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先祖を千年、遡る

2023.05.11 公開 ツイート

「鈴木」「高橋」「田中」の出自は? 名字は過去をたどる時間旅行の始まり 丸山学

(写真:iStock.com/Yuzu2020)

自分の先祖はどんな人物だったのか――? 日本人の90%が江戸時代、農民だったとされますが、さらに平安時代まで千年遡ると、半数は藤原鎌足にルーツがあるといいます。名字、戸籍、墓、家紋からたどることのできる先祖。『先祖を千年、遡る』(丸山学著)より、自分自身の謎を解く醍醐味とその具体的手法を伝授します。

天皇家から出た名字、藤原氏から出た名字

日本人の家のルーツを千年以上遡ると藤原氏や天皇家から出た源・平につながる家が圧倒的に多いと考えられるのは先に述べた通りです。

もちろん、その他にも古代からの姓はあるのですが、ここでは多数を占める藤原・源・平から変遷して生まれた主な名字を眺めてみたいと思います。

・藤原姓から生まれた主な名字(祖先は藤原鎌足)
佐藤 高橋 田中 伊藤 山本 中村 加藤 吉田 松本 木村 林 清水 池田 橋本 山下 中島 前田 小川 藤田 後藤 長谷川 石井 近藤 坂本  遠藤 青木 藤井 西村 福田 太田 藤原 岡本 松田 中川 中野

・源姓から生まれた主な名字(祖先は天皇家)
鈴木 高橋 田中 渡辺 山本 中村 吉田 山田 佐々木 山口 松本 斉藤 井上 木村 林 清水 山崎 池田 橋本 山下 森 石川 中島 小川 藤田 岡田 村上 坂本 青木 藤井 西村 福田 太田 岡本 松田 中川 中野 

・平姓から生まれた主な名字(祖先は天皇家)
田中 中村 小林 吉田 山田 山口 松本 林 清水 橋本 森 前田 藤田 岡田 石井 遠藤 福田 三浦 岡本 中川

・藤原/源/平以外の出自を持つ主な名字
鈴木……源氏から出た鈴木氏よりも、熊野権現新宮で代々神職を務めた社家の鈴木氏の方が著名。古伝によると熊野権現が龍に乗って降臨した際に出迎えた三兄弟のうち稲を献上した三男が穂積(ほづみ)姓を賜った。穂積とは稲穂のことであり、熊野地方ではススキと呼んだことから鈴木氏を名乗ることになっていったといわれる。熊野信仰の広がりにより、この鈴木氏が全国に広がっていった。

高橋……神と人を結ぶ高い柱のことを「高橋」ともいい、神社・神官との縁も深い名字。藤原氏でも源氏でもない物部氏の中で高橋神社がある高橋邑を本拠とした一族が高橋氏を名乗るようになった。

田中……藤原氏・源氏・平氏の発祥よりも古い古墳時代・飛鳥時代から活躍していた蘇我氏からも田中氏を名乗る流れが古事記で確認できる。

山田……漢帝国からの渡来民にも山田氏を称した一族がある。

前田……加賀百万石の藩主・前田家の祖先は菅原道真で有名な菅原氏であるという説もある。

名字のルーツは土地にある

実は現在、日本の名字は30万種類もあるといわれています。これは世界に類を見ない豊富さです。

先に挙げた名字はその中のほんの一部です。

しかし、日本でより多く使われている名字を中心に挙げましたので、読者の方でも自分の名字があったという方も多いでしょう。

ところで、よく見ていくと「あれ、『高橋』は藤原姓から生まれた名字に入っているけれど源姓から生まれた名字にも入っている。さらに、物部氏から生まれた高橋もあると書かれている……。いったいどれが高橋の本当の出自なの?」と、疑問を持たれるかもしれません。

その他にも「藤原」「源」「平」の全てに関わる名字が多くあることに気付くと思われますが、これは誤植ではありません。

ここが日本の名字の複雑なところなのですが、大本の出自は異なっていても、その後、中世の頃にたまたま同じ地名のところに居住していたがために結果、同じ名字になってしまっている、ということが多々あるのです。

先の「高橋」を例にして見てみましょう。

大本の出自が宇多源氏(宇多天皇の末裔で皇室を出て民間に下り、宇多天皇から源の姓を賜った一族)の末裔の中で源頼方・秀宗兄弟が中世の頃に三み河かわの国くに加茂郡高橋(現・愛知県豊田市高橋町)という地を領したために「高橋」を名字として名乗るようになりました。

ですから、この系統の高橋さんはルーツを遡れば源姓であり宇多天皇に行き着きます。

一方、藤原鎌足の末裔で藤原維頼は遠江国城飼郡高橋郷(現・静岡県菊川市高橋)という地を領したために、やはり「高橋」を名字として名乗るようになりました。この系統の高橋さんは同じ名字ではありますが、ルーツは源姓や宇多天皇ではなく藤原氏、藤原鎌足に行き着きます。

つまり現在、同じ「高橋」を名乗っているとしても、それはたまたま別の土地に別々に存在していた「高橋」という名の土地にそれぞれの祖先が本拠地を置いたという偶然にすぎず、出自は何ら関係がないのです。

先に挙げたのは代表的な古代の姓である「藤原」「源」「平」だけですが、この他にも「橘(たちばな)」「菅原(すがわら)」など古代の姓は存在しています。橘姓からも高橋の名字は生まれています。

実にややこしいですね。

しかし、こうして「自分の名字は三浦なので、千年前のルーツは『平氏』かな」などと想像するだけでも日本史が少し身近に感じられてきますし、モヤモヤっとでも遠い祖先に想いを馳せることができるようになります。テレビや小説で源平合戦の場面に出くわしたら、自然と平氏軍に感情移入してしまいそうです。

そのようにモヤモヤっとでも祖先を感じることが、千年という膨大な「時間旅行」の出発点になるのです。

*   *   *

※続きは、幻冬舎新書『先祖を千年、遡る』をご覧ください。

 

関連書籍

丸山学『先祖を千年、遡る 名字・戸籍・墓・家紋でわかるあなたのルーツ』

自分の先祖はどんな人物だったのか――? 日本人の90%が江戸時代、農民だったとされるが、さらに平安時代まで千年遡ると、半数は藤原鎌足にルーツがあるという。今は庶民でも、かつては名家で、歴史的な事件の渦中にいたかもしれない。先祖探しのコツは、二方向から。まず名字・家紋からおおよその系譜にあたりをつけ、同時に、古い戸籍や墓石の情報から、寺や郷土の記録をたどるのだ。最終目標は、千年前の自家の名字を明らかにすること。先祖探しのプロが、自分自身の謎を解く醍醐味とその具体的手法を伝授する。

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先祖を千年、遡る

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丸山学

1967年埼玉県生まれ。行政書士。家系図作成を専門業務として取り組む。現在は、年間80件以上の先祖探しを受託するほか、自分の先祖を900年分たどるなどしている。主な著書に『「家系図」を作って先祖を1000年たどる技術』(同文舘出版)、『ご先祖様、ただいま捜索中!』(中公新書ラクレ)などがある。

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