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不毛な時間をゼロにする

2025.06.02 公開 ポスト

休むことに罪悪感を覚える人に知ってほしい「意図を持ってダラダラする」ことの“大きなメリット”佐藤悠希(株式会社アナザーヒストリー代表取締役、株式会社エンカレッジ・イノベーション代表取締役)

猛烈に仕事をして頑張っている。休んだりダラダラしたりすることには罪悪感がある――。本人にやりがいや使命感があったとしても、努力を続けすぎると燃え尽き症候群になるリスクがあります。それは「不毛」以外の何物でもありません。

「アドラー心理学ベースの問いかけ」により、のべ3万人以上の「ムダな行動」を改善してきた佐藤悠希さんの著書『不毛な時間をゼロにする』(サンマーク出版)が出版されました。何も生み出さなかった「不毛な時間」が再び動き始め、「建設的な時間」が流れていく感覚をもたらしてくれる一冊。本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

先日、ある外資系企業で研修を担当しました。

〝外資系〟というと能力主義、歩合制、超激務、などの印象を持たれている方も多いと思います。その企業も噂にたがわぬ激務ぶりで、研修への参加者は皆さん非常に忙しく、頭も体もフル回転していました。

けれどわたしは彼らを見て、そのままのペースで仕事を続けていると数年でバーンアウト(燃え尽き症候群)してしまう危険性を感じました。

アメリカのミシガン州立大学やドイツの研究では「オフタイムがきちんと確保されていない状態(仕事・情報刺激が常にある状態)が続くと、慢性的なストレス反応が高まりバーンアウトを招く」という報告があります。

さまざまな研究から「オンになっていれば成果が上がる」というのは誤解で、むしろ「意識的にオフを挟むほうがパフォーマンスを保ちやすい」ということがわかっています。

頑張り続けるほどパフォーマンスが落ちるのは「不毛」

頑張り続けるほど、努力し続けるほど、実際にはパフォーマンスが落ちていくなんて……「不毛」以外の何物でもありません。

研修に参加している方々は、皆さん献身的に一生懸命働いていらっしゃいました。

ですから、その献身的な努力を、なんとか生産的に変えられないかと考えました。

そこで急遽、研修内容を大幅に変更して、「頭のなかをオフにするアイデア」をみんなで対話し、アイデアを出してもらうことにしました。

24時間働いても大丈夫、と宣言しそうなバイタリティにあふれた方々ばかりでしたので、最初は難しそうにされていましたが、段々と、

「観葉植物をじっと眺めてみる」

「アロマを嗅ぎながらゆっくり呼吸する」

「マッサージチェアを5分くらい利用する」

など小さな工夫が出てきました。

このように、わずか数分でもいいのです。それを1日1回できるようになったら、翌週は1日2回くらい「完全オフ」を仕事中に取り入れてみる。

余計な情報や仕事をいったん手放すと、心に余白が生まれ、かえって仕事のクオリティが高まるのです。

研修後、数日してから、

「翌日から早速やってみたら、午後の集中力が上がりました!」

「いつも、タスク管理やコーヒーで『オン』にすることばかり意識していました。でも逆に、脳を『完全オフ』にする時間が必要だったと気付けました」

など、嬉しい感想をいただきました。

日本でいちばんダラダラ過ごす日

多くの人が「休むのはサボってるようで居心地が悪い」「ダラダラしていると罪悪感がある」と思ってしまいがちです。特にビジネスパーソンは、やたらと効率化・生産性向上が叫ばれるなかで「休む暇があるなら、何かしよう」と、常にオンモードで動いています。

しかし、最近の研究では「意図的に仕事を切り離して余暇を過ごす人ほど、翌日の疲労回復や生産性が高まる」と示されています(Fritz, Yankelevich, Zarubin, & Barger 2010)。体だけを休めても、頭のなかがずっと仕事や家のこと、スマホの通知で満たされていれば、脳はリラックスできません。

ですから、努力や献身の時間を「建設的」に変えるためにも、「意図的にダラダラする」ことが重要なのです。

では、どのように休めばいいのか。漫然と過ごすのも悪くはないですが、できれば、意図を持ってダラダラするのがおすすめです

「今日は誰とも会わず家でゴロゴロする」

「10時~12時は趣味タイム」

など、目的や手段をはっきりさせたほうが「無意味な罪悪感」に苛まれず、しっかり休めるのです。

わたし自身も「休む=怠けてる」という強い抵抗感がありました。しかし、家族に、

「今日は、日本一ダラダラします」

と宣言すると、自分に許可が下りた気持ちになり、スッキリと休むことができるようになりました。

頭のなかに居座る「仕事」は「料理」で追い出せ

そうは言っても、ダラダラするのは気が引ける、という人もいるでしょう。

そういう「オフにできない人」は、仕事とはまったく関係のないことで「代用オン」にすることもおすすめです。

私の知人に「仕事が忙しいときほど、おかずを作る」女性がいます。

彼女も「オフモード」にするのが苦手なタイプ。だから、頭のなかが仕事のタスクや悩みごとでパンパンにあふれたときは、頭を完全オフにする代わりに、あえて料理のことを考えて「代用オン」にするのだそうです。

「まずはお肉に下味をつけておいて、その間にサラダ用の野菜を洗いつつ、お湯を沸かして味噌汁を作る準備をして……」と料理中は大忙しですから、仕事のことなんて一瞬も考える暇がありません。

そうして20~30分も料理をすると、思考が大渋滞してクラクションがブーブー鳴り響いていた頭のなかが、スーッと静かになっているのだとか。ご飯もできて、仕事も忘れられるなんて、一石二鳥というわけです。

もちろん料理でなくても構いません。ストレッチして体を動かしてみたり、家庭菜園をしてみたり、自分ひとりで集中できそうなことが思い浮かぶはずです。

うまく「オフにできない人」は、こうやって「代用オン時間」をつくるのもよいでしょう。

佐藤 悠希『不毛な時間をゼロにする』

「時間が溶ける人」のための救済の書。何も生まない「不毛な時間」をたちまち「生産的な時間」に変える超実践的アプローチ!

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不毛な時間をゼロにする

2025年5月23日発売『不毛な時間をゼロにする』(サンマ―ク出版)試し読み

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佐藤悠希 株式会社アナザーヒストリー代表取締役、株式会社エンカレッジ・イノベーション代表取締役

1977年生まれ。広告営業として、株式会社リクルートに入社。効率化を考え抜いた独自の営業スタイルで、早くも1年目から2年連続でMVP獲得。しかしマネージャー職になると、その激しい手腕が逆効果となりチーム業績は低迷し、離職者が続く。育児の大変さも伴い、家族との関係も崩壊寸前に。そんな人生のどん底でアドラー心理学とコーチングに出会い、自分のチームで「メンバーに問いかけ、勇気づける」を実践したところ、状況が一変。半年後には過去最高の売上と利益を達成。同時に、子育てをはじめ家族との関係も激変したことから「この思考法とメソッドを、もっと多くの人に伝えたい」と2014年に独立。以降、アドラー心理学をベースにした組織開発、人材育成でのべ3万人以上を研修でコーチング。クライアントはメガバンク、電気・電力会社、大手食品企業といった東証プライム上場企業から、成長中の中小企業、行政まで多岐にわたる。従業員全員の意識が変わるだけでなく、チーム業績もアップさせ、「30年間で最高の研修」と称賛されることも。

 

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