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「新しい習慣」の見つけ方

2020.08.17 公開 ツイート

何かをやめると、新しい何かが生まれる 今、ここにいる自分ができることを続けよう。 一田憲子/わたなべぽん

漫画家わたなべぽんさんのコミックエッセイ『さらに、やめてみた。』と、編集者の一田憲子さんによる『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』。コロナ禍で世間がざわめく時期に刊行された2冊には、自分の暮らしを見つめ直して、「新しい習慣」を作っていくという共通点がありました。

年齢を重ねたからこそ見えてきた風景、そしてコロナ禍がもたらしたいい変化とは?「定着しない習慣は、今のあなたの暮らしには必要ないもの」と肩の力を抜いて考えられるようになったおふたりの対談をお届けします。(前編はこちら)(構成・文 阿部花恵)

*   *   *

20代は自己否定がエンジンになったけれども

一田 ぽんさんは私よりずっとお若いですが、年齢を重ねていくと「できないものはできないんだ」というのがわかってきませんか?

ぽん わかります。自分もそうですし、友人を見ても感じますね。変えられるところともあるけれど、変えられないところもある。

一田 若いときはそのことを認めたくないんですよね。頑張ればできるんだ、と信じたい気持ちが大きいから。自己否定によって自分にエンジンを焚きつけるやり方で、若いときはやっていけるんです。でも年齢を重ねていくと、自分にダメ出しをすることさえもしんどくなる。体力もなくなってくるし、もういいか、みたいな。でもそうなったらそうなったで、今ここにいる自分のままでできることを考えられるようになるんです。

ぽん 「やめてみた」シリーズも、それに近い考え方かもしれません。時々、誤解されるのですが、私は「やめる」ことを推奨しているわけじゃないんです。シリーズ1作目の『やめてみた。』で炊飯器をやめて土鍋にしたというエピソードを描いたのですが、読者さんからの「子育て中ですが炊飯器をやめられません。どうしたらいいでしょう?」という手紙が結構あって。

一田 きっと真面目に「本に書いてある通りにしなきゃ」と思っちゃうんでしょうね。

ぽん みんなが炊飯器をやめる必要なんてまったくないんです。土鍋が正しいとか炊飯器が間違っているとかではなくて、あくまでこれは私のパターンであって、私は私の、あなたはあなたの生活があるから、それぞれ工夫して自分なりのやり方を見つけていきましょう、ということを伝えられたらな、と思っています。

真似してできなくても、ダメじゃない

一田 真似してみたけど、できなかった。だから自分はダメだとは思わないでほしいですよね。私も素敵だなと思って真似してみたけど、続かなかったことはたくさんありますから。その人が、そのときにできることでいいと思う

ぽん 何かをひとつやめてみると、別の何かが新しく始まりますよね。たとえば私、夏にサンダルを履くことをやめてみたんです。そしたらスニーカーを履く頻度が増えて、「スニーカーってどう洗う?」「組み合わせる服は?」といろんなことが付随して新しく始まって、それが意外と楽しかったんですよ。そんな風に楽しめたり、自分に合っているなと感じられたりすると、習慣になっていくのかな、と感じています。

一田 新しいことを生活に採り入れると、そこからいろんなことが変わりますよね。ドミノ倒しみたいにパタパタと変わっていく。その変化が自分や生活にどんな影響をもたらすのか、それを観察するのが私は楽しい。無理だと感じたらやめちゃえばいいし、定着しない習慣なら今の自分の暮らしには必要ない、と考えればいいと思います。

ぽん そういえば、うちでひとつ意識的に「習慣にしよう」と思って始めたことがあるんです。今のマンションに引っ越したとき、浴室の鏡がすごく大きかったんですよ。だからウロコ汚れがついたら嫌だなと思って、夫と相談して「お風呂上がりには必ずT字型ワイパーで鏡の雫を取ること」を決めたんです。

一田 そうするとウロコがつかなくなるの?

ぽん そうなんです。最初は「面倒くさいな~」と言っていた夫にも、「雫取りまでがお風呂です!」と根気よく言い続けて。そしたら10年以上経った今も、1個もウロコ汚れがないんですよ。特別に磨いたりとか全然していなくても。

一田 すごいなぁ。ちゃんと習慣になったんですね。

ぽん 夫婦で続けられて、10年超の実績ができた。そういう成果が出ると、続けていくモチベーションになりました。夫も一生懸命やってくれています。

一田 きっと浴室の鏡の雫取りは、ぽんさん夫婦のチャンネルに合ったんでしょうね。人それぞれ、好きで得意なジャンルがあるじゃないですか? たとえば、ファッションがすごく好きな人は、トレンドのものが出たらすぐチャレンジしますよね。そんな風に、こういうジャンルなら自分は取り入れられる、という直感が大人になるほど磨かれていく気がします。

ぽん そうですね。私の場合はものづくりがずっと好きなので、「やってみたい」という気持ちも湧きやすいし、飛び込むハードルも低いんです。でも全然接してこなかったジャンル、たとえばマラソンとか筋トレとかは、面白さを感じられるかどうか自信がないですね。

変化から、新しい繋がりが生まれる

一田 そうはいっても、必要に迫られた結果、学べることもたくさんありますよね。Zoomを使っての打ち合わせとかインスタグラムのライブ配信とか、なんとかかんとかやってみたら「あ、できるじゃん!」って。私はライター塾をずっとやっているのですが、「じゃあZoomでのライター塾もやってみようかな」とトライしたら、これまでとは明らかに違う層の方々が参加してくださったんです。まだ赤ちゃんが小さい主婦の方が2人いましたし、仙台・新潟・大阪・福島・名古屋にお住まいの方々も。そういう変化がもたらされたことは収穫でした。

