夫婦カウンセリングを訪れるカップルが急増しています。コロナ禍のステイホームやリモートワークの普及により、パートナーへの不満から目を逸らしにくくなってきたことも要因のひとつだと『夫婦はなぜ壊れるのか』の著者は言います。病気の妻にから揚げが食べたいと言ってしまう夫から、実家に尽くし過ぎる妻まで。夫も妻も、なぜみすみす関係を悪化させるような言動をとってしまうのか。その背景を本書から抜粋して紹介していきます。別居や離婚を考えながらも揺れている方はもちろん、家庭内が以前に比べてギスギスしていると悩んでいる方まで、関係改善のヒントが得られる1冊です。前編はこちらです。
(本文中の事例はすべて仮名であり、事実を元にしたフィクションです)
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妻への依存度がとにかく高い理由
隆之さんは、両親と兄の4人家族。父は時に不合理な怒りをぶつけて来る事があり、子どもの頃から拒否感情を抱いていたとのこと。母親は愛情を注いでくれたとは思うけれど、やや過干渉な所があり、自分に関心が向いていたのは両親の夫婦仲が悪かったせいだと思っている、と言います。その為、母親とも心理的距離を置いており、綾美さんと出会うまでは、孤独感も強かったけれど、一生結婚はしないだろうと思っていたそうです。
心理テストでは、両親とは心理的に距離を置いている事と、綾美さんへの甘えと依存が強い結果が出ました。また、綾美さんの事を「なんでも出来る完璧な人」と感じている事も分かりました。対人関係は得意ではなく、孤立しがちでもあり、それが綾美さんへの依存心を強めていると言えます。
二人の心理テスト結果を夫婦カウンセリングの場で伝え、
「綾美さんが、尽くし過ぎてしまったのかもしれませんね」
と私は説明しました。
「夫はいなくなることはないだろうって思ってはいるんですけど、やっぱりどこかで『嫌われたくない』と思っている所はあって。でも、むしろ夫に対しては、『喜んでくれるならやってあげよう』と思っていたように思います」
綾美さんは続けます。
「ちゃんと私が『出来ない』って言えば良かったんですよね。こんな風に不満を募らせて、カウンセリングに連れて来るくらいなら」
と今度は自分を責め始めました。すると隆之さんは、
「いや、僕が甘え過ぎてたんだと思う。今までも『具合悪い』とか『ちょっと熱っぽい』と言ってる時でも、ちゃんとご飯は作ってくれていたし、寝ている時に僕が『何か作ろうか』って言っても『私がやるから』って起きて来てくれたから……。どのくらい具合が悪いのか、考えなくなってたと思う。綾美はいつも優しいし、僕の食べたいものを優先してくれているからそれが当たり前になっちゃっていて……。ごめん」
と自然に謝ってくれました。隆之さんは、綾美さんの生い立ちはしっかり聞いていたので、抱えているものの大きさは理解しているつもりだったけれど、自分に対しても不安を抱いている事には気づけなかった、と言いました。
「これからは、気をつけるようにします」
隆之さんがそう言い、綾美さんも
「私も、本当に動けない時はちゃんと伝えます。手伝って欲しい事、やって欲しい事は伝えるようにします」
と自ら言ってくれました。もともと仲が良い夫婦です。カウンセリングは終了とし、その後も連絡は来ていません。
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夫婦はなぜ壊れるのか

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