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2013.12.17 公開 ポスト

小説家は何を考えて小説を書くのか <第2回>中村文則

 2013年9月に『去年の冬、きみと別れ』を上梓した中村文則さん。痺れるような文体と、先の読めない物語展開が話題を呼び、大重版が決定した1冊です。
 中村さんは、どんな思いで小説を書いているのか。中村さんにとって小説とは何なのか。何をきっかけに「書く側」に回ったのか。第2回目となる今回は、小説を読むことに没頭した日々を語っていただきました。

『去年の冬、きみと別れ』あらすじはこちら

前回の記事:小説家は何を考えて小説を書くのか <第1回>


小説を読むことで救われた高校時代

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「とても暗い人間でした」

 自身の高校時代をそう語る中村文則さん。「集団生活にも馴染めなかったし、生きることを楽しいことだとも思えなかった」のだという。そんな中村さんだが、小説と出会ったことによって人生に変化が訪れる。

「あの頃は、自分を救ってくれるものを探していたような気がします。テレビや漫画や映画にもそれなりに接していましたし好きでもあったのですが、なぜかそこで語られる言葉に満足することができませんでした。そんなときに小説を読むようになって、『こんな世界があるんだ』って素直に感動したんです」

『去年の冬、きみと別れ』では、死刑囚の木原坂雄大がカメラと出会ったときのことが「社会の視点で言えば、それは最悪の出会いになるのかもしれない」と書かれている。そしてそのあとに中村さんは木原坂の視点でこう書く。「でも僕にとってカメラは全てだった」。中村さんにとっての小説も「全て」だったのではないだろうか。小説に惹きつけられた理由をこんなふうに語ってくれた。

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「誰だって、集団の中で生きていくためには表に出せない内面がありますよね。小説では、そういう『人間が隠している内面』が書かれているんです。高校生の頃の僕は自分を相当暗い人間だと思っていましたし、それによってある種の疎外感を抱いてもいたのですが、小説を読んだときに『似たようなことを考えている人がたくさんいるんだ』というふうに感じて、励まされたんです。そこからですね、”読む毎日”が始まったのは」

 決して社交的ではなかった高校生が、小説に対してだけ心を開いた。幸い、時間は余るほどある。中村さんが「狂ったように小説ばかり読んでいた」と言う日々が始まった。
 太宰治、芥川龍之介、ドストエフスキー、カミュ、カフカ……。
 話題を共有する友人を必要としないほど、作品と1対1で対峙した。だが、学生だった中村さんには難解に感じる作品も中にはあったという。

「もちろん、ドストエフスキーの作品などは難しかったです。一回読んだだけで全てがわかるとは言えなかった。でも、自分を救ってくれるものがあるように感じたし、その作品世界への理解を深めたいという欲求も強かったですね。同じ作品を何度も何度も読み返しました。一回目より二回目、二回目より三回目というふうに、作品に対して『そういうことか』と理解できる部分が増えていくことが快感でした」

 同級生がテレビドラマの話題で盛り上がっていることもあっただろう。部活仲間同士の一体感を目にすることだってあっただろう。だが、中村さんの熱狂の対象は「小説」だった。たった一人で読み、たった一人で理解を深め、たった一人で世界を広げていった。目に見えた変化はなかったかもしれない。だが、小説を読み続けることで中村さんの精神は質的な変貌を遂げていた。

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中村文則

1977年愛知県生まれ。福島大学卒。2002年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。04年『遮光』で野間文芸新人賞、05年『土の中の子供』で芥川賞、10年『掏摸<スリ>』で大江健三郎賞を受賞。『掏摸<スリ>』は世界各国で翻訳され、アメリカ・アマゾンの月間ベスト10小説、アメリカの新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」で2012年の年間ベスト10小説に選ばれ、さらに13年、ロサンゼルス・タイムズ・ブック・プライズにもノミネートされるなど、国内外で話題をさらった。他の著書に『何もかも憂鬱な夜に』『悪と仮面のルール』など。 公式HP  http://www.nakamurafuminori.jp/

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