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クロスロード凡説

2026.04.15 公開 ポスト

亀の呪い辻皓平(ニッポンの社長)(お笑い芸人)

リクガメを飼っている。リクガメというのは本当に不思議な生き物だ。

 

そんなに詳しいわけじゃないし少し間違ってる情報もあるかもしれないけど、今回はリクガメという生き物について。

 

 

 

皆さんに馴染みが深い亀は主にミズガメと呼ばれる亀だと思う。

ミズガメは川や池にいて、水の中で餌を摂ったりする。ミミズとか虫を食べたりする。首を出して息継ぎをするが、水中でも長時間呼吸出来たりする。

特に昔はその辺で拾って家に持って帰る人もいたり、祭りで安く売ってたりした。

あとはウミガメ。こちらは名前の通り海にいる。沖縄に沢山いるのが有名だ。近くで泳いだ事があるが、こいつはかなり顔も可愛いらしい。

あとはハコガメとかヤマガメとかいう種類がいるのだが、僕が飼ってるリクガメは日本に野生の個体はいない。基本は暖かい国にいる。冬眠する個体もいるけど、基本は寒さに弱い種類が多い。

 

リクガメはほぼ泳げない。日本の気候では夏以外は寒すぎたり、湿度が足りなかったりするので、色々な器具を使っての温度管理と湿度管理も必須だ。ミズガメと違って多くの種類が草食で、凶暴性はあまりない。だから匂いも少なかったりする。だが偏食だったり、食べられるのに食べない、「手を出さない餌」が個体によってあったりする。

 

この「手を出さない餌」があるのが厄介で、栄養素が偏ったりする。人工飼料や野菜や野草を与えるのだが、食べない種類の餌があるから、食べる餌に、食べない餌にしか含まれていない栄養素をパウダーで補ったりする。

これは本当にわがままな子供にバレないように野菜を混ぜて食べさせるような感覚だ。お腹ペコペコにもかかわらず食べない餌は本当に食べない。餓死しちゃうくらい食べない。そしてこっちが根比べに負けて好きな餌を出す。

そしてこれは人間と共通なのかもしれないが、食べない餌ほど栄養価が高い。

非常に面倒な事である。

 

そしてこれは亀全般に共通する話だが、爬虫類なので人間に慣れる事はあるが、犬や猫のようにしっかり懐く事はない。

 

では何故そんな「手間がかかって懐かないペット」を選んだのか。

 

 

 

 

なんとここから30年以上も遡る。

 

 

 

 

僕は小学生の頃、亀が好きだった。忍者タートルズのゲームをやっていたのもあるが、猛烈に亀が飼いたかった。ある日おかんに言うと、『亀はあかん、呪われてんねん』

と言われた。

 

 

呪われてる?

 

 

話によると、おかんの弟、叔父が昔ミズガメを飼っていて、その亀が水槽から脱走した。どこに行ったか分からなくなった。その日に叔父はバイク事故に遭い、大怪我で死にかけた。翌日、亀はベッドの下で死んでいた。これは亀の呪いなんだ。と。

 

まぁ今聞くと良く分からないし、亀が身代わりになってくれた美談にしてもよいような気もするが、子供の頃の「呪い」という言葉は強烈で、僕は亀に対する想いを引っ込めるしかなかった。

 

時は経ち、3年前くらい。叔父と話す事があった。ふと亀の呪いの話をした。本人とこの話をするのは初めてだった。

 

すると叔父は笑いながら、

 

 

『ははは、そんなんあったかなぁ? ほんで亀今も飼ってるで』

と言った。

 

 

騙されたのかもしれない。

 

 

なんなら、そのバイク事故があったかも怪しい。

 

 

あったのはあったが、膝を擦りむいた程度なのかもしれない。

 

 

何故なら、僕はおかんには何回か騙されてきたのだ。

 

 

当時大人気のたまごっちを買ってきたと言われ、開けると「ぎゃおッPi」と書いてあったし、

 

 

ドラゴンボールのゲームが欲しいとサンタクロースにお願いしたら、ドラゴンボールの手のひらサイズのパチンコだった事がある。

 

