った、ゆるっと日常エッセイ。 〈目次〉 第1章 私は如何にして心配するのを止めてオタクと暮らすことにしたのか 第2章 【メン募】同居人募集・当方オタク、完全ゆるふわ志向。 第3章 春夏秋冬ルームシェアリング! 第4章 ガチャも回すし人生も回す

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オタク女子が、4人で暮らしてみたら。

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岡田育 文筆家

文筆家。東京出身、NY在住。出版社勤務を経てエッセイの執筆を始める。著書に『ハジの多い人生』『嫁へ行くつもりじゃなかった』『天国飯と地獄耳』『40歳までにコレをやめる』、二村ヒトシ・金田淳子との共著に『オトコのカラダはキモチいい』。最新刊は『女の節目は両A面』(11月10日発売)。

藤谷千明 ライター

1981年生まれ。工業高校を卒業後、自衛隊に入隊。その後職を転々とし、フリーランスのライターに。主に趣味と実益を兼ねたサブカルチャー分野で執筆を行なう。共著に『すべての道はV系へ通ず。』『水玉自伝 アーバンギャルド・クロニクル』などがある。

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