
「センスのいい人」=「気づきが多い人」。
教育やコミュニケーションを研究し『全力!脱力タイムズ』の解説員としてもおなじみの齋藤孝さんが、人生と仕事を劇的に変える「気づき」のメカニズムと習慣のコツを解説する幻冬舎新書『「気づき」の快感』より、一部を抜粋してお届けします。
人を褒めることは「気づき」の基本
ネット上にはネガティブな言葉があふれています。ネガティブな言葉への耐性をつけてメンタルを強くするのも一つの方法です。
でも、ネガティブな言葉をひたすら聞けばメンタルが強くなるかというと、そうとも言い切れません。むしろポジティブな言葉によって経験値を高めたほうが、メンタルが鍛えられると思うのです。
そこで取り組んでいただきたいのが、チーム内でお互いに褒め合うことです。
褒め言葉をかけるとき、実は褒められた側だけでなく、褒めた側も気づきを得ています。
なぜなら、相手にポジティブな意見を伝えようとすると、自然と「今以上にもっとよくするにはどうすればいいか」という思考が働くからです。
「○○さんのプレゼンは丁寧な話し方で聞きやすかったです。しかも、図とか写真とかビジュアル要素があるとわかりやすくなるんだと感じました」
このように発言している時点で、「ビジュアル要素があったほうがいい」というのが自分の中での気づきになっているわけです。発言した人は、次に自分が資料を作るときには、図や写真を入れてわかりやすくなるように工夫をするはずです。
つまり、他人を褒めて意見を伝える行為は、自分の気づきと直結しているし、相手と自分をともにプラスの方向へと押し出しているのです。
変化に注目すれば、自然に褒められる
「みんなが褒め合うなんて、なんだか気持ち悪い」
そう思われるかもしれませんが、実際にやってみると、結構気分がよいものです。多少わざとらしくても、どうせ褒められるとわかっていても、褒められるとやっぱり嬉しいのが人間の心情です。
私も、常に誰かを褒めることを意識しています。
テレビの情報番組に出演すると、アナウンサーがその日のお天気を解説する姿を目にします。キー局ではカンペを見ながら話す方が多いのですが、ある地方局には、カンペも何も見ないまま、スラスラと天気の解説をするアナウンサーがいます。
他人が書いた原稿を読まずに、自分の言葉で話すので、一つも言い間違いがありません。私は、いつもその仕上がりに感動し、本心からの褒め言葉を口にしています。
「いやー、よどみないですね。実に素晴らしい。自分の言葉で話しているから、耳に入りやすくて心地いいですね」
褒め言葉をかけると、相手は喜び、人間関係がよくなります。私自身も「こんな話し方をしたいな」と心を新たにします。褒める行為の効果は絶大です。
なお、褒めるのが苦手、どこを褒めていいのかわからないという人は、相手の変化に着目してみましょう。例えば、同僚のプレゼンについて次のように褒めてみます。
「最初の頃から上手に話していたと思うけど、説明が手短に整理されていて、さらによくなったね」
「無駄な言葉が減っていて聞き取りやすいね」
「大事なことから話してくれるので頭に入りやすいです」
変化のポイントを具体的に挙げると、褒め言葉に信ぴょう性が生まれるのです。
* * *
この続きは幻冬舎新書『「気づき」の快感』でお楽しみください。