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ゴルフは名言でうまくなる

2019.05.12 更新

第89回

「私という人間は、迷信を深く信じ、迷信を基準に行動を決定する」――ジーン・サラゼン岡上貞夫

マスターズで劇的復活優勝、タイガー・ウッズのゲン担ぎ

ゴルフというゲームは、何か人智の及ばないものによってスコアが左右されるように思えてならない。これには多くのゴルファーが共感できるのではないだろうか?

それだけに、ジンクスやsuperstition(迷信)を信じ、縁起を担ぐゴルファーは、古今東西プロ・アマを問わずたくさんいる。

2019年のマスターズで劇的な復活優勝をしたタイガー・ウッズは、世界中のゴルファーに感動と希望をもたらした。そんな彼も縁起を担いでいるのは有名だ。

最終日の服は、必ず赤のシャツに黒のスラックス。ナイキのボールはナンバーが1のものしか使わなかった(今はブリジストンのボールを使っているが、ナンバーについては確認できなかった)。

このように、ボールのナンバーや服装のほかにも、方角・偶数奇数・ティーペグの色・プレー日の運勢・グローブの色や銘柄・靴の色などなど、ゴルファーはあらゆることに縁起を担ぐものだ。

ゴルフのスコアは風・マウンド・アンジュレーションなどの自然がなせる幸不幸のさじ加減で決まるだけに、神様が操っていると思いたくもなる。これは、体内のどこかに信仰心のある人類ならではの性(さが)なのかもしれない。

だから、ジャック・ニクラスやアーノルド・パーマーといった偉大なプレーヤーでさえ、なにがしかのゲン担ぎをしていたと言われている。

ジーン・サラゼンも、表題の言葉のように自ら宣言して、迷信を信じていたことで有名なプレーヤーだ。

そして、この言葉のあとに「(迷信を信じた)その結果はどうだったかって? もちろんおかげでとても幸せな人生を手にいれたよ」と続け、堂々としたものだ。

迷信のおかげでキャリアグランドスラム達成?

キリスト教では、「迷信に惑わされるは、神とたもとを分かちたる者、道を誤りし者なり」と教えられ、教皇レオ10世はカルタゴの宗教会議で「迷信にうつつを抜かす者を破門する」と宣言したほどだそうだ。

しかし、そんなことにはお構いなし、サラゼンは迷信を信じたほうがゴルフは楽になると、むしろ迷信を活用してよいスコアを手にしていた。

まず、サラゼンは2という数字にこだわった。最終日、フロントナインでのPar3でバーディ(2)が出ると、必ず快進撃が始まって優勝したのだ。

これは1922年、ふたつの2がつく年の全米プロ・全米オープン優勝で始まった。そして1932年、再び2がつく年にはサラゼン自身が「今年はいい年になる」と予感を持っていたらしい。

この年の全米オープンは、サラゼンが6年間も所属していたフレッシュ・メドウで開催されることになった。ところが、この時代のツアーでは「コースの所属プロは絶対に勝てない」というジンクスがあった。

サラゼンはこの迷信をあっさり受け入れ、フラッシュ・メドウのヘッドプロをさっさと辞任した。さらに10年前の全米オープンで優勝する前、ニュー・オーリンズ・オープンの前身の試合に出て優勝したことをにわかに思い出した。

それで試合の2日前、急遽この年のニュー・オーリンズ・オープンにも出場することを決め、実際に優勝。最終18番のセカンドショットでは、10年前と同じく親指と人差し指をペロっとなめてからドライバーで打つという迷信を実行しようとスタート前から決めていたそうだ。

この直前優勝で自信をつけて、サラゼンは全米オープンに臨んだ。しかし3日目まではいまひとつの状況だったので、最終日は縁起のいい古びたジャケットを着てコースへ入った。

すると、めったに表に出てこない賭け事師、ジャック・ドイルに声をかけられた。この男に声にかけられると、必ずいい結果が得られていたのだ。

さらに、近くにいると縁起が悪い警官を丁重に遠ざけると、とたんにPar3でバーディ(2)。これで俄然調子が出たサラゼンは優勝争いに加わるが、最終ホールでグリーンサイドのバンカーに入れてしまった。

ここでも、サラゼンは迷信にすがった。バンカーショットの前に誰かに声をかけられると縁起がいいのだ。しかし、全米オープンの緊張した場面で声をかける不謹慎な者など普通はいない。

ところが、サラゼンがアドレスに入ったそのとき、なんとカメラマンが「ギャラリーが移動中なので少し待ってくれないか」と声をかけたのだ。しばらく待ったのち、迷信を信じて自信満々のサラゼンが放ったバンカーショットは、そのままカップインして優勝をかっさらったのだった。

極めつきは1935年のマスターズ、最終日の15番Par5でのアルバトロス(2)だ。これで首位に追いついたサラゼンは、翌日のプレーオフに勝って世界初のキャリアグランドスラマーになった。

迷信を信じたほうがメンタルは楽になる

「迷信を信じたほうがゴルフは楽になるよ」と言うサラゼンは、迷信の使い方がうまいといえるだろう。迷信でプレッシャーをはねのけ、自信につながるように使っているからだ。

