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ご飯の島の美味しい話

2019.07.26 公開 ポスト

「かもめ食堂」「ごちそうさん」のフードスタイリスト、初めてのエッセイ。

「深夜食堂」の豚汁と温野菜の豆腐マヨネーズ飯島奈美(フードスタイリスト)

人気フードスタイリスト・飯島奈美さんのエッセイ集『ご飯の島の美味しい話』より、試し読みをお届けします。意外と知られていない「フードスタイリスト」というお仕事の裏話をお楽しみください。最後には、レシピも掲載されています。

*   *   *

「深夜食堂」の豚汁と温野菜の豆腐マヨネーズ

初めて連続テレビドラマに参加したのは、二〇〇九年の「深夜食堂」でした。

原作は私が以前から愛読していた大好きなマンガです。参加することになったきっかけは、映画「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン」でお世話になった松岡錠司監督に声をかけていただいたからです。想像していたドラマの現場というよりは、映画の現場と同じような感覚でした。

ドラマは全十話。松岡監督以外に三人の監督が演出しました。その中に、山下敦弘(のぶ ひろ)監督も参加していました。以前観た「天然コケッコー」がよかったので、ちょっと嬉しく、ミーハーな気分になりました。

撮影に入る前には、スタッフと打ち合わせを重ね、主人公のマスターを演じる小林薫さんに料理指導をさせていただきました。俳優さんは、たくさんの役を演じるからでしょうか、大切なポイントをすぐにつかむのです。マスターらしい姿勢や包丁さばきがいい形にキマるのです。渋いです。

そして、深夜ドラマは予算が少なく、工夫や節約を要求されます。食器などは、私が今まで溜めに溜めた、以前に定食屋や居酒屋の設定のときに使った皿や椀、丼を倉庫から出してきてセットに並べてもらいました。ごくたまにしか使わない食器も、こんな日がくるからなかなか処分できません。

撮影は、川崎にある会社の元研修所にセットが組まれ行なわれました。「汚し」も完璧。汚しとは(設定によって)まるで何年も、又は何十年もそこにあって、使い込んだかのようにセットに汚れを付けてなじませること。カウンター、キッチン、テレビ、クーラーの室外機、階段や地面など、約二週間で作ったものとは思えない、ほれぼれするなじみ方です。

まさに新宿ゴールデン街の一角にありそうな、マンガのイメージにぴったりの食堂ができていました。私たちも、作業場となるキッチンを作るために、施設の元事務所らしき一部屋を確保。冷蔵庫を置き、会議用のテーブル、事務机にビニールクロスをかけ、書類棚に食器や調理道具を並べ、完成させました。
食堂の定番メニューは豚汁定食だけで、あとはお客さんが食べたいものをマスターが作ってくれるという設定です。赤いタコウィンナー、猫まんま、ポテトサラダ、卵サンド、お茶漬けなどなど。そこに来るお客さんが、そのとき食べたいものや、好物を食べてホッとしたり、元気づけられたりする、すてきなエピソードばかりです。

ちょっとウラ話を。撮影のときは一日中、同じ料理ばかり食べるシーンが続いたりします。
例えば、バターライスの回。ここでいうバターライスとは、熱々のご飯にバターをのせて、溶けかけたところで醤油をたらして食べる料理です。軽く一膳食べるなら、とっても美味しいのですが、食べ続けるにはバターのこってりさが少し重くてつらいのです。そこで、醤油と酒を火にかけ、削り立ての鰹節を浸してからこし、おかか醤油を作り、セットに置いてある醤油と差し替えたりして、少しでも飽きずに食べられるよう、変化をつけたりしました。

撮影現場では、慌ただしく料理を仕上げながらも、じ~んと感動してしまったり。料理って栄養になったり、美味しいだけではないんですよね。味や香りで、人の記憶や思い出を蘇らせてくれるものなのだなぁと、しみじみ思いました。料理っていいな。

原作者の安倍夜郎さんも、現場に訪ねて来て、カツ丼を食べて喜んでくれました。
マンガでこのシーンを読んでいたときは、こんなことは想像していませんでした!
そして、いろいろな人に「ドラマよかったよ~」と、言ってもらえるのですが、その半面、苦情も多いのです。

深夜食堂というだけあって、このドラマは深夜の放送。「夜中にお腹がすいて困るよ~!」と、よく言われます。

今回は深夜食堂の定番の豚汁とともに、ヘルシーな野菜料理を紹介します。

深夜食堂の豚汁

豚汁はたくさん作って残っても、翌日がまた美味しいです。キムチやかきなど足して、うどんを煮ても合います。

材料(4~5人分)

豚薄切り肉 200g(3㎝幅)

