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ゴルフは名言でうまくなる

2019.02.24 更新

第82回

「ゴルフは賭けなくとも十分に楽しめるゲームだ」――ボビー・ジョーンズ岡上貞夫

賭けの決着をつける「エキストラホール」の歴史

ゴルフの本場・英国では、サッカー、テニスとなんでも賭けにしてしまい、オッズが作成される。人々はそれぞれの思いを込めて、賭けを楽しんでいるようだ。

そんなお国柄だから、古くからゴルフも賭けの対象だったことは間違いないし、実際にプレーヤー同士もその日の飲み代など、ささやかなものを賭けてプレーしていた。

ただし、英国の伝統として、クラブメンバーがゴルフで賭けるのはあるまじきこととされ、賭けるにしても節度ある範囲にとどまっていたようだ。

しかし、ゴルフが海を越えてアメリカに渡ると、賭け事が大好きなアメリカ人のこと、ゴルフ場では賭けがエスカレートして、いろいろと問題も出てきた。

「19番ホール」という言葉がある。これは、プレー後にゴルフ談義をしながら一杯やるためのバーカウンターのことを指すと、多くのゴルファーは思っているであろう。

ところが、アメリカでは実際に19番ホールが作られていた歴史がある。そこで一杯呑むのではなく、賭けの決着をつけるためのホールだったのだ。

エキストラホールの歴史は英国にもあり、最古のものは、やはりセント・アンドリューズであったようだ。

セント・アンドリューズは1764年に22ホールから18ホールに改修されたため、ホールがあまった。そこでは子どもたちが戯れにゴルフを楽しみ、「19番ホール」の愛称で親しまれていたと、コース設計家ロバート・ハンターの名著 ”The Links” に記されている。

したがって、本場・英国では「19番ホール」は賭け事と無縁の存在だったのだが、伝統などおかまいなしに変えてしまうアメリカでは、賭けの決着をつけるためにわざわざエキストラホールを造成したのだ。

日本における19番ホールの意味

ゴルフがアメリカに渡って間もない1894年、ノールウッド・カントリー・クラブがニューヨーク近郊に開場した。

このクラブハウスには、“伝統的19番ホール”であるバーカウンターも併設されていた。

ところが、賭けに血眼になったプレーヤーが18番で決着がつかないとき、クラブハウスの絨毯をグリーン代わりにして勝負するようになった

あるとき、このクラブハウス内決着プレーで放たれたボールが、どういうわけかバーカウンターに乗っかってしまい、ノータッチルールであったことから、驚く会員に詫びながらもカウンターの上からショットした……ということがあった。

この一件が理事会に報告され、討議の結果、クラブハウス内でのプレーを禁止するのと引き換えに、決着用ホールとしてエキストラホールを追加してはどうかとの声があがった。

英国では考えられない話だが、アメリカでは大真面目。18番ホールとクラブハウスの間に、池越えの120ヤードPar 3を作ったのだ。

そして ”No.19 Hole” の看板も掲げられたこのエキストラホールは、勝負が引き分けに終わった者、プッシュをした者・受けた者、その日のプレーが散々でうっぷん晴らしをしたいゴルファーなどで大盛況だったとのことだ。

その後、ノールウッドの評判を聞いた設計者により、いくつかのコースには最初から19番ホールが用意されたようだ。

日本では土地が少ないせいか、19番ホールを備えたゴルフ場があるという話は聞いたことがない。

日本での「19番ホール」は、クラブハウスのレストランで軽く一杯やるというのが相場だったが、飲酒運転につながることから、最近ではなくなってきた。

そのせいか、日本人は「19番ホール」にいろいろな意味合いを持たせて使うようになった。

たとえば、飲酒運転になるためクラブハウスでは呑めないので、自宅近くまで帰ってから反省会と称して居酒屋などへ行くケース。

運転手は車を自宅に置いてから居酒屋へ行くか、代行を呼ぶかする。それ以外の人は19番ホール(=居酒屋)終了後、それぞれ電車で帰宅する――これは健全なスタイルの日本式19番ホールと言えるだろう。

一緒にラウンドしたのが若いカップルや夫婦連れだった場合、今ではセクハラになりそうでとても言えないが、ラウンド後に「19番ホールも頑張ってね」なんてお下品な冗談を言うオッサンゴルファーもいた。この場合のホールはグリーンで狙うホールではなく……あとは想像にお任せする。

