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2013.12.15 公開 ポスト

特集〈狂わずして何が人生〉<br>「サッカー本はなぜ人を夢中にさせるのか?」<br>二本柳陵介(編集者)インタビュー

第2回『セレッソ・アイデンティティ』のチーム愛二本柳陵介

前回の記事:第1回『心を整える。』が心を掴んだ理由
 

選手ではなくチームに寄せた本

──そして、二本柳さんが手がけられたサッカー本の最新刊『セレッソ・アイデンティティ』ですが、こちらは溢れんばかりの“セレッソ愛”が充満した本ですね。

 そうですね。これまでの選手に寄せた本と違って、チームに寄せた本です。著者は、長らくセレッソ大阪の広報などで働いてこられたチーム内部の方になります。

 セレッソは、とても興味深いチームだなと思って、見てきました。最近は香川真司、清武弘嗣、乾貴士、柿谷曜一朗、山口蛍とタレントを続々と輩出して、ヨーロッパでいちばん有名なJリーグチームでもあります。さらに2014年はチーム設立20周年という節目を迎える。そんなタイミングで、チームの歴史や文化、関係する人々について育成という視点から掘り下げてみると面白いんじゃないかなと発案しました。

──セレッソ大阪の魅力を、二本柳さんはどう見ていますか?

 個人的には、育成が非常にしっかりしていて、そこから生き残ってくる選手が、とても良質であること。そのあたりが魅力でしょうか。端正な選手が輩出される印象ですね。みんな“いい子”ですし。いい子じゃないと神様が味方してくれないのかな、とまで思わせるほどです。今年は練習グラウンドに平日でも数百人のファンが駆けつけて、「セレ女」という言葉も生まれましたよね。

 ただ、大阪はいまでも野球文化が根強い地域なので、そこでサッカー本がどれくらい響くかな、というのは勝負でもあります。やはり、まずは地元の方に買ってもらってこその本でもあるので。

──ところで、二本柳さんもサッカーをやられていたのですか?

 ええ、小学校に上がるころから16歳くらいまで、ずっとやっていました。ただ、膝を悪くしてしまって、断念せざるをえなかった。本当はずっと続けたかったのですが。大した選手ではなかったですけど、サッカーはずっと好きでしたね。

──そういう生い立ちもあって、編集者としてサッカー本を手がけるようになったわけですね。

 まあ、そうですね。僕、学生時代はぜんぜん勉強しませんでしたけど、編集の仕事には就きたかったんですよ。19歳のときに、ファッション誌(集英社『メンズノンノ』)の編集部でバイトをしながら、編集の仕事を学びました。
 そのあと、いちおう就活もしたのですが、行きたいところに決まらなくて、講談社の嘱託社員として雑誌『ホットドッグ・プレス』の編集部に入りました。僕はスニーカーやジーンズなどのファッションがメインの担当でした。ファッションはスポーツと絡めることもできるから、当時からスポーツネタを扱うことは多かったですね。

 その講談社時代に、『NIKE football』というサッカーの付録つきムックをつくったんです。この本は付録つきブランドムックのはしりだと自負しているのですが(笑)、結局、刷った7万部が完売し、当時は話題になりました。このムックが、自分の仕事がサッカーとリンクした最初の一冊かもしれません。

 編集者としてサッカーに関わるという話でいうと、自分のできることで、少しでも日本のサッカー界のすそ野を広げたい、という思いもあります。

──思い、ですか?

 はい。僕は、2002年の日韓ワールドカップが実現したのは、なんだかんだいって「キャプテン翼」のおかげだと考えているんです。あの作品を読んで、中田英寿さんも中村俊輔選手もサッカーにハマったわけですから。「キャプテン翼」がなければ、いま日本代表はここまで強くなってないと思う。

 そうした先達へのリスペクトも持ちつつ、自分が、日本サッカーの役に立てることがあるとしたら、やはり本づくりしかない。かつてキャプテン翼があったように、自分がつくるサッカー関連の本が、これからの日本のサッカーに何かしら影響を与えられたらいいな、と真剣に思います。たとえば、僕が手がけた本を子どもや若者が読んでくれてサッカーに興味を持ち、選手を目指してくれるとか、本を読んでくれた女性がサッカーに好感を持ってくれて、自分の子どもにもサッカーを習わせてくれるとか、そういうボトムアップに少しでも貢献できたら、本当に嬉しいですね。

 理想を語ってしまうと、2018年とか2022年のワールドカップを迎えるころには、子どものころに僕が手がけたサッカー本を読んだことのある選手たちが、ピッチの上に半分くらいいる……なんて状況になっていないかな、と(笑)。そのくらいの影響を与えられるような本をつくっていけたらいいな、と思っているんです。

 長谷部選手の本は、他競技の選手もずいぶん読んでくれたみたいなんです。たとえば阪神タイガースの藤浪投手や、今年のドラフト一位で広島カープに入団する大瀬良投手なども読んでくれたそうです。
 サッカーの話を他に置き換えて読んでくれた、というのは僕の中でも大きな自信になりました。すべてに共通する、普遍的な事柄を本にまとめることができたわけですから。

 あと、上京して大学に通っている学生さんのところに、実家から食べ物などが段ボールで送られてきて、そこに長谷部選手の本も入っていた、なんて話も耳にしたことがあります。「親のいうことは聞かないだろうけど、長谷部さんのいうことなら聞いてくれるでしょう。こういう人になってください」みたいな。とてもありがたい話です。

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二本柳陵介

集英社で編集アルバイトを経て、講談社「ホットドッグ・プレス」の編集を担当。2004年幻冬舎入社。雑誌「ゲーテ」の創刊メンバー。現在「ゲーテ」の副編集長として時計などの担当。雑誌編集の傍ら、長谷部誠「心を整える。」、内田篤人「僕は自分が見たことしか信じない」、中村俊輔「察知力」、楢崎正剛「失点」、横井素子「セレッソ・アイデンティティ」、桑田真澄「心の野球」、ケンタロウ「小林カレー」、長澤まさみ「NO MEANING」、山口信吾「死ぬまでゴルフ!」、「PREMIUM G-SHOCK」などの単行本や、ゴルフ場運営会社「アコーディア」の会員誌の編集も兼務。好きな食べ物はカニクリームコロッケ。欠点は早口。好きな本は警察小説全般。

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