一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選んでレビュー。さらに“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作るコーナー。
今月のオススメはこちらです!
また、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長が新刊の中からセレクトする、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」もあわせてお楽しみください!
【元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリスト
アルパカ内田さんが今、売りたい本】
第55回 砂村かいり『飛距離の長い青春』
皆さん、こんにちは。飛距離よりもひとりが好きなアルパカ内田です。
本書は専門予備校で医学部受験を目指す男女三人の人間模様を描いた作品である。「こんなはずじゃなかった……」。まさかの受験失敗によって浪人生活が始まった。停滞ではなくエネルギー充電をすべき貴重な時間。それは将来に飛躍を遂げる人生の助走期間だったのだろうか? ともあれ同志でも、ライバルでもある「特別な」存在との運命の出会いは、挫折があったからこそ生まれたのだ。
嫉妬、懊悩、困惑、焦燥、絶望、諦念、覚悟……タイプの違う三者三様の感情が渦巻き、孤独な心に火を灯しながら溶け合っていく。生々しい吐息や胸の鼓動、さらに体温や空気感までもが伝わってくる。ありのままの十九歳の本音に迫った、圧倒的なリアリティに驚かされた。
目指していた「合格」は決してゴールではなく通過点だ。その先には予期せぬ修羅場が待っている。誰しもトラウマとなる呪縛があり、そこから逃れるための解放の願望もあるのだ。苦難の末に若者たちが選び取った道行きは、ぜひ本編で楽しんでいただきたい。
懐かしくて、切なくて、哀しくて、狂おしいほど愛おしい。名場面や名台詞も豊富で、アイコンとなる小道具も巧妙にちりばめられており、もどかしい青春の日々を完璧に閉じ込めている。とりわけ印象深いシーンは三人が集う約束の場所。まるで宝石のように美しく輝いた光景に、若かりし日を思い出して、胸を激しく締めつけられた。これぞ本物の感動を体感できる一生モノの一冊だ。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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