バブル期の豪勢な接待ゴルフが盛んなりし時代には、銀座のクラブホステスを同伴して接待ゴルフなんてのもあった。この場合の19番ホールは、銀座の高級クラブということになる。

さらに、バブル期やそれ以前の経済成長期には、会社の精力満々モーレツ上司が部下に向かって、「おい、このあとは19番ホールに行くぞ」と強引にソープへ誘うようなこともあったのだ。

英国のジャーナリストが何かに書いたか、言ったかしたらしいが、「ゴルフを悪くしたのはアメリカ人だが、最悪にしたのは日本人だ」というありがたくない言葉がある。

19番ホールに関しても、ここまで猥雑になると、彼の言葉を真摯に受け止めなくてはなるまい。

ゴルフコースはカジノではない

さて、表題の名言は球聖ボビー・ジョーンズが月刊誌 “The American Golfer” に連載していたコラムの中で言った言葉だが、実はあのオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブにおいても19番ホールを造成することが議題になったことがある。

同じく “The American Golfer” の1932年3月号に、オーガスタの設計者であるアリスター・マッケンジー博士が “Actual 19th Hole” と題した記事を寄稿している。

それによると、オーガスタの設計基本案を討議する会議で、創立委員のクリフォード・ロバーツ、ゴルフ評論家のグラントランド・ライスなどから「オーガスタにも決着用19番ホールを作ろうではないか」との声が上がった。

スコットランド魂の固まりのようなマッケンジー博士だが、意外にも反対せず、「19番ホールの性格上、距離は90ヤードが適当と思われる。グリーンは片側を狭く、反対側は広くレイアウトする。ピンは常に狭い側に立てる」と具体案まで出している。

この会議にボビー・ジョーンズは所用で不在だったが、博士たちは興に任せて、その場でホールのスケッチまで描いたというから、かなり本気だったようだ。

設計図は、次の会議でボビー・ジョーンズの前に提出された。球聖は「19」の番号を見るなり黙って設計図を折りたたみ、他の書類の下にしまって、以後その話題にはまったく触れなかったそうだ。

それから半年後、連載コラムの中で「19番ホール」を意識したと思われる痛烈な言葉を放った。それが、表題の名言から始まる一文だったのだ。

「ゴルフは賭けなくとも十分楽しめるゲームだ。楽しみ方もわからない人物が、コースをカジノに変えようとする。彼らは直接カジノへ行くべきだ。伝統に敬意が払えないというならば、君はゴルフをやるにふさわしくない人物だ」

日本でも、昔は暴力団員がからんだりして、家の権利書を取られたというような恐ろしい賭けゴルフも存在したらしい。もちろん、こんなのは論外だ。

ただ、ライバルに負けて悔しい思いをすることで練習に熱が入り、ゴルフの上達に貢献することもあるから、節度のある賭けなら薬になるのかもしれない。

ラウンドをより楽しむためのスパイス的な賭けであれば、私は目くじら立てて否定はしないが、賭博行為はあくまで違法行為であるということを忘れないことが肝心だ。

今回のまとめ

1. 節度のある賭けならば、より真剣なプレーになって悪いことばかりではないかもしれないが、本来ゴルフは賭けなくても楽しめる

2. 「19番ホール」での飲み代に供出する程度の賭けであれば、ゴルフ談義を盛り上げるのに貢献することもあるだろう

3. ただし、本性むき出しで血眼になるようなプレーは、マナーとしてはいただけない

 

参考資料:夏坂健『ゴルフの処方箋』幻冬舎文庫、1999年

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岡上貞夫

1954年生まれ。慶應義塾大学で体育会ゴルフ部へ入部、本格的にゴルフを始める。卒業後はサラリーマンとして月イチゴルファーとなるも、名言から得られる閃きを生かしシングルハンディを維持。そんな経験やヒントを伝えることで、多くのゴルフ仲間に恵まれた。 現在も定年後再雇用のフルタイムサラリーマンながら、鎌ヶ谷CCにてハンディキャップ7。若い人たちにゴルフのさまざまな魅力を伝えていきたいとの思いで、ゴルフ仲間の輪を拡大中。今回が初連載。

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