ぽん 不安や不自由さはもちろんありましたが、変化が起きたことで新しい繋がりも生まれますよね。私たち夫婦は近くに親族がいないのですが、自粛期間中も田舎から送られた野菜をご近所さんにおすそ分けするついでにちょっと雑談したり、友達が「庭にバラが咲いたからあげる」と持ってきてくれたりして、そういう小さなことにずいぶんほっとできました。

一田 東京でそんなお付き合いができるなんて、いいですね。

ぽん ご近所に猫を飼っているお一人暮らしの女性がいるんです。彼女は60代くらいなんですけど、「もし私がコロナに感染した猫をどうしよう」と心配していらしたので、「じゃあそのときはうちでお預かりします。逆に私たちが感染したときは、別のお願いごとをしてもいいですか?」というお話をしたんですね。些細なことでも、頼み合える、助け合える人が近くにいるのは心強いな、と再確認できた気がします。

一田 生活のこともそうですし、そういった周囲との関係性を受けて自分がどう変化していくか、そのプロセスを楽しんで生きていきたいですね。「自分はこれができるか/できないか」のジャッジを下して落ち込むよりも、「試しにやってみて、どんな変化が起きるのかな?」と観察してまるごと楽しんでみる。そのほうがきっと人生を楽しめるんじゃないでしょうか。

関連書籍

わたなべぽん『やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる、暮らし方・考え方』

「なんとなく使ってきたけれど、本当に今の自分に必要なんだろうか」。そんな思いで炊飯器、ゴミ箱、そうじ機といった生活必需品から、つい謝ってしまう癖、もやもやする友達付き合いなどを「やめてみた」日々。その果てに訪れた変化とは? 少しずつ生きるのが楽になっていくさまを描いた実験的エッセイ漫画。

一田憲子『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』

『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい! 』 『大人になってやめたこと』著者・一田憲子さん最新作! 自分をリセットしてくれる「人生の習慣」41 本書は、50歳を迎えた一田さんが見つけた、 年を重ねながら新しい自分になっていくための 「小さな工夫」をご紹介しています。 たとえば、 「ベッドカバーを掛けて、暮らしに"きちんと感"を出す」 「習い事は1年でやめてみる」 「大掃除は年末ではなく、年が明けてからゆっくり進める」 などなど、少しびっくりするけれど一田さんらしい発見と考察で 生み出されていったものばかり。 そして、ちょっとしたことではありますが、 やってみると暮らしと人生が自分らしく更新される、 そんな習慣たちです。 ・やるべきことをささっと ・昨日までを引きずらない ・本当にやりたいことが見えてくる そんな日々が送れるようになる、小さな工夫がいっぱいです。

わたなべぽん『もっと、やめてみた。 「こうあるべき」に囚われなくなる暮らし方・考え方』

本当に必要なのか分からないものを捨て、ぐ るぐるしがちな考えグセを手放したら生活に 意外な変化が生まれました。「ボディーソー プをやめたら石けん作りが趣味に」「深夜の 居酒屋のかわりにお茶漬けにしたら健康にな った」「無理に友達を作るのをやめたら、む しろ交友範囲が広がった」など、やめてみたら 新しい自分に出会えた実体験エッセイ漫画。

わたなべぽん『さらに、やめてみた。 自分のままで生きられるようになる、暮らし方・考え方』

「こうあるべき」をやめてみたら、本当にやりたいことが見えてきた。「サンダルをやめたら、歩くのが楽しくなってきた」「趣味のサークル活動をやめたら、好きな人とだけ付き合えるようになった」「共同貯金をやめたら、子どものいない夫婦として生きていく決心ができた」など、より自分らしく生きるためにやってみたこと。感動のシリーズ完結編。

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「新しい習慣」の見つけ方

『やめてみた。』シリーズ著者・わたなべぽんさんと、『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』著者・一田憲子さんの新しい暮らし対談です。

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一田憲子 編集者・ライター

OLを経て編集プロダクションに転職後、フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などを行う。2006年、企画から編集、執筆までを手がける「暮らしのおへそ」、2011年に「大人になったら、着たい服」(共に主婦と生活社)を立ち上げる。自身のウェブサイト「外の音、内の香」(http://ichidanoriko.com/)も運営。著書に『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』『おしゃれの制服化』などがある。

わたなべぽん 漫画家

山形県出身。第6回コミックエッセイプチ大賞・C賞を受賞しデビュー。AVなど成人男性向け商品を取り扱う古本屋の女性店長を務めた経験をコミカルに描いた『桃色書店へようこそ』、作画を手がけた『隠すだけ!貯金術』『家計簿いらずの年間100万円!貯金術』、自身のダイエット経験を綿密かつ面白く描いた大ヒットシリーズ『スリム美人の生活習慣を真似したら1年間で30キロ痩せました』『もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました』『初公開!スリム美人の生活習慣を真似して痩せるノート術』、汚部屋脱出を描いた『ダメな自分を認めたら 部屋がキレイになりました』など著書多数。最新の「やめてみた」シリーズは累計45万部を突破。近著は『自分を好きになりたい』『ズボラ習慣をリセットしたら やる気な自分が戻ってきました」など。

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