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ゴルフは名言でうまくなる

2019.08.04 更新 ツイート

第100回

「ゴルフでは自分がトシだと思った瞬間、すべてがダメになる」――夏坂 健岡上貞夫

本当にゴルフは名言でうまくなるのか

この連載もついにというか、なんとかやっとというか、第100回を迎えることができた。私(現在65歳)と同世代の、練習量が少なく、年々筋力が落ちてくるアベレージ・ゴルファーのレベル維持・向上に役立つ内容を中心に、名言のサポートをもらいながら書いてきたつもりだ。

さまざまなご意見もあるようだが、役に立った、不調が直った、またゴルフが面白くなったというポジティブな感想も多くいただいた。

この連載がほんの少しでも世のゴルファーの助けになっているのなら、今後もできる限り続けていこうと思う。

さて、表題の言葉を残した夏坂健さんは、私のもっとも好きなゴルフエッセイストだ。夏坂さんの著書によって、私自身のゴルフレベルは維持されているといってもいい。私が拙い連載を書き始めたのも、夏坂さんの影響によるところが大きいと思う。

「文字を読むだけでゴルフがうまくなるはずがない」と思う方もいるだろう。しかし本を読むことでインスピレーションを得て、ゴルフがよくなったということを私は何度も経験した。

実際、トップアマやプロのレベルならいざ知らず、普通に遊び半分でやっているゴルファーにとって、技術面の向上を求めるのはなかなかに難しい。結局、それ相応の練習量や筋力トレ-ニングが必要だからだ。練習せずにシングルやスクラッチプレーヤーになれるなんていうことは、絶対にない。

しかし、ある程度(ボギー・プレーヤー程度)の技術レベルに達したなならば、そこからシングル・ハンディになるぐらいは、技術以外の部分のレベルアップで可能なのだ。

それには、筋力アップトレーニングも科学的スウィング矯正も必要ない。ただ、考え方や向き合い方を変えるだけでいい。トシのせいにしてあきらめ、老け込む必要はないのだ。これが表題の名言の意味であろうと思う。

筋力の低下でスコアアップ?

中年以降、高齢になったとしても、実はゴルフが上達しやすくなる要素がある。それは、筋力の低下だ。

筋力が落ちるのに何がいいのだと思うかもしれないが、筋力が低下すると飛ばなくなる一方、曲がらなくなるので、スコアはむしろ向上するのだ。

若くて右腕の力が強いと、アベレージ・ゴルファーは激しくスライスし、上級者は危険なフックが出る。これがスコアを乱す原因になっているのだが、高齢になり腕力が落ちると、ひっぱたくことが自然とできなくなり、打つことをやめてスウィングするようになる。

女子プロがスライスしないのは、腕力がなく、体全体を使ってスウィングしているからだともいわれている。もちろん、女子プロでもフェードヒッターはいるが、女子のなかでも筋力のある飛ばし屋がフェードを持ち球にしているのだ。

一方、男性のようなバナナスライスは、女性の腕力ではまず打てないようだが、男性も高齢になり筋力が衰えると、スライスしなくなりショットがよくなるのだ。一発の長打は期待できなくなるが、安定した曲がらないショットは大いに期待できるようになるのである。

ジャック・ニクラスなど多くの選手が「スコアの70~80%は100ヤード以内から打たれている」と言うように、ゴルフというゲームは、大半はショート・ゲームなのだ。

このショート・ゲームに、強くない筋力はとても向いている。短いショットは、力を抜いてゆっくりスウィングすることがいい結果をもたらすからだ。

さらに、高齢になると柔軟性が落ち、体が硬くなる。これもマイナス要素と思われがちだが、実はスコア的にはいいことなのだ。

若い頃は柔軟性が高いのでオーバースウィングになりやすく、ほとんどのプレーヤーがスウェーしたり、大きすぎるトップからスウィングしたりしている。これでは、タイミングが合えば飛ぶが、曲がることも多い。

高齢になると柔軟性が低くなり、若者のような大きなトップまで体が回せなくなる。すると必然的に、軸がブレないコンパクトなトップとなるから、これまたショットが安定してくるのだ。

このように、年齢を重ねることで筋力や柔軟性が低下すると、必然的にコンパクトで体全体でリズムよくスウィングすることになるから、シュアーなショットを実現できるようになるのだ。

年齢を重ねることも、ゴルフに関しては悪いことばかりでもないとは思えないだろうか?

