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他人を非難してばかりいる人たち

2020.08.30 公開 ポスト

芸能人の不倫が許せない人たち…日本人ならではの「嫉妬心」が原因か?岩波明(精神科医)

連日テレビを賑わせている、芸能人の不倫騒動や失言問題。過激化するバッシングの一方で、「さすがにやりすぎでは?」と感じている人も少なくないのではないでしょうか。精神医学の権威、岩波明先生の『他人を非難してばかりいる人たち』(2015年9月刊行)は、そんな現代の風潮に一石を投じる一冊。炎上、バッシング、ネット私刑が「大好物」なマスコミや、ネット住民の心理とは一体? その正体を明らかにしていきましょう。

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「同質性」の高い日本社会

最近になって多少は変化がみられるものの、日本人の大部分は、小児期から成人まで、好むと好まざるとにかかわらず、比較的同質の集団の中で生きていかなければならない。これは、多様な民族や宗教的背景を内部に持つ米国などとは、まったく異なる環境であり、「安心感」は大きいものの、さまざまな弊害も存在している

(写真:iStock.com/kuppa_rock)

同質のバックボーンを持っているため、日本人の価値観は、似たようなものになりやすい。目標とするライフコースも、同じようなものとなる。

そのため、嫉妬心などの陰性感情の向かう方向も類似のものになる。本来は、ある人の成功は他の人にとってうらやましいものであることもあれば、関心を持たれない場合もあるはずである。

ところがメンタリティが類似している日本人においては、みなが同じような嫉妬心を抱きやすい。こうした点が、学校や職場における集団による陰湿な「いじめ」や「ハラスメント」につながりやすいように思えるし、ネット上の激しいバッシングの一因にもなっているのだろう。

どんなに文科省や学校が努力をしても、いじめがいっこうに減らない原因はこういうところにあるのである。いじめは日本人の心性に深く結びついているのだ。

ヨーロッパにおいても、多くの国では旧植民地などからかなりの移民を受け入れている。さまざまな分野における国境を越えた「交通」もさかんである。このため、日本社会と比較すれば多様性は高く、当然ながら価値観もさまざまであり、単純な優劣の比較は難しくなるため、一様な「嫉妬」は生じにくいように思える。

イラクやイスラム国などの人質事件における反応などにおいて、日本と欧米で大きな違いが出てくるのは、このような背景があるからだと考えられる。

日本という横並びを尊ぶ国においては、周囲と異なることをしているだけで「胡散臭い」わけであり、国の命令でも、会社の仕事でもなく、紛争地域に行くなどということは、許しがたいことと多くの人が感じてしまうのである。けれども、本来は、こうした問題に正解はないはずである。

「嫉妬心」をバネにできるか?

均質性の大きい日本社会においては、周囲の人との微妙な差が、ことのほか、目に付いてしまいやすい。隣近所の「佐藤さん」や「鈴木さん」、あるいは同級生であった「田中さん」と自分を比べてみると、価値観も生活レベルも、そして人生の歩みさえも、客観的に見るならば、たいした違いがないことが多い。

(写真:iStock.com/oatawa)

このような状況では、当事者にとっては、些細な優劣が、ことのほか重大に見えるのは当然であろう。先に述べたC先生を例にとれば、どうして「実績も人格的にも自分より劣るか、せいぜい同レベル」の私が抜擢されたのか、納得できなかったのかもしれない。

客観的に見れば、A大学のC先生のポジションも、B大学での私のポジションも大差はないものであり、瑣末な嫉妬によって、協力関係を断絶すべきものではなかったように思える。しかし、物事の多くは、合理的とはいえない、こうした嫉妬心や猜疑心をベースにして決まっていくことが多いのである。

このような点について、漫画家の柴門ふみ氏は次のように述べている。

何か自分に引っかかる要素、重なることがありながら、自分にないものを持っている。そして幸福である(少なくとも、そう見える)。しかも、その幸福を苦労せずに掴んでいる。こうした条件がそろった相手に、私たちは強い嫉妬心を抱くのだと思います」

(『バカボンのママはなぜ美人なのか 嫉妬の正体』 柴門ふみ ポプラ新書)

さらに柴門氏は、自らの漫画家としての成功は、嫉妬心が道を開いたとも語っている。確かに、嫉妬心をバネにして、実力を磨いて飛躍するというケースもあるかもしれない。だが、多くの「普通」の人においては、そううまく事が運ぶわけはない。

飛びぬけた才能を持っていれば、嫉妬心を乗り越えてライバルを凌駕することも可能かもしれないが、才能も、根気も平凡な「一般人」は、長年にわたって満たされない「ダークな心」を持ち続けることになりかねない。

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他人を非難してばかりいる人たち

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岩波明 精神科医

1959年神奈川県生まれ。東京大学医学部医学科卒。 精神科医、医学博士。 発達障害の臨床、精神疾患の認知機能の研究などに従事。都立松沢病院、東大病院精神科などを経て、2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授、2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼務。著書に『狂気という隣人』『精神科医が狂気をつくる』『大人のADHD』『発達障害』『発達障害という才能』ほか多数。

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