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ゴルフは名言でうまくなる

2020.09.13 更新 ツイート

第148回

「ゴルフのストロークにおける微妙な動きについて、言葉で表現するのは不可能である」――ボビー・ジョーンズ岡上貞夫

結局は自分の経験から得た方法でプレーするしかない

球聖と呼ばれた男、ボビー・ジョーンズが著した『ダウン・ザ・フェアウェイ』は、彼が年間グランドスラムを達成する3年前、1927年に出版された。

1927年末の時点で、ジョーンズはすでに全米アマで3回、全米オープンで2回、全英オープンで2回優勝していて、これだけでも輝かしい、突出した戦績だった。

しかし、ジョーンズが球聖とまで呼ばれた理由は、むしろこの後の活躍にある。

 

1928年に全米アマ、1929年に全米オープン、そして運命の1930年には全英アマに始まって全英オープン、全米オープン、全米アマと優勝して、年間グランドスラムを達成した。

ニューヨークのブロードウェイでパレードを行ったアメリカンヒーローは、第一次大戦のヨーロッパ戦線で大活躍したパーシング将軍、大西洋を単独飛行で横断したチャールズ・リンドバーグ、第二次大戦の英雄アイゼンハワー、アメリカ人として初の地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士のジョン・グレン、そしてボビー・ジョーンズだが、彼だけは1926年と1930年の2回もパレードを行った。

その理由は、当時のゴルフの最高峰であった全英オープンで勝利したからだという。しかしそれだけなら、彼より前にウォルター・ヘーゲンが2度も優勝している。

ヘーゲンがプロで、ジョーンズがアマチュアだったというだけではこの疑問に答えられない。アメリカ人がボビー・ジョーンズという選手に抱いていた畏敬の念が、いかに大きなものであったかが見てとれるのではないだろうか。

ジョーンズが28歳で競技から引退したとき、ニューヨーク・タイムズは第1面でこれを大事件として報じた。スポーツ選手の引退を同紙が第1面で報じたのは、後にも先にもこのときだけなのである。

さて、表題の言葉は『ダウン・ザ・フェアウェイ』の第十四章「アイアン・プレー」に出てくる。この言葉の後に、こう綴られている。

「自分の経験から得た方法でプレーするしかないのだ――客観的な考察など関係なしに。スウィングの分析をするのは楽しいものであるが、だからといって読者諸氏が、自分のショットに自信を抱いていたのに、わたしの分析じみた行為によって妙に自信を失ったりしないようにと、切に願っている」

球聖と呼ばれたほどの人が、なんという奥ゆかしさであろうか。

「つべこべ言わずに、自分の教えるとおりにやればいいんだよ」と高飛車にレッスンする、多くの日本のプロたちに聞かせてやりたいような言葉である。

そうだ、私のこの連載についても、偉そうなことを書いてはいるが、反省せねば……。あくまでも、迷えるゴルファーがトンネルから抜け出すためのヒントにでもなればと思って書いているので、どうかご容赦願いたい。

勝負を決めた超ロング・アイアン

最近の一般ゴルファーの間では、ロング・アイアンという言葉は死語になりつつある。ユーティリティという便利なクラブができたからだ。

では、ボビー・ジョーンズのアイアンはどんな構成だったのか。「アイアン・プレー」によると、まずドライビング・マッシー、1番アイアン、2番アイアン、マッシー・アイアン、4番アイアン、そしてマッシーとなる。

これより短い、ロフトの寝たニブリックなどももちろんセットされていたが、大きな試合の大事な局面で記憶に残るアイアンショットを決めたのは、これらのロング・アイアンだったと述懐している。

現代では1番アイアンがドライビング・アイアンと呼ばれているが、ジョーンズのドライビング・マッシーはさらにロフトが立っていたようだ。

マッシー・アイアンも3番アイアンよりロフトが立っていたが、3番は使わずにこれで代用していたという。なんともはや難しそうな、超ロング・アイアンばっかりだ。

それぞれのクラブのロフトは本には書かれていないが、飛距離としては4番アイアンで175ヤードまでと言っているから、現代の5番アイアンぐらいのロフトだったのではないかと思われる。