セルフ・ダウトと意欲低下をはねかえそう

さらに、長年にわたりゴルフをやってきた高齢ゴルファーには、経験の蓄積ができてくる。この経験が生きるのは、とくにメンタルの分野だ。

中部銀次郎さんが「心が8割、技術は2割」と言ったように、ゴルフは大半が心のゲームだ。年齢を重ねると、この「8割」の部分で経験が生きてくる。もっとも顕著なのが、「セルフ・ダウト」に対する心の持ちようだろう。

「セルフ・ダウト」とは、自分自身を否定する悪魔のささやきのことだ。

「さっき左へ引っかけたね。このホールもやると左は池だよ」

「この距離のアプローチショットはよくダフるよね。今回もダフるんじゃない?」

「家でよくやってる1mのパットだけど、絨毯と芝じゃ違うんだよね。きっと外すよ」

という具合に、ゴルフではさまざまな「セルフ・ダウト」が脳裏にささやかれる。若いときには、その自己不信の声につられて、悪魔の導くとおりにミスショットを打ってしまっていたものだ。

しかし、否応なしに自分のゴルフレベルが見えてくる年代になると、この悪魔のささやきをなだめる方法を覚えてくるのだ。

「ご忠告ありがとう。引っかけるのはたいがいの場合、スウィングが性急になっているときだ。ゆっくりリズムで振るから大丈夫だよ」

「アプローチでダフるのは、ルックアップしたときだ。ご心配なく、しっかりボールを見て打つよ」

「絨毯と芝ではたしかに違うかもしれない。でも、自分にできることは絨毯で練習しているときと同じようにスムースにストロークすることだけさ。そうだろう?」

これで、自分を縛りつけるあの忌まわしい悪魔のささやきも、一目散で退散する。

それでも、中高年にとって、最後に残る難敵がいる。それは意欲だ。

長きにわたり長老支配社会が続き、まじめにコツコツやっていればいつかは報われる、誠実にしていればいずれは相手もわかってくれる、というお花畑思想のわが国では、高齢になったら必要以上に年寄りぶって意欲を抑えてしまう傾向がある。

しかし、考え方を変えてみれば、上記のようにこれまでネガティブに考えてきたことが、ポジティブな要素と裏腹であることも多いのがゴルフなのだ。

歴史に名を残す選手がひしめいていたゴルフの聖地、セント・アンドリュースのクラブ選手権で、「ゴルフは人生第二の伴侶」という名言で有名なウィリアム・シンクレアが初優勝したのは64歳のときだ。

この後、66歳と68歳でも優勝しているので、フロックではないだろう。しかも、シニアの選手権ではなくレギュラー年齢のゴルファーに交じっての勝利であるところが心を熱くさせてくれる。

「意欲が残っていれば、ゴルフはいつまでたってもトシを取らないものだ」と、夏坂さんはこのエピソードの紹介を締めくくっている。強く、同意した次第である。

今回のまとめ

1. 年齢とともに筋力が落ちると、一発の飛距離は出せなくなるが、大きいスライスがなくなりショットが安定することにつながる

2. 年齢とともに柔軟性の低下も起こるが、スウィングがコンパクトになるので、やはりショットの正確性は上がる

3. 老け込まずに意欲を持ち続ければ、高齢者でもゴルフは向上させることができる

 

*   *   *

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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