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県民性の謎がわかる本

2021.01.14 公開 ツイート

「北海道民」の金銭感覚…結婚式は会費制の「祝賀会」が主流 山下龍夫

愛知県人は堅実で貯蓄好き? 家賃がもっとも安いのは愛媛県? 実は合理的な北海道人? 日本で一番お金を使う県は? 「京都の着倒れ」はウソ? ……県民性が表れるのは、方言や食べものだけではありません。お金の貯め方や使い方にも、はっきり県民性は表れるのです! 『県民性の謎がわかる本――47都道府県 あなたの金銭感覚は?』は、こうした都道府県ごとの金銭感覚に迫ったユニークな本。「同じ日本でもこんなに違うのか!」と驚くこと確実の本書より、代表的な都道府県の例をご紹介します。

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開拓の歴史が「道産子気質」を育んだ

かつてアイヌ民族の土地であった北海道は日本列島の5分の1もの広さをもつ。本格的な開発が始まったのは明治時代。全国から「屯田兵」として送り込まれた失業武士たちが厳しい自然と戦いながら新天地を切り開いていった。

(写真:iStock.com/ogal)

現代の北海道人=「道産子」たちも、開拓者としてのフロンティアスピリットを受け継いでいる。北国の過酷な環境で開拓を進めるためには、どこの出身だろうと、だれとでも力を合わせなければならない。古いしきたりや「家」意識にとらわれない自由でオープンな道産子気質が育まれてきた。「3日住めば道産子」と言われるように、北海道人はヨソモノをやさしく受け入れてくれるのだ。

また、農地が広大で隣りの家まで何キロもあったりするから濃密な共同体は成り立ちにくかった。細かいことは気にせず、他人のことには口出ししない個人主義は、きわめて都会的とも言える。

他の都府県へ転出する人の割合(転出率)が最も低いのが北海道。また、地元の大学に進学する割合も全国一だ。お爺ちゃん、曾お爺ちゃんという、近い世代が切り開いた土地なだけに、愛郷心はひとしおなのだろう。

・金銭感覚=気持ちは大らか。ビジネスはクールに割り切る

「でっかいどう、北海道」――こんなキャッチコピーで知られる北海道。広大な大地で暮らす道産子は、気持ちも大らかなのはたしかだ。ビジネスの現場でも、他の雪国のように何百年にも及ぶ地縁・血縁のしがらみはないから、外の人間を柔軟に受け入れてくれる。

しかし、ことお金の話になるとシビアだ。厳しい開拓の歴史の中では、合理的でなくてはならなかったからだろう。とはいえ、ビジネスはビジネスと割り切る都会的センスも持ち合わせているため、こみ入った根回しや、後味の悪い駆け引きが求められることは少ない。

・攻略法=女性は積極的。女性からのプロポーズも珍しくない

道産子は一般に男女とも人なつっこく、適度にサッパリしていて、つきあいやすい。「よく働き、よく遊ぶ」タイプが多く、遊びやイベントが好きだ。

特徴的なのは女性の「強さ」。開拓時代から男女平等に働いてきた歴史がそうさせたのだろう。あまりオンナっぽさを表に出さず、自立心は旺盛。男性が比較的物静かなのに対して、女性はハキハキしていて元気いっぱいだ。男性から告白される前に自分からプロポーズしてしまうことも珍しくないという。

ただし、めでたく結ばれても油断は禁物。大らかな道産子は世間体をあまり気にしないせいか、別れるのも簡単(?)。沖縄、大阪に続いて離婚率は全国第3位だ。

(写真:iStock.com/littlewormy)

300人が集まることも!

多くの地方では結婚式の後、結婚披露宴が催されるが、北海道では「結婚祝賀会」が一般的。新郎新婦が「披露」するのではなく、上司や友人たちが発起人(幹事)になってお祝いしようという趣旨だ。

結婚披露宴は招待制だが、祝賀会は会費制が当たり前。会費で費用をまかなうため、いきおいなるべく大勢呼んだほうがいいということになり、出席者100人なんてまだ少ないほう。200人、300人といった大規模な祝賀会も珍しくない。「親の上司の息子」などという、まったく面識のない人から招待状が届いたりするのも北海道ならではだ。

厳しい開拓暮らしの中では、新郎新婦に大きな負担がかからないように、近所の人々がお金を出し合って祝うのが習慣だった。そして、結婚式は数少ないおめでたいイベントだ。会費制の大規模祝賀会はこんな歴史の中で成り立った合理的な道産子スタイルなのだ。冠婚葬祭を質素にしようという「新生活運動」が提唱されていたという背景もある。

最近ではブライダル業者任せにしてしまうことも多いが、会費制の伝統だけはしっかり踏襲されている。会費の相場は8千円から1万円程度。受付で領収書を切るのも、合理的な北海道らしい(ちなみに北海道では香典にも領収書を切る)。料理に見栄を張ることもなく、引き出物も期待できないが、よほど親しい間柄でないかぎり御祝儀も必要ない。

それにしても、面識もないのに呼ばれてしまう側にとっては「合理的」なのかどうか――道産子自身もそう嘆いてはいるものの、そこは「おたがいさま」ということで丸くおさまっている。

関連書籍

山下龍夫『47都道府県 あなたの金銭感覚は? 県民性の謎がわかる本』

愛知県人は堅実で貯蓄好き? 家賃が最も安いのは愛媛県!? 実は合理的な北海道人!? 日本で一番お金を使う県は? 「京都の着倒れ」は嘘!? 四国四県でお金に対する考え方はどう違う? 犯罪が日本一少ない県は!? 47都道府県別の歴史、風土にのっとったお金の貯め方・使い方で、県民性が見えてくる! 隣のあの人の金銭感覚がわかる本。

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県民性の謎がわかる本

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山下龍夫

1962年、埼玉県生まれ。県民性に興味をもつ。また、朝鮮半島に関心が深く、韓国・北朝鮮の地域感情についても研究中。

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