これに対して一般アベレージゴルファーは、ジンクスや迷信を悪いほうへ使ってしまっていることが多い。

「このホールはいつも引っかけてOBに行くんだよなぁ」
「今日は星座占いが最悪だって、朝のテレビでやってたんだよ」
「車で来る途中で、黒猫に横切られたんだ」
「今日はAさんと同じ組だろ。彼とのラウンドでいいスコアが出たことないんだ」
「このコースは家から見て鬼門の方角なんだよな」

などなど、ネガティブなほうのジンクスや迷信を信じてしまっては、言い訳にはなってもプレーにいい影響は出ないだろう。

こういうネガティブな思考では、そのまま交感神経の働きを優位にしてしまって、思ったとおりのふがいないラウンドに導かれてしまうに違いない。

それよりは、サラゼンのように自分にとって都合のいい迷信だけを考えるほうがうまく作用するだろう。

「この(番号の)ボールを使うと、よくパーが取れるんだ」
「今日はラッキーカラーの服を着てきたからうまくいくだろう」
「7番アイアンでアプローチすると、結果がいいことが多いんだ」
「ちょっと体調が悪いとき、意外にスコアはいいものだ」
「貴重品ロッカーナンバーが奇数(偶数)だと縁起がいい」
「このボールマーカーを使ってからよくパットが入るのよ」

といった具合だ。

ジンクスや迷信は技術とはまったく関係しないが、メンタルには大きく影響するものだ。
一種の信仰のようなものだが、自分が「これで大丈夫」と思えることなら、それを素直に信じたほうがメンタルとしては楽になるから、うまく利用すればいいと思う。

プレー前日はセックス禁止!?

一方で、サラゼンとは対極を行くのがサム・スニードだ。規則正しい生活をすることがゴルフにもいいと考えているスニードは、おまじないのようなものは「嘘っぱち」と信じない。

スニードによると、ゴルフで成功するためにしてはいけないことは次の3つ。

1. 泳いではいけない
2. 腕立て伏せをしてはいけない
3. プレー前日はセックスをしてはいけない

その理由として、1と2はゴルフには不要な筋肉がついてしまう上に、プレーの前日などにやると疲労が残るからだそうだ。また3については、スウィングのパワーは足と腰から生まれるもので、前日や当日の朝にそれを使ってしまってはパフォーマンスが落ちるからだという。

こういう教えは、レッスン書にはない貴重な示唆ではなかろうか? 

ただ、実は3については異を唱えるプロも多い。1948年にマスターズに優勝したクロード・ハーモンは「寝起きにセックスして、熱いシャワーを浴びると無敵になる」と言った。

これを教わったダグ・フォードは1957年のマスターズ最終日にこれを実践し、66の快スコアでスニードに4打差をつけて優勝した。それを聞いたスニードは首をひねるばかりだったという。

短気だがスウィングは流麗なトミー・ボルトは、「当日の朝に練習したって役に立たない。俺はいつだって朝からお楽しみだ。だからスコアはいつも69よ」とジョークなのか本気なのかわからないようなことを言った。

一方、正統派のベン・クレンショー、イアン・ウーズナム、ペイン・スチュワート、ベルンハルト・ランガーなどは、「最終日の残り3ホールは歩くのもやっとになる。足腰に影響のあることは極力避けるべき」と言って、真っ向否定している。

さてさて、ジンクスや迷信もそうだが、このプレー前のおまじないについても、それぞれの都合のいいほうに考えればいいことのようだ。

杉原輝雄プロや中部銀次郎さんは、「プレー前日はいつもと違うことをせず、いつもと同じように過ごすことだ」と説いているが、いかがであろうか?

今回のまとめ

1. 迷信やジンクスを信じて縁起を担ぎたくなるのは、ゴルファーの性といえる

2. 縁起の悪いことを考えるのではなく、ポジティブな迷信を上手に活用すれば、メンタルが安定したり、自信が持てるように作用するだろう

3. プレーの前日は、付け焼き刃の練習など特別なことはせず、いつもと同じように過ごしたほうが悪い影響は出ない

 

参考資料:夏坂健『夏坂健セレクションII スコアは天使の匙加減』ゴルフダイジェスト新書classic、2007年

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幻冬舎plus  ゴルフも人生も、ゲンを担ぐことは無駄ではないらしい。強い人は運も強い。編集者で必要な能力はヒットを呼ぶ運だ、といった著者がいた。その人曰く、作家に必要な能力は運、そしてたゆまぬ努力。とのこと。凡人と天才の差はやはり努力。[ミ] https://t.co/8qCX0Vww0L 7日前 replyretweetfavorite

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ゴルフは名言でうまくなる

スコアアップへの近道は、名ゴルファーの金言に学ぶ。シングルハンディの現役サラリーマンが解説する、知的シングルゴルファーになるためのヒント。

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岡上貞夫

1954年生まれ。慶應義塾大学で体育会ゴルフ部へ入部、本格的にゴルフを始める。卒業後はサラリーマンとして月イチゴルファーとなるも、名言から得られる閃きを生かしシングルハンディを維持。そんな経験やヒントを伝えることで、多くのゴルフ仲間に恵まれた。 現在も定年後再雇用のフルタイムサラリーマンながら、鎌ヶ谷CCにてハンディキャップ7。若い人たちにゴルフのさまざまな魅力を伝えていきたいとの思いで、ゴルフ仲間の輪を拡大中。今回が初連載。

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