A

  • 大根 4㎝(いちょう切り)
  • にんじん 1/2本(いちょう切り)
  • しいたけ 2個(スライス)
  • ごぼう 1/4本(ささがき)
  • こんにゃく 1/3枚(ちぎって下茹で)

油揚げ 1枚(油抜きし細切り)

長ねぎ 2/3本(半分は5㎜、半分は小口切り)

里芋 2個(皮をむき一口大)

豆腐 1/2丁(水切りする)

ごま油 大さじ1

酒 大さじ2

出汁(かつおと昆布の合わせ。以下、出汁全て) 1200㏄

味噌 大さじ4~5(仙台味噌や信州味噌を合わせる)

みりん 小さじ1/2

醤油 小さじ1/2

作り方

  1. 熱した鍋にごま油をひき、豚肉を炒め、色が変わったら、Aを入れ炒め、酒を加え、フタをして弱火で4~5分蒸す。
  2. 出汁、油揚げ、味噌半量を加え、15分煮る。
  3. 長ねぎ(5㎜)、里芋、豆腐をちぎって加え、約15分煮る。仕上げに残りの味噌、みりん、醤油で味をととのえ、器に盛り、小口切りの長ねぎをのせる。

温野菜の豆腐マヨネーズ

野菜は白菜やヤングコーン、大根、カリフラワーなどなど何でも。少し固めに歯ごたえを残して茹でます。豆腐マヨネーズには、アンチョビやツナなどを入れて変化をつけても。

材料(4人分)

好みの野菜 約700g

  • れんこん 1/2節
  • さつまいも 1本
  • ごぼう 1/3本
  • にんじん 1本
  • かぶ 2個
  • ブロッコリー 1/2株

A

  • 出汁 800㏄
  • 粗塩 小さじ2

B

  • 絹ごし豆腐 1/2丁(水切りする)
  • マヨネーズ 大さじ2~3
  • 粗塩 小さじ1/3

オリーブオイル 適量

黒こしょう 適量

作り方

  1. れんこんは皮をむき、大きければ半分にし、1㎝厚に切る。さつまいもは皮付きのまま1㎝厚に切る。ごぼう、にんじんも皮付きのまま食べやすい大きさに、かぶは葉を落とし6等分に切る。ブロッコリーは小房に分ける。
  2. 鍋にAを沸かし、固いものから順に入れる。ごぼうを入れ、5分煮たら、れんこん、にんじん、さつまいもを入れ、さらに3~4分。かぶを加え、さらに1~2分して、ブロッコリーを加え、火を止める。しばらく浸してなじませておく。
  3. ボウルにBを入れ、ゴムベラでなめらかにつぶして混ぜ、器に入れる。オリーブオイルをまわしかけ、黒こしょうを粗くひく。
  4. 皿に汁気を軽く切った野菜を盛る。3の豆腐マヨネーズを付けて食べる。

関連書籍

飯島奈美『ご飯の島の美味しい話』

映画「かもめ食堂」でフィンランド人スタッフに大好評だった、おにぎり。「夜中にお腹がすいて困るよ」と言われたドラマ「深夜食堂」の豚汁。映画「海街diary」で試行錯誤した、しらすトースト。……どんな現場でも心がけているのは「楽しんで作る」ということ。人気フードスタイリストの温かで誠実でユーモラスな人柄が伝わるエッセイ集。

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ご飯の島の美味しい話

フードスタイリストとして、数々の映画、ドラマ、CMで活躍する飯島奈美さん。映画「かもめ食堂」でその仕事を知られるようになってから、現在まで、様々な現場でどのような思いで料理を作り続けてきたか。その時々の料理の裏話とともに、日々の出来事を綴った、ユーモアと温かさと誠実さに満ちた、初めてのエッセイ集。 揚げバナナ、タイ風鶏鍋、ミャンマーサラダ、深夜食堂の豚汁、トマトカルボナーラ、しらすとチーズのトースト、豚肉のポッサム、梅酢から上げ、白菜の漬物鍋、ネギとお揚げのとろみうどん、豆腐のあんかけご飯 ほか、今すぐ作りたくなるオリジナルレシピ、51品付き。

バックナンバー

飯島奈美 フードスタイリスト

TVCMなど広告を中心に、映画やドラマなどで活動中。映画「かもめ食堂」「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン」「南極料理人」「海街diary」「ねことじいちゃん、テレ ビドラマ「深夜食堂」「パンとスープとネコ日和」「ごちそうさん」「カルテット」など、多数の作品のフードスタイリングを手がける。著書に『LIFEなんでもない日、おめでとう!のごはん』『飯島風』『深夜食堂の料理帖』『おいしい世界の台所』など。

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