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おっさん画報

2018.04.04 更新

白麻のハンカチ菅野完

 厄年を超えたあたりから、気力と体力の乖離が著しくなった。とにかく朝が億劫なのである。頭は仕事に向いているのに体が動かない。数値をいえば恥ずかしいほどの低血圧ということもあるが、頭脳と肉体がそれぞれ別のタイミングで覚醒するため、若い頃なら10分で済ませていた朝の身支度が、1時間以上もかかるときがある。

「若い頃はこうではなかった」と毎朝落ち込んでいるわけにもいかない。動きにくくなった体、起動に時間のかかるようになった頭脳を少しでもいたわるため、自然と「身支度工数の軽減」を工夫するようになる。

 まずなにより「何を着るかを考える時間」を減らしたい。そこで真っ先に取り掛かったのがタンスの整理だ。若い頃のように着飾る必要もないし、この仕事をしているとなおさら過度なおしゃれは慎まなければならない。「清潔な服を着る」ことさえできれば事足りる。

 改めて自分の洋服ダンスをみてみると、紺のジャケットがシーズンごとに1着ずつ、スーツもネイビーとグレーのものがシーズンごとに2着ずつしかない。シャツなんて若い頃揃えたはずの色物柄物がほとんどなくなっている。白いものしかない。

 我ながらこの「簡素さ」に驚いた。色気がないのも甚だしい。いつからこうなったのか。

 たしかにもうオッサンであるから、これで十分ではある。ちゃらちゃらした服を着るのはかえって恥ずかしい。オーセンティックなものを清潔さを保って着ていればそれでいいのだ。しかも自分は物書き、どこぞの大学の前学長のように、公の場に出るからとて縞のジャケットを着るような身分でもない。目立たぬよう邪魔にならぬようそれでいて自己主張を失わないようにと、自分の身の程や分際を承知して、出過ぎた真似にならない程度を守っていればよいのだ。

 とはいえ、こうなったきっかけが思い出せない。それなりに金を出し、それなりに苦労して揃えた服をなぜあっさりと捨てることができたのか。朝の眠たい頭をひねりながらかつてのことを思い出そうとしてふと気づいた。きっかけはハンカチだ。

 以前は、「シャツの色を決めてからハンカチを選ぶ」なんてめんどくさいことをしていた。シャツと同系色だが柄のかぶらないハンカチ、ネクタイとシャツの色差にあうハンカチなどなどと、ハンカチごときで「何を選ぶか」を考えるために毎朝数分を費やしていた。いまから思えば愚かしいことである。

 しかし、4年前、とある出来事をきっかけに、きっぱりと色物柄物のハンカチを持つのをやめた。

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おっさん画報

 「婦人画報」「家庭画報」はあって、なんで「おっさん画報」はないねん! 「昭和のおっさん」を自認する物書き・菅野完が、暮らしにまつわるアレコレ、気になる文物を、徹頭徹尾おっさん目線で語り尽くす。

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菅野完

著述家。1974年、奈良県生まれ。一般企業のサラリーマンとして勤務するかたわら執筆活動を開始。退職後の2015年より主に政治分野の記事を雑誌やオンラインメディアに提供する活動を本格化させる。同年2月から扶桑社系webメディア「ハーバービジネスオンライン」にて連載「草の根保守の蠢動」をスタート。同連載をまとめた『日本会議の研究』(扶桑社新書)は16万部を超えるベストセラーとなり、「日本会議ブーム」を巻き起こす。他の著書に『保守の本分』(noiehoie名義、扶桑社新書)、『踊ってはいけない国、踊り続けるために』(共著、河出書房新社)、最新刊は『日本会議をめぐる四つの対話』(K&Kプレス)。

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