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仕事2.0

2019.06.09 更新

日本型雇用の限界…「働き方改革」で本当に残業は減るのか?佐藤留美

ひとつの会社で一生を終えることは、もはや不可能。究極の個人戦を生き抜く、新しい働き方とは……。終身雇用、年功序列、新卒採用など、従来のシステムが崩壊しつつある今、ぜひ読んでおきたい本がある。それが、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」副編集長、佐藤留美さんの『仕事2.0』だ。佐藤さんが考える、これからの時代の働き方とは? 本書の一部をご紹介します。

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そう簡単に残業はなくならない

2018年5月、働き方改革法案は衆院本会議を通過。これにより、事実上、青天井だった残業時間は、今後どんな理由があろうとも年間720時間が上限になります。既に、大企業の大半が大幅な残業制限に着手済です。

(写真:iStock.com/CreativaImages)

実際、「毎月勤労統計調査」2018年1月分結果確報(全国調査)によると、ビジネスパーソンの労働時間は少しずつ減っていて、2018年2月の労働時間は平均139時間と前年比マイナス2・2%、出勤日数も0・5日減少しました。

電通の新入社員をはじめとした昨今の過労自殺の問題を受け、残業時間に一定の制限が入ったことは、評価すべきことだと思います。しかし結論から言うと、そう簡単に残業はなくならないでしょう

それは、メンバーシップ型と呼ばれる日本型雇用のためです。前述した通り、日本と韓国以外の先進国の会社では、まず「仕事ありき」でその仕事に人が紐づくシステムです。そのため、「その仕事」をしている人が辞めれば社内外で募集をかけて欠員を補充します。

片や、日本の企業はまず「人ありき」で(多くの文系総合職の場合、地頭とコミュニケーション力だけで採用され、どこに配属されるかは人事の胸三寸で決まります)、その人に仕事が紐づく仕組みです。

それにより、業務内容が次々に変わる、また、その人の能力が高いとますます仕事が増えるといったことが多々あります。そもそも、一人ひとりの業務範囲も明確ではありません。だからこそ、各人の業務範囲は際限なく広がる可能性があります。

さらに現況のシステムでは仕事量や成果、あるいは熱意(上司の心証を大いに含んだ)が出世にも大きく影響してくるため、迂闊に仕事量を減らすことは難しいのです。

したがって、政府がいくら残業時間を罰則付きで制限するといっても、その効果はそれほど期待できないというのが私の見立てです。たとえ会社が夜には消灯するといった大胆な策を取ったとしても、会社のカルチャーが変わらない限り、自宅やカフェで仕事をする人が続出するのではないでしょうか。

政府が本当に残業時間を減らしたいと考えるなら、日本型雇用システムとセットで議論するべきでしょう。

先進7カ国で最低の生産性

政府は2017年の未来投資会議で、「生産性革命こそがデフレ脱却への確かな道筋になる」と強調し、3%以上の賃上げをした企業への法人税の減税や、生産性を高めるためにシステム投資をする中小企業の固定資産税の減免なども政策に掲げています。長時間労働の是正と生産性向上をセットで行うという目標は壮大ですが、足元、日本の生産性は極めて低いといえます。

(写真:iStock.com/bennymarty)

2017年12月の日本生産性本部の発表によると、2016年の日本の労働生産性は、時間当たりで46ドル。前年より0・5ドル増えたものの、OECD加盟35カ国のなかでは20位で、主要先進7カ国で見ると最下位の状況が続いているのです。

では、なぜ日本の生産性はここまで低いのでしょうか? それには次のような10の理由が挙げられます。

1. マネジメント(経営者)がビジネスモデルを変えず、「稼ぐ力」が弱い。

2. 多様な人材を活用できないため、イノベーションが起きにくい。

3. 出世に年功要素が払拭されないため、若手のやる気が削がれエンゲージメント(組織への愛着)が低い。

4. 給料に時間給の要素が消えないので、残業前提の働き方が根強く残る。

5. 従業員の解雇がしにくいことから、余剰人材が多く、社内失業者が460万人以上いる。

6. 企業年金や退職金の設計などが理由で、転職することへのハードルが高く、労働市場が流動化しない。だからこそ、有用な人材をスカウトしにくい。

7. 業務縮小に伴う人材整理がしにくく、衰退産業や事業に人が張り付いたまま、成長産業への人材移動がされにくい。

8. 先進国のなかでも、社員をトレーニングする教育予算が極めて低く、仕事のスキルが向上しない。

9. ダイバーシティが進まず、女性やシニア人材、外国人などの有効活用ができていない。

10. 生産性を高めるシステム投資が進まない。あるいは、その効率が悪い。

このように、日本の生産性が低い理由には、前章で説明した通り、日本型雇用の限界からくる要因に集約されるものが多いのです。

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佐藤留美

NewsPicks編集部副編集長。青山学院大学文学部卒業後、出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年編集企画会社ブックシェルフ設立。人事、人材、労働、キャリア関連の記事を多数執筆。2014年7月からNewsPicks編集部に参画、2015年1月副編集長に。専門は雇用、労働、キャリアなど。

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