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フィンランドで暮らしてみた

2021.04.02 更新 ツイート

フィンランドと日本は離乳食天国 芹澤桂

今まで子供を連れて旅した中で、離乳食を現地調達したことも多々あったのだけれど、離乳食の豊富さと安さにかけてはフィンランドと日本が飛び抜けて優れていた。

フィンランド、種類豊富。

4~5ヶ月用、8ヶ月用、12ヶ月、1~3歳用と細かく別れていて、1歳以上の瓶入りの離乳食には250g入りもある。

瓶入りがメインなのは難点ではあるけれど、湯煎でも電子レンジでも温められ、もちろん常温保存可能。空き瓶はきれいに洗って作り置きの離乳食を冷凍するのにも使える。

 

離乳食初期用の125g入りのもので日本円換算一食50円、大きいサイズ250gでも200円以下。

内容はパスタやミートボール、鮭はもちろん、トナカイの肉入りなんてものもあって面白い。大きい子用のものが塩気は抑えられているもののもはや普通の食事でゴロゴロした素材も入っているし、大人が食べてもおいしく食べ応えがある。

 

続いて日本、同じく種類豊富。

特にレトルトパウチ入りが軽くて便利だし、魚介類のバリエーションも多い。小分けにされているお米パウダーや野菜パウダーなんかは子供のその日の気分に合わせて外出先でもアレンジしやすく、お値段もレトルトパウチ一食分でやはり100円代とお財布に優しい。

郊外のドラッグストアは24時間営業のものも多く、うっかり買い忘れても車があればどうにかなるのもありがたかった。

これほど気軽に安価な離乳食が手に入る国は珍しいのかもしれない。

フィンランドと日本に比べて

対して、だ。

ギリシャのリゾート地に旅行したときは町中のスーパー4軒、大型スーパーからフランス系スーパーまで見て回ってようやく見つけた離乳食ひと瓶、8ヶ月用のもののみ(おそらく輸入品)、お値段約450円。

しかもドロドロのペースト状で、当時1歳を過ぎてフィンランドのしっかりかみごたえのある離乳食に慣れていた第一子は食べてくれなかったという苦い思い出がある。

その次にまたギリシャに行ったときはしっかり日数分の離乳食をフィンランドから持っていった。

イタリアでも1歳を過ぎた子の食事は見つけるのが難しかった。

1歳児というのは、たいがいのものは食べられるようになるけれど固いものは細かく刻まなければいけないし、塩っ気の多いものは体に悪い。

ピザのプレーン生地やフォッカチオは食べやすそうでいて塩分が多く、フィンランドから来ると小さい子供に与えるのは躊躇われる。

それで出来合いの温めるだけの離乳食がないかと探したけれど、あったとしても肉のペースト、野菜のペーストなど分かれていて、それだけで一食が完結するものは見つからなかった。

台湾でもドラッグストアでは輸入ものの高い離乳食ぐらいしか見つからなかったけれど、ホテルの朝食、食堂、どこにでもお粥があった。味のついていない白粥に持参した野菜パウダーなどを混ぜて子供にあげていた。

バルト3国へフィンランドからドライブ旅に出かけたときは、エストニアではフィンランドと同じように安価で豊富な種類の離乳食が手に入ったけれど、ラトビア、リトアニアと南に下っていくに連れどんどん見つけにくくなっていったのが面白かった。

買ってくればいいよ

きっとそれらの国の子は1歳前後でもう離乳食ではなく普通の食事、特にフィンランド のものと比べて柔らかいパンや、パスタや米を食べているのだと推測するのだけれど、それ以外は家の人が頑張って離乳食や塩気の少ない食事をせっせと作っているのかもしれない。

フィンランドでだってオートミールやセモリナ粉など国を代表するスーパー栄養食が離乳食に使えるし、野菜にしろ肉にしろペーストを手作りしている人もいるのだろうけど、ネウボラではっきりと「お店で買ってくればいいよ」と言われるぐらい、買うことへの抵抗がない。

それを手抜きだとか怠惰だとか言う人はまったくおらず、65歳を過ぎた義母でさえ市販品を初めての離乳食としていきなり与えようとしたぐらいだから、メイドインフィンランドの離乳食を信頼しているのだろう。

もちろんうちの義母が柔軟で、いわゆる嫌な姑タイプとは正反対の人だからというのも大いに関係しているのだろうけれど。

 離乳食進化中

さて、フィンランドの離乳食といえば瓶入りが多いと書いたけれど、最近若い有名シェフが「離乳食っていけてないよね。美味しそうじゃないし、赤ちゃんももっと深い味を楽しむ権利はあると思う」と立ち上げたブランドが、紙パック入りの、デザインも斬新な赤ちゃんの顔を前面に出したものを作っている。

ラインナップもさすが、フランス流野菜煮込み(ラタトゥイユ、ハーブたっぷりで美味しい)とか、チキンインドカレー(辛くない程度にスパイスが入っている)とかで今までのペースト食のイメージを払拭している。

それから前々からあるけれどパウチに飲み口についたものも、オートミールやヨーグルトはもちろんクスクスやパスタなど食事タイプのものもあり、子供が直接食べられ外出時も汚れ知らずと重宝している。

 

堂々とした離乳食

 

たまに驚くのが、こういった離乳食の広告がバス停や駅など「一般の人」が触れるところに貼られるところだ。

子供のいない人がそれらに関心を示すかどうかはまた別として、出生率が日本並みに低いこの国で(2017年で1.49、例年低下中、同年の日本は1.47)人生のうち数ヶ月しか使わない離乳食の広告を通りに打ち出されると、気のせいかもしれないけれど子育てを応援されているような気持ちになってくる。

ベビーカーを押して下ばかり見て歩いて、バスやトラムの乗降口のありえないほどの高低差を頑張って、もしくは誰かに手伝ってもらってもたもたと乗り降りして停車時間を長くしてすみませんと内心縮こまり、ああ今日もご飯作らなきゃと疲れた頭の隅でぐるぐる考えながらなんとか行き先に到着してふと頭を上げた瞬間に、よく知った離乳食の写真が目に飛び込んでくる。

もちろんその離乳食の存在は前から知っているから目新しい情報ではないのだけれど、こう通りに貼り出されるとみんなが知っているもので、安全で、恥じずに使ってもいいものだと背中を押される気がするのだ。もしくは、子育ては世界から隔離されておらず一般の人の生活の延長線上にあるのだ、と。

珍しくいいことばかり書いてしまったけれど、フィンランドと日本、離乳食環境が最強の国をよく知っているのはちょっとした誇りである。

(そこら中に離乳食の看板})

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芹澤桂 小説家

1983年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。2008年「ファディダディ・ストーカーズ」にて第2回パピルス新人賞特別賞を受賞しデビュー。ヘルシンキ在住。

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