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日本人が知らない『あぶない英語』

2020.04.07 更新 ツイート

放送禁止用語を使わずに「アレ」を英語で表現するには? 岩田雅彦

ピーと鳴る放送禁止用語はこの単語

どの国にも、テレビ、ラジオなどで使用してはいけない放送禁止用語があります。基本は性的表現であり、文化や習慣が異なっても大きくぶれることはありません。しかしながら、その国の文化や習慣が反映されている部分もあり、勉強になることが多いのではないかと思います。

日本語における放送禁止用語として、「〇ンコ」に該当する性的表現があります。小学生向けの雑誌『コロコロコミック』は、「〇ンコ」の用語を多用し息の長い雑誌になっているそうです。編集長はそれを、 「うんこ・ちんちん原理主義で喜んでもらっている」 といいます。主な読者である小学生の男子は 「うんこ」 と 「ちんちん(ちんこ)」 を楽しんでいるということです。

表向きは禁止になっていても、実需という面においては、大人(特に男性)になってもかなり需要があるといえるでしょう。それでは、英語における放送禁止用語の、代表的なものを挙げましょう。

・fuck (fucking):性交
・shit:大便
・piss:尿
・cunt(または、pussy):女性器
・dick:男性器
・tits:おっぱい

欧米で放送禁止用語は総称してdirty words といわれます。もっと詳しく説明すると、seven dirty words (shit, piss, fuck, cunt, cocksucker, motherfucker, tits) や、4文字の単語が多いことからfour-letter word(fuck, shit など)と呼ばれ、「ピー」が入ります。

(写真:iStock.com/bee32)

ちなみにletter は「文字」の意味で使われています。なかでもfuck はF-word とも呼ばれています(これは、fuck の頭文字を取ったものです。放送コードで表記できないため、テロップなどでFと表記しています)。

5文字以上の放送禁止用語には、たとえばprick があります。これは男性器を意味しますが、この単語だけを叫ぶ場合、「バカヤロー」という意味になります。また、assholeは肛門を意味しますが、これもこの単語だけを叫ぶ場合、「バカヤロー」という意味になります。下ネタではありませんが、やはり放送禁止用語となっています。

同じ肛門を意味する単語でもだいぶ感じが違う

それでは、放送禁止用語を使わずに先述の言葉を表現するにはどうしたらいいでしょう。

真面目な会話のなかで、性交、大便、尿、女性器、男性器などの言葉を使用しなくてはならない場面はよくあるものです。たとえば、学校における性教育、また病院で医者に症状を説明する、医学的な話をする、性的な嗜好を共有する仲間に自分の性器、肛門の特徴や症状、傾向について相談するなどの場面では、どんな英単語を使用したらいいのでしょうか。

・性交:sexual intercourse
・大便:stool, feces
・尿:urine
・女性器:female genital organs

(ストレートに表現する場合:膣 vagina)
・男性器:male genital organs
(ストレートに表現する場合:陰茎 penis)
・肛門:anus

以上が、真面目な会話をするときにふさわしい単語です。

とはいえそういわれても、実際に英会話のなかで、品格がないにせよ、あるにせよ、それぞれの単語をどのように使用したらいいのか、ネイティブ(native speaker:その言語を母国語として話す人の略)ではない場合、さっぱりわからないでしょう。

そこで次に、性交、大便、尿、女性器、男性器、肛門を使用した品格のない、そして、品格のある例文を挙げてみます(中立的な表現がある場合には、その例文も挙げておきます)。両者の表現を比べてみると、同じ性交、大便、尿、女性器、男性器、肛門を意味する単語であっても、だいぶ感じが違うのではないかと思います。あまり英語が得意でない人でも、違いがわかるはずです(と思います)。

ただし、同じ例文を使って、単に単語を置き換えればいいというわけにはいきません。

下品な表現と上品な表現では表現方法がまったく異なり、単語を置き換えるだけでは違和感を覚えてしまうからです。たとえば、単語レベルでは、クソを意味するshit を、大便を意味するstool やfeces に置き換えることができますが、上品な英語では大便という表現さえ使わないのです。

つまり、品格のない英会話ではより直接的な表現が好まれますが、品格のある英会話では直接的表現を避ける傾向があるのです。たとえば、品格のある英会話では性交を表現するとき、sexual intercourse さえ使用しません。

(写真:iStock.com/Dawie Nolte Photography)

Are you (sexually) active?
(性的にアクティブですか?=勃起不全ではありませんか?)

これは、病院に行ったときの医師からの質問であったり、会話のなかで性的な関心、能力がどの程度あるか婉曲的に聞かれたりする場合として考えられます。つまり品格がある会話においては、直接的にセックスという表現が出てこず、言外にほのめかすということです。

どうでしょう。なんとなく、品格がある英会話、ない英会話の雰囲気がわかったのではないでしょうか。それでは品格のない、ある、ときには中立的な表現を入れた例文を挙げて、比較してみましょう。

品格のない性交:
Did you fuck her?
(あの娘とやっちゃった?)

