1. Home
  2. 暮らし術
  3. 「気づき」の快感
  4. 脱力タイムズ解説員がディレクターから無茶...

「気づき」の快感

2025.06.13 公開 ポスト

脱力タイムズ解説員がディレクターから無茶振り!「歌って」で生まれた当事者意識齋藤孝

「センスのいい人」=「気づきが多い人」。
教育やコミュニケーションを研究し『全力!脱力タイムズ』の解説員としてもおなじみの齋藤孝さんが、人生と仕事を劇的に変える「気づき」のメカニズムと習慣のコツを解説する幻冬舎新書『「気づき」の快感』より、一部を抜粋してお届けします。

聴き流していた音楽が“自分ごと”になった日

テレビで音楽番組を見ているとき、多くの人は「ふーん、素敵な曲だな」「テンポがよくてテンションが上がるな」などと、流れてくる音楽をぼんやり聴いています。全部聴き終わったあとで、「じゃあ、今聴いた歌を歌ってみてください」といわれたら、困ってしまうはずです。

一方、あらかじめ「今からある曲が流れるので、それを聴いて再現してください」という指示を受けていれば、歌うことを想定して真剣に聴き取ろうとするはずです。

私は『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)というバラエティ番組に、「全力解説員」という役割で出演しています。あるとき、同番組のディレクターから「DISH//の『猫』という曲を歌ってください」との依頼を受けました。

『猫』は当時流行っていた曲であり、すでに何度も聴いていました。自分の中ではすっかりなじみ深い曲だったので、「まあ歌えるかな」と思いました。

ところが、自宅で試してみたところ、歌えたのはサビの部分だけ。何度も聴いていたはずの前半のパートをまったく歌えないことが判明したのです。

 

私は特別歌がうまいわけでも、プロレベルの音感の持ち主でもありません。ただ、全国放送の番組で、「歌えませんでした」では済まされません。そこから何度も曲を聴き直し、必死で覚えて本番に臨みました。

そのとき「『猫』というのはこういう歌だったんだな」と、初めて知ったような感覚がありました。今まで何度も聴いていたのに、私は『猫』という歌をほとんど知りませんでした。テレビで歌う必要に迫られたとたんに、歌の細部の工夫に気づき、本当の意味で、その歌を知ることになりました。人前で歌うかどうかで、歌の理解度には天と地ほどの差が生じるのです。

「自分がやるならどうするか?」で世界が変わる

気づきを得られるかどうかは、能力の問題というより、スイッチを入れているかどうかで決まります。常にスイッチを入れている人は、どんな漫画を読んでもテレビドラマを見ても、何かに気づくことができるのです。

私がきょうべんる明治大学の近くには、いつも行列ができているうどん屋さんがあります。教え子の多くも、そのうどん屋さんに通い詰めています。

漠然とうどんを食べている学生にとっては「いつも混んでいるな」という感覚でしょうが、その学生がうどん屋さんを経営することになれば、とたんにスイッチが入り、行列の理由を知ろうとする意識が芽生えるはずです。

私が学生の一人に「どうして、あのうどん屋さんは人気なの?」と聞くと、次のような答えが返ってきました。

「周りのお店と比べて値段設定も手ごろですし、トッピングが自由に選べるのも人気の理由だと思います。確かに行列はできていますが、回転が早いので、実際には待ち時間が少ないというのも支持されているポイントだと思います」

いい気づきのアンテナが立っているなと感心しました。

 

何ごとも、傍観者から当事者へと意識をずらせば、気づきが起きやすくなります。

「自分がこれをやるとしたら、何をどう改善するか」など、常に自分ごととして考えることが重要なのです。

*   *   *

この続きは幻冬舎新書『「気づき」の快感』でお楽しみください。

関連書籍

齋藤孝『「気づき」の快感』

「あなたは気づきが多いほうか?」と聞かれて「多いほう」と言える人は、この本を読む必要はない。なぜなら次々と「気づき」が訪れるときの”快感”を知っているはずだからだ。一方で「少ないほう」という人は、本書を読むと、とんでもない「気づき」が得られるだろう。そもそも「気づき」とは周りの状況に対して、新たな理解や洞察を得てハッとすること。歴史上の偉大な発明や発見も小さな気づきから生まれたものである。そこで本書ではどうすれば「気づきの多い人」になれるのかを解説。気づきが多くなると仕事で結果が出るだけでなく、人生も楽しくなる!

{ この記事をシェアする }

「気づき」の快感

「センスのいい人」=「気づきが多い人」。
教育やコミュニケーションを研究し『全力!脱力タイムズ』の解説員としてもおなじみの齋藤孝さんが、人生と仕事を劇的に変える「気づき」のメカニズムと習慣のコツを解説する幻冬舎新書『「気づき」の快感』より、一部を抜粋してお届けします。

バックナンバー

齋藤孝

1960年、静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。『身体感覚を取り戻す』で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。『15分あれば喫茶店に入りなさい』『イライラしない本』など著書多数。累計発行部数は1000万部超。

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP