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フィンランドで暮らしてみた

2019.11.08 更新 ツイート

フィンランドでアパート探索してみたよ芹澤桂

白い大聖堂、サンタクロース村、オーロラ。フィンランドの見どころは数多くあれど、ガイドブックに載っている名所はもういいよ、という人には私はぜひともアパート探検をおすすめしたい。

(フィンランドだからって何から何までおしゃれとかではない)

私個人が海外旅行に行ったとき、何が一番面白いかというとその土地のスーパーやマーケット巡りなんだけれども、それは地元の人の生活ぶりがうかがえるからで、同じ視点でフィンランドのアパートメントを見てみると結構ユニークなんじゃないかと思う。

まず、一言にアパートと言っても色々あるけれど、日本でマンションと呼ばれる高層式集合住宅から言及したい。ここでは日本に合わせてマンションと呼ぶ。
高層式、と言ってもフィンランドは高い建物があまりないので、7、8階建ての上の方にでもなればだいたい辺りが見渡せる。余談だけど以前外資系ホテルチェーンが32階建ての新しいホテルをヘルシンキに建てようとして、高すぎる、と許可が下りず16階建ての建物を2つ並びにした、というエピソードがある。それぐらい高い建物がない。

そしてマンションは四角く無機質な見た目をしていることが多い。市の中心地など観光客が行く場所はまだ古き良き時代の美しい、装飾が施された100年ものの建物なんかが残っているけれど、メトロでふた駅も行けばその光景は日本のベッドタウンと変わらず、北欧デザインを期待してくるとちょっとつまらない見た目をしている。

ただし中が断然に面白い。

外見より中身が勝負

 

まず、マンション内にはたいてい地下とか半地下がある。私が以前住んでいたマンションの地下室には物置スペースがあり各戸ごと4畳ほどの広さが与えられていた。金網で区切られ扉に鍵もかけられる区画で、扇風機や加湿器など季節用品や工具を置いていた。ただし他の人から中が丸見えなので、貴重品や恥ずかしいものはあまり置けない。

それから冷蔵室もあった。元は冷蔵庫がなかった時代に地下の涼しさを利用してじゃがいもなどを備蓄しておく場所で、これもみかん箱が3つ入るくらいのサイズに区切られ各戸に割り当てられていた。なま物を置けるほど冷えているわけではないけれどひんやりとしていて、最も一般的な用途はなんといってもビールのストックだ。フィンランド人はビールをよく飲む。エストニアからフェリーで何カートンも安く仕入れてきて、冷蔵室に置いておくのだ。もちろん本来の目的通り根菜を置いておくのもいいけれど、そんなわけで冷蔵室におけるアルコール盗難は割とよくあることだという。心配性のうちの夫はワインを備蓄し、ドアにしっかり目張りをして何が入っているかわからないようにしていた。

それから地下室と言ったら欠かせないのがサウナ。これも住民共有のもので時間枠を買って入る仕組み。うちの今の家にはシャワーの横に小さいサウナが付いていて好きなときに入れるけれど、マンション共有の場合は通常個人のものよりも広く自分でサウナストーブの石を変えたり掃除したりと管理する手間がないので、あれも良かったなぁと今になって思う。

半地下や一階のスペースに駐輪場がある建物も多い。自転車だけでなくベビーカー、冬はスキー板やソリなども置いておける。
あとはマンションによっては、DIY室があるところもある。自分で家具を直したり作ったりするときに気兼ねなく騒音を出せるし、工具も共有のものがあるのでわざわざ買う必要がなくてとても便利だ。

共有のもの、といえば私が今住んでいるところは高層式のマンションではないけれど、ここら一帯のコミュニティがあり、共有の小屋がある。その小屋には、いつでも借りられる落ち葉かきや雪かきなどの道具が詰まった倉庫もあるし、事前予約で借りられる30畳ほどの部屋もある。部屋の中には長椅子、長机、ミニキッチン、トイレがあり、主な用途は子供のお誕生日会だ。なぜだか古い卓球台もあるので、住民の卓球大会なんかも昔はやっていたのかもしれない。
他にも、うちのマンションには書斎サイズの図書館があるよ、なんて人もいるし、無料のトレーニングルームが付いている建物も見たことがある。建物によって違うので、人のアパートに遊びに行って、ちょっと地下見せて、なんて頼むのも楽しいかもしれない。

地下室兼「防空壕」

以前日本から友人がやってきたとき、やはり義父が興味深いだろうから、と彼が住んでいるマンションの地下を見せてくれた。倉庫、駐輪場があり、フィンランドではいたって普通の装備だ。しかし地下室ツアーを終えたとき一言、地下室への重い鉄の扉を指しながら彼が放った言葉が衝撃的だった。

「こうやって非常時には防空壕として閉じられる仕組みになっているんだ」

ぼうくうごう。戦争映画の中でしか見たことがないその存在を、まさか日常生活で目にするとは思わず、私は自分の耳を疑って聞き返した。

「あの、戦争のときに敵から逃げて隠れるやつ?」。
すると、うん、と深い頷きが返ってくる。
よくよく聞くとフィンランドでは法律により、一定の床面積以上を持つ建物には防空壕を作らなければならないらしく、家に帰って見てみると当時私が住んでいたマンションの地下室にも、ドアに「非常時には防空壕になるよ」というサインが貼られてあった。

一戸建てや戸数の少ないアパートに住んでいる場合は各地域にある公共の防空壕を利用でき、ウェブサイトで最寄りの避難所を確認できるようにもなっている。

幸いにもそれらを利用する機会は訪れたことはないけれど、さすが徴兵制度がいまだにある国、平和ながらも戦争を匂わせるものはすぐ身近に、自分の家の地下にだって潜んでいるのだ。

(非常時には防空壕になるよ)

ちなみにマンションや一軒家の中の設備もいろいろとユニークでフィンランドならではのものが多いので、いつかまた紹介したいと思う。

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フィンランドで暮らしてみた

気づけばフィンランド人と結婚して、ヘルシンキに暮らしてた! しかも子どもまで産んだ!

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暮らしてみて初めてわかった、フィンランドのちゃっかり賢く、ざっくり楽しい、意外な一面。

ゆるゆるまったり、マイペースにご紹介。

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芹澤桂 小説家

1983年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。2008年「ファディダディ・ストーカーズ」にて第2回パピルス新人賞特別賞を受賞しデビュー。ヘルシンキ在住。

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