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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2019.08.30 更新 ツイート

第114回 42.195km<前編>いとうあさこ

今年の「24時間テレビ42 人と人~ともに新たな時代へ~」。今回私はハリセンボン春菜、ガンバレルーヤよしこ、水卜麻美アナと4人で“24時間駅伝”に参加させていただきました。

 

始まりは6月の単独終わってすぐの頃。「イッテQ!」の打ち合わせと言われ、テレビ局内の会議室へ行きまして。一人待っていると突然内村さんとカメラが。そして「あなたは24時間マラソンランナーの一人に選ばれました」と。「ん? どういう意味?」最初の感想はこれです。だってそもそも私にあの大役が来るなんて思ってもみていないわけで。その上“の一人”と言う謎のキーワード。そりゃあ“わけわかめ”ですよ。で、そこから今回は駅伝スタイルで、ランナーは私も含め全部で4人。その4人がそれぞれフルマラソンを走り、襷を繋いで国技館を目指す、という事を聞く。ああ、情報が多い。多すぎる。オロオロする私に「その4人のランナーのもう一人が今からここに来ます」と内村さん。ああ、展開も早いです。一回波の音とか入っているCDかけて落ち着きましょうよ。程なくしてその人はやって来ます。その会議室の扉には磨り硝子の部分があってちょっとだけ透けていて。外の様子がぼんやり見えるのですが、そこからピンク色が見えた時、仲間の勘なんですかねぇ。すぐによしこだとわかりました。その途端、なんだか涙がブワーッと溢れてまいりまして。なんだろう。安心したのかなぁ。逆に「ああ、そっか。私、不安だったんだ。」と気づかされたと言いますか。そして自然と「よしこがいるなら大丈夫」って思えたんですよね。そこで内村さんに改めて「やりますか? やりませんか?」と聞かれて、何の迷いもなく「やります」と答えました。後の二人のメンバーも聞かされて、その意志が更に強くなったのは言うまでもありません。ただちょうどその時期は「イッテQ!」の中国ゴマ&山田ジャパンのポールダンスの練習がガッツリかぶっておりまして。ご覧の通り、全部体を使うものばかり。鞄の中に大量の湿布と元気が出るエネルギーチャージの粉を詰め込み常備する、そんな49歳の夏が始まりました。

私は元々、短距離派でして。中1から高2まで陸上同好会で、50メートルのハードルとかをやっていました。その部活で一度だけ皇居一周5kmマラソンにチャレンジしましたが、当時血圧も40・80とだいぶ低く、お医者さんにも「無理しない方がいい」と言われたんですが、天性の負けず嫌いでうっかり走っちゃいまして。なんとか完走しましたが、最後ちゃんとフラフラ。それが人生最初で最後の長距離。ただそれ、17歳の時の話ですから。17歳でフラフラだった私が“49歳でフルマラソン”なんて想像もつかない。でも初回の練習の際、24時間マラソンの名物コーチ・坂本さんからフォームは褒めていただきまして。それはよかったのですが、むしろもっと大変な精神的な部分。そこは経験しないとわからない事だらけ。例えば「今日は皇居1周ね」と言われて走るじゃないですか。で1周終わったはずなんだけど誰も足を止めない。「あれ? 1周って言ってなかったっけ?」なんて思いながら走るんですが、そう思ってからが急にめちゃくちゃキツいんですよ。要は“1周”で心が切れちゃったんです。で1周+2km走ったとこで我慢できなくなって「あのぉ。ゴールは?」と尋ねると「あさこさんの足がしっかりしていたので距離伸ばしちゃいました」と。「言ってよぉ」と思いましたがこの時、こんなにも気持ちで左右されるんだ、という事を知るわけです。逆によしこと一緒に夜9km走った時はしんどいはしんどいのですが、やっぱり心強いし楽しいし。途中、町に漂うカレーの匂いにはしゃいだり、高級マンション見てうっとりしたりしていたら、いつの間にかゴール。タイムもいつもより早かったようで。ホントに“気持ち”の大切さがわかりました。

別のある日の練習では今日は10km走る、と。まあもう9kmは経験済みですから。踏ん張れば行ける、って思っていました。でその日はふくらはぎに肉離れの前兆みたいな痛みが出ちゃったのもあるのですが、広い敷地の外周4kmを走り戻ってきた時。水分取ったり、首冷やしたりしてちょっと休んだんですよね。でこちらとしてはもちろん10kmってわかっていますから。「さあ、あと1周半行きましょう!」ってまた出発しようとするのですが、まさかの足が動かないんです。なんとか歩いてみるものの、全然走り出せない。今度はそこで、一回止まった後の動き出しの辛さを知るのです。

そうやって距離を伸ばすだけじゃなく、いろんな事を学びながら日々練習を重ねまして。その最大の山場が忘れもしない8月上旬のめちゃくちゃ暑い日。大磯にて私とよしこの5時間30kmチャレンジ。私がその日までで一番長く走った距離は11km。倍以上の30kmは未知も未知。知らない世界です。しかも5時間太陽を浴びながら走り続けるわけで。でもとにもかくにも、進むのみ。よしこと頑張ろうと抱き合い、スタートしました。

以前もちょっと申しましたが、大磯は私の祖父母の家がありまして。子供の頃、夏休みや冬休みを過ごした思い出の地。走り出してすぐ、昔遊んだ山や川、神社、道などなど懐かしい風景が次々に見えてきて。大磯駅の裏を抜けた細道の向こうに大磯の海が見えた時はもう脳内、井上陽水さんの「少年時代」が流れまくり状態ですわ。ただね、そんな素敵な時間は続かないわけで。想像以上に強く照りつける太陽の熱や、ひたすらアップダウンが続く山道から来るダメージがかなりひどく。49歳大ピンチ、となるのですが、うっかりお時間。次回もうちょっとだけこの話にお付き合い願います。
 

【本日の乾杯】
以前、家呑みした際のおつまみ。海苔の佃煮といつもの日本酒ロック。旨みのかたまりに拍手。実は今回マラソンなどでずいぶん長い事呑んでいなかったので、ここ最近のおつまみ写真がない。ただこのコラムを書いている今日久々に呑む予定なのですが、この辺りから優しく始めようかな。

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いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。 人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。

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