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ゴルフは名言でうまくなる

2021.06.06 更新 ツイート

第179回

「飛距離は捨てても9割残る。方向性を捨てたら何も残らない」――ナサニエル・クロスビー 岡上貞夫

180ヤードしか飛ばなくても、パーを取れる確率は9割残る

ナサニエル・クロスビーは、アメリカのハリウッドスターでゴルフマニアとしても知られるビング・クロスビーの息子で、1981年の全米アマチュア選手権の優勝者だ。

その後プロになったものの、あまり目立った成績は残せていない。引退後、アマチュア資格を取り直し、父・ビングが設立したAT&Tペブルビーチナショナルプロアマなどのゴルフイベントに関わった。2019年と2021年のウォーカーカップではアメリカのキャプテンを務めている。

 

そんなクロスビーの表題の言葉は、いまのPGAツアーの飛ばし競争からすると古い考え方と思われそうだが、原理原則というものはそう簡単に色あせるものではない。

フィル・ミケルソンのスウィングもクラシカルと言われたりするが、50歳にして全米プロの最高齢優勝記録を更新したことを見ても、そのクラシカルなスウィングが色あせていないことがわかる。

それと同じように、クロスビーのこの言葉はいまも、とくにアマチュアにとってはまさに金言であろう。300ヤード飛ばしてもOBなら何も残らないが、180ヤードしか飛ばなくてもパーを取れる確率は9割も残る。これがわかっていてもなかなか実践できないところなのだ。

全米プロでのミケルソンは、飛ばすことで有利なホールでは規定ギリギリの48インチドライバーで飛ばしていたが、飛距離を捨ててでもフェアウェイキープしたいホールではブラッシー(2番ウッド)を駆使していた。

一般ゴルファーのみなさんは、そんなマネジメントをしているだろうか? ブラッシーはともかく、スプーンやユーティリティで確実にティーショットを運ぶようなことをしているだろうか。

ほとんどの方は飛距離を捨てられず、ドライバーでかっとばそうとしていることと思う。これは上級者であってもしばしば陥りやすいところなので、アベレージゴルファーはなおさらそうだ。悲観するほどのことではないのかもしれない。しかし、ショットが悪いわけでもないのに、上がってみるとスコアはイマイチというゴルファーは、アベレージゴルファーからシングル間近まで、クロスビーの言葉を思い出してみてほしい。

「練習場シングル」から「本当のシングル」になるには?

よく「練習場シングル」と呼ばれる人がいる。彼らは、街中の練習場やコースのドライヴィングレンジなどで見ていると、飛距離も出ていてすばらしい球筋のショットをしている。

しかも、毎回同じフォームでスウィングし、ショットされたボールも毎回同じような球筋で飛んでいて安定している。その様子を見る限りではかなり上手そうで、シングルハンディなのではないかと想像できる。ところが、ベストスコアでは80台前半が出たこともあるが、普段はなかなか90が切れないと悩んでいたりするのだ。

この連載を読んでくださっている方なら、このような練習場シングルさんと本物のシングルの違いは、アプローチショットの巧拙やパッティングの差なのではないかと予想するだろう。

たしかに、それもひとつの大きな要因ではある。しかし、練習場シングルさんはなんとか本当のシングルになりたいと、意欲も熱心さも持っている方が多いから、アプローチやパッティングもよく練習しているものだ。だから、80台前半が90台前半になってしまう、およそ10ストロークもの差異が出るような技術の差ではないことがほとんどだ。とすると、練習場でナイスショットを打つ技量はほとんど同じ。アプローチやパッティングの技術もそれほど大差ないということになる。

では、練習場シングルと本当のシングルの違いはどこにあるのだろうか。

それは、コースに出たときに、レイアウトやハザードの位置を見て、それに対応したショットが打てているかどうかなのではないだろうか。

どんなコースにも、池やバンカー、あるいは林やOBがせり出していて、危険なにおいがプンプンするホールがある。おまけに風が強く吹いていたりすると、腕前に関係なく不安でいっぱいになるに違いない。こんなときはプロでも完璧なナイスショットを打つことは難しいものだ。

