清水ミチコさんの「朝日新聞」連載エッセイ「まぁいいさ」(金曜日夕刊・月1回)をまとめた文庫本『時をかける情緒 まぁいいさ』が発売になりました。平成から令和へ、自由自在にかけめぐる清水さんの情緒の味わいを、少しだけお裾分けします。

泣いた赤鬼に泣かされて
小学生の頃からの友人が入院しました。会いに行っても、本人は話すことができなかったのですが、嬉しそうな顔や涙ぐんだりの表情に、私もぐっときてしまいました。寝てるばかりで退屈そうですが、その状態こそ努力してることになるとのこと。帰宅して元気な頃の彼とのLINEを読み返してたら、童話『泣いた赤鬼』(浜田広介・作)の人形劇を一緒にしたね、という思い出話が。今度お見舞いに行ったら読み聞かせでもしてやるか、と一冊買い、ついでに読み返してみたら本当にいいお話でした。こんなことでもなければ読み返せなかったと思います。読者の皆さんにもあらすじをおすそわけしましょう。
気持ちの優しい赤鬼が村に住んでいました。なのに村の住人たちからはとても恐れられています。ある日、友達の青鬼が赤鬼にこんな風に言います。
俺がわざと悪さをしてやるから、皆の前でおまえが俺をこらしめたらどうだ。きっと村人はおまえを見直すよ――。
赤鬼は言われた通りにしてみると、村人たちは赤鬼をすっかり信頼し、皆で仲良く楽しく暮らしました。ある日のこと赤鬼は、青鬼としばらく会ってないことにふと気がつきます。青鬼の家に行ってみると、そこには貼り紙があり、僕なんかと仲良くすると、村人たちにまた疑われるから、僕が村を出ていくよ――。
そんな意味の言葉が書かれていて、赤鬼はその貼り紙を何回も読み返し、突然大声で泣きだしました。という泣ける物語。
ラストで赤鬼が何度も読み返してる姿は、どんだけ後悔してることだろうと今でも胸にきます。真の友情と、その自己犠牲に感動させられるお話ですが、大人になって読み返してみると、自分が幸せになったらすっかり恩を忘れてた、大事なことをほっぽらかしにしてたというところに、なんだか自分と赤鬼が重なります。また、派手なニュースで人々の心は豹変しがちというところも昔からきっと変わらないのだろうなあと思ったりしました。赤鬼は村人たちと仲良くは暮らせても、あの青鬼のような尊い親友ができたでしょうか。そう思うと、鬼の目にも涙で、お世話になってきた人やまわりの人に、ちゃんと感謝を忘れないようにしよう、と決心するのでした。お見舞いで性格が治ったという現代話でした。
時をかける情緒 まぁいいさ

カンジ悪さが褒められた「ドクターX」出演、黒柳徹子さんにおフルの洋服をプレゼント、詐欺かと疑った伊丹十三賞受賞の電話、武道館ライブで達成感が得られない謎、卒業証書チラ見せ伊藤市長からの学び、60代で初婚の親友の結婚式、人生の残り時間を計算して思うこと……。平成から令和へ、自由自在に軽やかにかけめぐる情緒の味わい。