中立:
Did you have sex with her?
(あの娘とセックスした?)
Did you have sexual intercourse with her?(あの娘と性交しましたか?)

「あの娘とやっちゃった?」という質問を、もしも品格のある英会話のなかでする場合、どうなるでしょう。直接的な表現を避け、あえて品を良くするため婉曲表現にするので、以下のようになります。

1 Did you have fun?(楽しんだ?)
2 Did you play doctor?(お医者さんごっこした?)
3 Did you learn about the birds and the bees?(性行為の基本をしましたか?)

1について。fun は楽しむということからの連想です。楽しんだ?=セックスした? になるのです(もちろん時と場合によりますが)。

2について。日本語でエッチ体験をお医者さんごっこと称する場合があります。これは、欧米でもそういうたとえとして使われます。子どもがやる遊びというのはどこの国であれ、生き物としての根源的欲求に基づくものが多いのではないでしょうか。お医者さんごっこは、欧米ではお互いの性器を診察し合うことを意味することがあります。実際、映画でも男同士でペニスを見せ合い、大きさを競うような場面があります。子どもならいざ知らず、大人の場合は観察で終わることは稀まれですので、服を脱がして触診する=セックスする、を意味します。

3について。The birds and the bees は自然の営み、という意味です。かつては欧米人でも、子どもに性に関する話をダイレクトにするのはためらわれた時代がありました。その時代に、たとえとして使われたのがこの表現です。「セックスは自然な行為なんだ」と諭す意味もあるようです。よって、ここではlearn を使うことで少し柔らかい表現になります。なにより、セックスに真面目に取り組もうとする感じが生じ、品格が漂っています。いかがでしょうか。とはいえ、婉曲表現が必ずしも上品になるとは限りません。品格のない英会話でも婉曲表現(スラングではありますが、直接的な表現を避けているという意味で)を使うことはよくあります。

Did you feed the beaver?(やっちゃった?)

Feed は「餌をやる」という意味で、beaver は婉曲的に女性器を意味します(beaverの本来の意味は動物のビーバーです)。もちろんスラングですが、the beaver で女性器を指すのは女性をかなり蔑んだ表現です。この時点で、女性ではなく、性器(=セックス)にしか興味がないことを示しています。ちなみに餌をやるというのは、そこに何かを挿入するイメージがあるのではないかと思います。

(写真:iStock.com/NiklasHeisters)

また、聞いたことがあるかもしれませんが、本来、猫を意味するpussy もスラングで女性器、性行為を表します。棒状のものはペニスを表すことが少なくありません。たとえばjoy stick, sausage, snake などがそれにあたります。他にも、pocket monster やoneeyepirate(片目の海賊。閉じているほうの目を縦にすると尿道口に見えることからペニスを表すそうです)など、連想できれば何でもいいのです。いかに下品な想像力が豊かであるかを試す連想ゲームだと思えば、理解しやすいのではないでしょうか。

どうでしょう。要は相手に、「あの娘とセックスしたか?」と聞いているだけの文章ですが、奥が深いですね。品格のない聞き方ではfuck を使い、中立的な聞き方ではsex やsexual intercourse を使います。しかし品格のある聞き方では、もはや、いやらしい言葉さえ出てこないのです(品格のない英会話でもいやらしい言葉は出てこないことがあります。わかりにくい婉曲表現が使用される場合もあるので気をつけてください)。

関連書籍

岩田雅彦『あぶない英語』

Fuckは日常英会話のなかで最頻出ワードなのに、学校では絶対に教えてくれない英語の代表格だ。適切に使えば場が和み相手との距離も縮まるが、むやみに使えば命の危険すらある。英語には使い方を間違えると酷い誤解や怒りを招き、たったひと言で人生を棒に振りかねない表現が数多くあるのだ。ではどんな言葉がパワハラ、セクハラと認識され、差別的だと大問題になるのか。「あぶない英語」を学ぶことで危機管理を徹底し、その背景にある英語圏の文化をも学ぶ、未だかつてない英語と英会話の教養書。

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岩田雅彦

 

1972年静岡県生まれ。大阪府立大学非常勤講師、近畿大学非常勤講師として英語を教える。英検1級。大学で採用される一般教養英語教科書の常連執筆者。イギリスの大学院と大阪大学大学院医学系研究科(単位取得満期退学)で公衆衛生学を学ぶ。その後は医療関連の会社、およびIT関連の会社を経営。著書に『ネットで儲ける! 輸出ビジネス』(すばる舎)、『海外投資&海外オークションの英語』(明日香出版社)、『医学部入試英語の戦略的勉強法』(エール出版社)がある。

 

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