ここで思い出してほしいのが、クロスビーの表題の名言だ。つまり、パーを取るには9割の可能性が残るショット、つまり飛距離を捨てて正確さを残したショットを打てるかどうかだ。

このような厳しい状況に遭遇したとき、練習場シングルさんはいつも練習しているナイスショットを打とうとする。ところがなんのプレッシャーもない練習場と本番のコースでは、不安の感じ方がまったく異なる。強い不安を感じたままショットして、いつもどおりのナイスショットが打てることは少ない。結果としてトラブルを招き、ダブルボギー以上の大たたきをしてしまう。

一方、本当のシングルさんは、こういう厳しい状況をしのぐために、たとえ飛距離を落としてでもまずまずの結果を残す術を持っているものだ。スプーンやユーティリティなど、曲げないために自信のあるクラブに持ち替える。そのままドライバーで打つにしても、ティーを低くして低い球筋を出し、早くランディングさせることで風の影響も受けず、左右への曲がりも少ないショットをする。

ドライバーでのナイスショットからみれば50ヤードも飛ばないショットだとしても、それがフェアウェイにあれば、そこからのショットやアプローチ、パットでまだ十分にパーを取るチャンスは残る。

逆にOBや池に入れてしまえば、ほぼダブルボギー以上が確定してしまう。スコアを守るのは、練習場で打っているナイスショットではなく、コースで打てる「飛距離を落としてでも、まずまずのポジションへ運ぶショット」なのである。

コンパクトなスウィングで低い球筋を打つ練習

これはティーショットだけでなくセカンドショット以降でも同様だ。コースにはアンジュレーションがあり、いつも練習場のような平坦なライから打てるとは限らない。左足下がりやつま先下がりなど、傾斜が大きいときにはとくに難しくなる。

そういうときにも、無理にグリーンに乗せるようなナイスショットを狙うのではなく、グリーンに届かなくてもまずまずのポジションへ運ぶようなショットを上級者は打っているものだ。だから、悪くともボギー、アプローチやパットが決まればパーでホールアウトできるのである。

この「飛距離を落としてでも曲げない自信を持てるショット」を、練習場シングルさんは練習すべきだ。逆に言えば、これをマスターすれば、すぐに本当のシングルになれるだろう。

ではどういう練習をすればいいのかというと、ボールの位置をやや右側に寄せて、バックスウィングはコンパクトに、そしてフィニッシュまで振り切らないで低い球筋を打つようにするといい。

「飛距離を落としてでも曲げない自信を持てるショット」は、基本的に低い球筋のショットになる。アイアンでもユーティリティでもスプーンでもドライバーでも、コンパクトなスウィングで低い球筋を狙って打てるようになることだ。

練習場で、「ネットを張った鉄骨の一番低いバーより上に打たない」などと自分に制限をかけてやるだけで、もう気持ちよく振ることはできなくなるだろう。だが、それが大事なのだ。

コースでは気持ちよくのびのびと振り切れるシチュエーションは少ないし、そういうときに飛距離を落とすことになっても曲がることはないと自信が持てて、まずまずのポジションへボールを運ぶことを練習するのが目的なのだから。

シングルになりたてのハンディ8とか9のゴルファーも、さらなる上を目指そうとして飛距離アップを図ると、同じ過ちを犯して2ケタハンディに逆戻りしかねない。クロスビーの名言は忘れないようにしたい。

中部銀次郎さんは「スコアは見てくれの悪いもののうえに成り立っている」と言ったが、低くてランの多い球筋のショットは見てくれが悪いかもしれない。しかし、それこそがスコアを9割守り、一日のラウンドを台無しにしない肝なのではないだろうか。

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参考資料:「「練習場シングル」と「コースでスコアが出せる人」の違いは!? シングルさんが考えた」みんなのゴルフダイジェスト、2021年5月31日  https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17455954

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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