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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2020.06.15 更新 ツイート

第133回 50いとうあさこ

50になりました。50年前の1970年6月10日午前5時51分。48センチ、2630グラムで生まれた私は50年の時を経て、身長は3.3倍、体重はなんと25.8倍大きくなりました。だいぶ前から自分の事を十分“大人”だと思ってまいりましたが、改めていろんな方から「半世紀生きた」と言われるとね。“世紀”って歴史の教科書に出てくる言葉だから。もう“大人”と言う表現すら若すぎるのではないか? そんな謎の気持ちになるほど重みも感じる。

小さい頃、誕生日は「ケーキが食べられる日」「何かプレゼントあるかなぁ」とシンプルにワクワクする日だった。20歳越えてお付き合いする殿方の出現で、1ランク“特別”な日になる。あの頃はトレンディなドラマ観て、“誕生日”(“クリスマスイブ”“年越し”も)は彼氏と過ごすアニバーサリーDAYだと思っていましたから。ちょうどユーミンさんの「ANNIVERSARY ~無限にCALLING YOU~」も大ヒットして。だから最初の殿方が朝、私がバイトに行く前に置いていった1000円で100円くらいのコンビニスイーツを買っておいてくれただけで嬉しすぎて泡噴いて倒れたり。あ、一応ご存じの方も多いとは思いますが、私のお付き合いした方は“働かない”or“ほぼ働かない”だったのでこんなエピソードが続きますのであしからず。彼は私と誕生日が4日違いだったので真ん中の12日を“二人の誕生日”として彼の地元・神戸旅行をプレゼント。自分の通っていた学校や思い出の地を車で案内してくれたけど、実家に近づいた時「ここで待ってて」と急に巻かれた。この待っている間にカーレイディオから流れてきたダイアナ・ロス「If We Hold On Together」を聴くと、今でもなんだか寂しくなる。

たしか20代後半の誕生日、その時の彼に「私がお金出すから一緒に旅して」と今考えれば謎のお願いをし、レンタカーで行き先未定のドライブへ。「4つ先の信号右!」「10分まっすぐ」「次出てきた高速にのる」なんて言うのをしていったら最終的に福島のいわきに到着。夕暮れ時、素敵なヨットハーバーを発見。やっぱり“かわいいオンナ”だと思われたくて「わーっ!」なんてはしゃいで港のギリギリのとこまで走って海覗いちゃったりして。「見て見て! 魚がいっぱい!」としゃがんだ瞬間、履いていたGパンのポッケの中にある小ポッケに入れていたレンタカーの鍵がしゃがんだ際の腿の肉圧で押し出され、テトラポットにぶつかりながら海の中へポチャン。そんな事件もありました。

30歳になる時は今と違って「30歳で独身って……」みたいな空気、ありましたからねぇ。以前もちょっと書きましたが30になるのが怖すぎて、前日の6月9日は“いつもよりちょっと高い1800円のワイン”と“ちょっと素敵なイタリアンなお惣菜”を伊勢丹で買って自宅で一人、出来るだけ明るい気持ちになれるよう映画「プロジェクトA」のビデオ観ていた。時計の針が0時を刺そうとする頃、ちょうどエンディングのジャッキーNGシーンだったんですけど全然笑えないどころか震えちゃって。0時の時報と共になんか号泣。恐ろしい幕開けでした。今思えば30代は体力がまだあるし、経験値もあるわけだから。そう言う意味では一番素晴らしい時間だったですけどね。

40歳の時は“30の悲劇”を繰り返してはいけない、と誕生日ジャストの日に“お誕生日会”の名目で単独ライブを開催する事に。オープニングでは2メートル四方の枠を作って、そこにでっかい半紙を貼って大きく筆で「40」の文字。松田聖子さんの「Precious Heart」にのせてそれを破って飛び出したんです。そう、文字通り“40の壁を越えた”のです。飛び出してきた目の前の客席には100人ちょっとのお客様達。めっちゃくちゃ温かい拍手と「おめでとう!」の声をいっぱい浴びせてくださいまして。その瞬間、なんか「あ、40代、イケる!」と。何がどうイケるのかはよくわからなかったですが、何かがすごく楽になった瞬間でした。

それから毎年6月、単独ライブをやってまいりまして。今年ジャスト50と言う事で数年前から計画して、10年ぶりにドンピシャ当日にやる予定でした。ただ残念ながら中止。しかもパーッとパーティだぜい! みたいな世でもなく。あ、どっちみちそういうタイプではないか。とにもかくにもゆっくり誕生日となりました。

まず前日、40代最後の晩餐タイム。ホントにたまたまなんですが、ちょうど自炊で作ったけどちょっとだけ余っちゃった、みたいなのが溜まってきていて。さすがに食べなきゃ、となりまして。食べかけのがんもの煮物、食べかけの豚肉とキャベツのカレー炒め、食べかけのお新香などなど。それをツマミに缶ビールをプシュッと開けてグビリグビリ。一人そのまま0時を越え、迎えた50歳。どこか30歳になった瞬間と似ている気もしますが、“自分が強くなった”もあるし、“こういう時だから”の理解も頭がちゃんと出来ているんでしょうね。意外に寂しくないと言うか。いや、寂しいどころか幸せでした。

だって10日になると黒ちゃんが「何か食べたいものあったら言って。くーちゃんイーツするよ!」と連絡くれて。結局10日の夕方、空見たら夕立がくるかも、だったのでご遠慮しましたが。嬉しかった。イモトもつたないピアノの弾き語りで「Happy Birthday to You」歌う動画送ってくれたり。他にもみんながくれた御祝メールやLINEを一つ一つ噛みしめながら返信したりして。その返信がだいぶ速かったようで「きっとこの人寂しいんだろうなぁと思った」とのちに文化放送・砂山アナに言われてしまいましたが。そして翌日11日には仲良し・大久保さんが大好きなイタリアンのお店のテイクアウトを買ってお祝いしてくれまして。「前の日注文に行った時『明日お祝いしたいんですけど』って言ったら、店員さんに『あ! あさこさんの?』って言われたよー」と。この年でそんな認知されているくらいの仲良しがいるのも本当に幸せ者だ。

ここ数年、私の目標は「生きる」の一言。本当に一日一日を大事にしながら50歳、そして50代を進んで行きたいと思います。“50”。その響きの潔さ、なんか好きだなぁ。どうぞ“50あさこ”もよろしくお願いいたします。

 

【本日の乾杯】

在宅生活で始めたぬか漬け。一人暮らしには自分の好きなように少量から作れるからMyぬか床サイコー。今の所No.1は大根。ちょっとツマミが足りない時、出してきてパリポリパリポリ。至福の時。

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いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。 人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。

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