 

『細かく言わへんかったからサンタさん間違えはったんかなー』

と言われた。

 

 

やられた。

 

 

よし、亀を飼おう。失われた時を取り戻すのだ。

 

 

そして僕はミズガメではなく、リクガメを選んだ。

 

 

 

 

かっこいいから。

 

 

 

 

日本にいないってのがまず、かっこいい。

 

 

そして、調べた。飼う前に色々なYouTubeを見て、どんな生き物なのかを。

 

 

するとかっこいいという印象は一変した。

 

 

リクガメは、

 

 

不思議だった。

 

 

すごく不思議な生き物だった。

 

 

調べていくうちに分かったのだが、

 

 

リクガメの一番の弱点は甲羅である。

 

 

え? 一番の長所じゃないの? と思った方、全然リクガメの事を分かってない。

確かに亀の甲羅は固いってイメージはあるし、実際に固い。マンガやゲームの亀のキャラクターは特徴として防御力が高かったりする。忍者タートルズなんかも甲羅で銃弾を弾いたりする。では何故、リクガメにとって甲羅は弱点なのか。

 

この甲羅のせいで、ひっくり返ると起き上がれなかったりするからだ。

 

 

正直、

 

 

アホすぎる。

 

 

何日も起き上がれないと当然餓死する事になる。

 

 

自分の身を守る為に付いてる物のせいで、死んでしまう。

 

 

 

 

アホだ。

 

 

 

 

あとひっくり返ると甲羅の重さに肺が圧迫されて死んだりもする。

 

 

 

 

アホすぎるって。

 

 

甲羅は確かに固いし、野生の天敵から身を守る事もあるだろうが、

 

 

ペットとして室内で飼う分にはもちろん天敵はいないし、

 

 

ペットとしての甲羅は、ビジュアルを除くとひっくり返って死ぬ可能性を作り出しているからウィークポイントでしかない。

 

 

そしておそらく本当に強い天敵からは甲羅では身を守れない。

 

 

そこまで物凄く固いわけではない。

 

 

あと、

 

 

ひっくり返ったらやばい、

 

 

命の危険、

 

 

のくせに、

 

 

ひっくり返るような事をする。

 

 

ちょっと高いとこ登ってすぐ落ちたり、

 

 

なんか壁を登ろうとして失敗したりする。

 

 

ひっくり返ったらやばいなんて、

 

何も分かっていない。

 

 

こいつはアホだ。なんかそう思い出してからはもう抜けられなくなった。

 

 

そして意外と身体も弱い。

 

 

亀って丈夫なイメージはあったが、

 

 

まぁまぁ体調が良くなさそうな日がある。

 

 

心配だ。

 

 

何回か入院とかさせている。

 

 

大変だ。

 

 

出費も大きい。

 

 

 

 

でも、本当に飼ってよかった。

 

 

 

 

リクガメはハマると抜けられない。

 

 

もう一生抜けられないだろう。

 

 

これも亀の呪いか。

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クロスロード凡説

「ネタにはしてこなかった。でも、なぜか心に引っかかっていた。」
そんな出来事を、リアルとフィクションの間で、書き起こす。

始まりはリアル、着地はフィクションの新感覚エッセイ。
“日常のひっかかり”から、縦横無尽にフィクションがクロスしていく。

「コント」や「漫才」では収まらない深掘りと、妄想・言い訳・勝手な解釈が加わった「凡」説は、二転三転の末、伝説のストーリーへ……!?

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辻皓平(ニッポンの社長) お笑い芸人

1986年、京都府生まれ。

お笑いコンビ「ニッポンの社長」として、コントと漫才の“二刀流”で独自の笑いを追求。
漫才&コント二刀流No.1決定戦「ダブルインパクト」初代王者。
コント日本一を決める「キングオブコント」では、2020年から5年連続で決勝進出を果たす。

本コラムでは、日常の出来事に自由な解釈や言い訳、妄想を重ねながら、舞台とはまた違った角度で物語を綴る。
コントと漫才、どちらのネタも手がける著者が、言葉を操る“三刀流”として、文章の世界に挑む。

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