そして、マッシー・アイアンは190ヤードまで、2番アイアンは200ヤードまで、1番アイアンは210ヤード、ドライビング・マッシーが220ヤードと続く。今よりもボールが飛ばない時代に、アイアンでこの飛距離とは驚くばかりだ。

この時代のゴルフは、今と比べてレベルが低かったのではないかと思う読者もいるだろう。しかし、今より飛ばないクラブとボールで、このような長い距離を1番や2番のロング・アイアンで打ち分けていたのだから、その技術はむしろ今より高かったのかもしれない。

そんなジョーンズにもアイアンショットが冴えないときはあって、そんなときはタイトルを逃がしている。反対に、ビッグタイトルを取ったときには、ひとつの際立ったアイアンショットが勝利を引き寄せたのだそうだ。

『ダウン・ザ・フェアウェイ』を書くまでに取ったナショナルオープンのうち、1926年の全英オープンではセント・アンズの17番で、そこまでタイの対戦相手が先にパーオンしている絶体絶命のピンチ。左サイドの砂丘に打ち込んでしまったジョーンズは、砂地の上からマッシー・アイアン(3番アイアン相当)で相手より近くへオンさせ、これでリードを奪い勝利した。

初めてのナショナルオープン勝利だった1923年の全米オープンはプレー・オフになった。対戦相手と一進一退を繰り返し、17番を終わってタイ。最終18番のパー4の2打目に打った2番アイアンはピン・デッドについて、優勝をもぎ取った。

1926年の全米オープンでは、先に上がった選手と同スコアで18番を迎えた。480ヤード・パー5の2打目は好きなマッシー・アイアン(3番アイアン相当)を選択、ピン奥にツー・オンさせ、バーディを奪って優勝した。

ロング・アイアンで強くヒットしない練習

ジョーンズはこのように、勝負所でのロング・アイアンで際立ったショットを放ち、勝利を手にしたのだ。その正確なアイアンショットを打てるようになった秘訣は何なのだろうか?

ある練習ラウンドで、アイアンショットがちらばって悩んでいるジョーンズに、ジミー・ドナルドソンが「右手を使いすぎている」と注意してくれたのがきっかけだそうだ。

それで、左手の動きにだけ神経を集中し、左腕1本で振るようにしたところ、球筋が幾分フェードするようになってコントロールできるようになったのだ。

ジョーンズは、ハリー・バードンがフェードボールで正確無比なショットを繰っていたことを知ってはいたが、その球筋に興味を持っていなかったと言っている。

しかし、このときから左腕だけでスウィングするイメージでフェードボールが打てるようになり、残りの距離に対して少しロフトの立ったクラブを使い、強くヒットしないようにしたのだ。

「(私のアイアンは)ショットを強くヒットしないことで、いい結果が出たのだ」

ロング・アイアンはたしかにボールが上がりにくく難しい。しかし、これが打てればドライバーからウェッジまで、すべてのクラブがうまく打てるのは事実だ。

いいスウィングを身につけるには、ロング・アイアンで強くヒットせず、確率高く打てるようになるよう練習することがいいのではないかと思う。

「難しいから打てない」とユーティリティを入れたことでお蔵になっている3番や4番のロング・アイアンを、再び引っ張り出して練習場に持って行ってみてはいかがだろうか?

今回のまとめ

1. ゴルフでいいスコアを出すには、やはりアイアンショットの正確さが必要

2. アイアンショットでは、残りの距離に対して余裕のある番手で、強くヒットしないことがいい結果を生む

3. すべてのクラブでいいショットが打てるスウィングを身につけるには、3番や4番のロング・アイアンで強くヒットしないスウィングを練習しよう

参考資料:ボビー・ジョーンズ、O・B・キーラー『ダウン・ザ・フェアウェイ』菊谷匡祐訳、ゴルフダイジェスト社、2011年

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。初の著書『ゴルフは名言でうまくなる』(幻冬舎新書)が好評発売中。

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