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枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか?高齢者恋愛トラブル相談室

2022.01.10 更新 ツイート

セクハラ、痴漢、ストーカー…老人の性的トラブルは「アルツハイマー」が原因? 西本邦男

「人生100年時代」を迎えている今、「生涯現役」を目指すシニアが増えています。しかし、「生涯現役」なのは仕事だけではないようです。恋愛も、結婚も、セックスも、死ぬまで現役でありたい……そう望むシニアが増えた結果、シニアの恋愛トラブルもまた増えているそうです。弁護士で民事解決のエキスパートである西本邦男さんの著書『枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか?』より、実際にあったトラブルと、その解決法をご紹介します。

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【質問】突出する認知症ケース

ここまで見てきたように、高齢者の恋愛トラブルというのは、さまざまなケースがありますが、その中では、「認知症になった人の問題」がひときわ突出していますね。それは、なぜでしょうか。

(写真:iStock.com/designer491)

【基本的な状況】「性的脱抑制行為」

多くの方は、「認知症になった」というと、知能や記憶など、ほとんどの分野においていわゆる「認知症」の症状が出るのだろう、従来の機能が失われていくのだろう、と思われるのではないでしょうか。

でも、現実はそうではありません。

実は、認知症になったからといって性欲が失われるとは限らなくて、逆にますます亢進するという人もいます。これを、専門的なことばでいうと「性的脱抑制行為」、つまりこれまで性的行為を抑制していたものが脱落する、抑制しなくなる、ということがあります。

 

これは、認知症による行動面の症状のひとつです。この「性的脱抑制行為」によって、今回取り上げているような「性的問題行動」事件が起きているのです。これがいまの高齢者をめぐる現実であり、事実です。

私たちは、ここを状況認識、問題認識の第一歩としなければなりません。

【もう少し詳しくみてみましょう】アルツハイマー型認知症

ご存知のように、認知症は、高齢者に病的な慢性の知能低下をもたらし、いわゆる「ボケ」「物忘れ」、「徘徊」などの行動が特徴的に現われます。

「認知症」にも幾つかのタイプがあり、日本では以前は脳血管性認知症が最も多いといわれていましたが、本書の「はじめに」でも触れたように、最近はアルツハイマー型認知症が増加しているとされています。

 

アルツハイマー型認知症というのは、シンプルにいえば「脳が萎縮していく」病気ですが、脳が全体に萎縮することによってさまざまな機能が失われていく中、性的な感覚を司る部分だけは残存し、結果としてその性的な分野だけが部分的に突出する、ということがあるといわれています。

認知症の人が、老人施設や介護の現場で「性的問題行動」を起こすといわれていることの原因は、そういうことにあるのでしょう。

元気な頃は人格者といわれ、女性への興味などほとんど見せなかった男性が、高齢になり、認知症、それもアルツハイマーになったとたん、痴漢をしたりする、といった話がありますが、この原因も、このアルツハイマー独特の症状なのでしょう。

(写真:iStock.com/Pornpak Khunatorn)

【状況の捉え方】「短期記憶障害」

アルツハイマー型認知症の人に見られる性的問題行動。発症するまでは他の多くの機能も十全に働いていますから、特に性的分野だけが突出することはなかったのに、脳が萎縮することによって、水位が下がった海から岩礁が現われるように性的分野の脳だけがむき出しになる。そのことによる問題行動。このようにいわれています。

老人福祉施設にひとりで入所している高齢者の男性が、夜になるとさびしさや不安から、ほかの部屋にいる寝たきりの女性の部屋に忍び込んで添い寝をする……。

あるいは、妻や夫を亡くすと、一気に認知症が進行することが多いともいわれますが、妻を亡くした男性が認知症になって入所したあと、妻に体形や性格が似ている女性に対してだけ性的行動を起こす……。

こういうのは、その人の責任ではなく、人間の悲しい性、というべきかもしれません。

 

しかも、認知症は「短期記憶障害」を伴いますから、自分がやった性的問題行動をまったく覚えていません

ですから、老人施設内の三角関係でも、当事者たちがアルツハイマー型の認知症であるならば、あのときこうだったから仕返ししてやろうといったような、ネチネチとした恋愛トラブルにはなりません。

意地悪されたとしても、覚えていてどうこうするということにはなりません。つまり、認知症の人々の間でトラブルが生じたとしても、それはいつでも、突発的単発の出来事、ということです。

 

認知症のアルツハイマーで脳が萎縮している、さまざまな機能が失われているといっても、この性的分野のように脳の機能が残っている部分もあって、本人の自由な意思は完全にゼロになっているとは限りません。

そのことは、そのおじいさんが、施設で出会う多くのおばあさんの中から、特にそのおばあさんを選んでいることからも分かります。ちゃんと、自分の意思で、タイプのおばあさんを「選んでいる」わけです。

こういう問題行動を起こすおじいさん、おばあさんに対して、施設としては、前述のとおり管理者の責任がありますから、おじいさん、おばあさんの意思に反しても、問題を起こす人も含め、皆さんの安全を確保する手立てを考える必要があります。

関連書籍

西本邦男『枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか? 高齢者恋愛トラブル相談室』

生きてるんだもん、恋もするよ。長寿ゆえの悩み――財産目当てか、究極の愛か? 民事解決・プロ中のプロが教えます! 幸せなエンディングを迎えたいあなたのための法律のセーフティネット40。 ●セックスの回数も結婚の条件として通用するのか ●介護の現場はセクハラだらけ? ●特別縁故者、養子縁組、「負担付」遺贈という方法……ほか

藤原るか『介護ヘルパーはデリヘルじゃない! 在宅の実態とハラスメント』

介護職は重労働のうえ低賃金であるため、人手不足が続いている。それなのに2018年の調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答。介護歴28年、百戦錬磨の著者自身も、利用者から幾度となくベッドに誘われたり、パンツを下げ性器を見せられ迫られたり、キスをされそうになったりしたが、見事にかわし仕事をこなし続けてきた。そして「#Me Too」運動以降、セクハラをなくそうという流れは一気に加速。介護職におけるパワハラ・セクハラをなくし、介護職をよりやりがいのある仕事にするためのヘルパー奮闘記。

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枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか?高齢者恋愛トラブル相談室

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西本邦男

弁護士・日比谷南法律事務所。元日本弁護士連合会常務理事。平成15年度第二東京弁護士会副会長。高知県出身。中央大学法学部卒業。企業法務、交通事故、労働・倒産事件、民事暴力介入対策などに携わる。医療法人、社会福祉法人の監査役・顧問、また破産管財人、民事再生監督委員もつとめている。

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