今年度のクマによる死者数は全国で13人。統計を取り始めて以来、過去最多の被害数となった。
いきものの解説が人気のYouTubeちゃんねる「へんないきものチャンネル」の“中の人”、ろうさんの新刊『知れば知るほどへんすぎるいきもの事典』から、興味深いいきものの豆知識をピックアップしてお届けする本企画。
今回は牛を大量に襲った事件で有名なクマ「OSO18」のお話。
なぜ最近、こんなにもクマの被害が増えているのか。未来のためにどうすべきなのか。一緒に考えてみましょう。
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牛66頭を襲ったヒグマ“OSO18”
北海道で合計66頭もの牛を襲った「OSO18」というクマを知っているかな? すぐ捕まるかと思いきや、なかなか捕まらず、約5年に渡って被害をもたらしたんだ……!
ツキノワグマは木の実中心の植物食の傾向が強いが、北海道のヒグマはサケやシカなどの肉を食べる傾向が強い。
ではなぜここまで牛を襲い続けたのか?
解剖して調べたところ、栄養状態がとても悪く、体調を崩していた事が分かったんだ。
OSO18はクマ同士の戦いに負けてエサにありつけず、飢えた末に牧場の牛を襲ったようだね。
近年、人がクマに襲われるケースも増加している。
でも、クマは本来臆病で、あちらから人間に近づいてくることはほぼないはずなんだ。
さらに嗅覚が優れているから、人間の匂いに気がつくと逃げていく。
ただ、視力は人間以下なので、人間の存在に気づかずに茂みから出てきた所でバッタリ出くわして、パニックになったクマがとっさに人に手を出すことがあった。
だから、鈴を持って、近くにいることをクマに知らせることが大切だったんだ。
でも、その常識は変わりつつあって……。
日本各地には、人の多い市街地と、クマの住む森の間に里山のような集落が存在していたんだけど、時代が進み過疎化が進んで、里山は失われ、市街地と森が繋がってしまったんだ。
小さい頃から人が多い市街地を見てきたクマたちは、次第に人間を警戒しなくなる。堂々と人のいる場所に現れて庭先の柿を食べたり家に忍び込んだりする、いわゆる「アーバンベア」と呼ばれる個体が現れ始めてしまった。
クマとの共存を考える上で、アーバンベアはとても難しい存在だ。人間を襲ったクマは、被害を拡大する前に駆除する必要があるけれど、クマの駆除を続けていけば絶滅するおそれもあるからね。共存の道を探していくには、人間の努力も必要なんだ。
知れば知るほどへんすぎるいきもの事典

へんないきもののネタを50集めた児童書『知れば知るほどへんすぎるいきもの事典』の試し読み記事です。
たとえば……
・牛66頭を襲ったヒグマは、実は、熊同士の闘いに負けていた〈OSO18〉
・プロボクサーより早いパンチを繰り出す海の生きもの〈モンハナシャコ〉
・噛まれたら10分で死んでしまう殺人グモ!? 〈シドニージョウゴグモ〉
・体が大きいのに泳ぐスピードも速い人食い魚〈ムベンガ〉
・世界で唯一、血液を食べものにする鳥〈フィンチ〉
・人間の貴重品をあえて狙う泥棒ザル〈カニクイザル〉
などなど……面白いいきものの生態がたくさん! 子どもと一緒に大人も楽しめます!











