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フィンランドで暮らしてみた

2020.02.14 更新 ツイート

フィンランドで産んでみた!(なんでこうなるの篇)芹澤桂

生まれた息子はすぐに私の胸の上に乗せられた。カンガルーケア、と呼ばれているあれだ。

そのあとすぐ夫も上半身裸になり同じように息子を抱いて、写真を撮った。その時の写真を友人たちにも「生まれました」と送ったものだから、「なんで裸なの!?」と夫はたいそう変態扱いをされていた。

実はスキンコンタクトが重要視されているのは母親だけではない。父親と子供のそれも、母親のようにお腹に何ヶ月もいて関係を築いてきたわけではないからこそ重要だとフィンランドではされている。臍の緒も夫が切った。

 

 

そして私は胎盤を出して見せてもらったり、息子を洗ってもらったりして、しばらくしたら軽食をもらった。

本当は夕食が終わっている時間だけど、と見学していたレスキュー隊のお兄さんが持ってきてくれたのは、オレンジジュースにコーヒー、紅茶、ヨーグルト、フルーツ、パン。簡単なものだったけれど、今日は何も食べられないと思っていたからありがたかった。

そういえばレスキュー隊のお兄さんは、息子が生まれたあと感動で目を真っ赤にして泣いてた。毛布でくるくるに包まれた息子を抱いて、こんなに小さな生き物が存在するとは、と感慨深げに言ったりもしていた。赤の他人にそうさせる子供ってすごいなぁ、と人ごとのように思う。

(救急隊の方が持ってきてくれたごはん。
水分多め)

コニャックをどうぞ

軽食をありがたくいただくと、シャワーを浴びていいわよと助産師に言われる。シャワーは分娩室に付いている。

夫は妊娠中私がずっと我慢していた寿司をすぐさま買いに出ていて、息子は助産師がみていてくれることになった。

シャワーの前に痛み止めの錠剤と、尿を出すためという少量の液体薬を差し出された。なんかよくわからないけれど尿を出すのは大事らしく、「これよく効くから」と言われ、その液体で錠剤を流し込む。なんだかみょうな味だった。

これ何、と聞いたら助産師はウィンクした。

「コニャックよ、薬用のね」

私は慌てて、私お酒弱いんですけど、と訴える。すると「大丈夫大丈夫、ちょっとだけだから」と、ばっちーんと音がしそうなウィンクが返ってくる。

そうしたら案の定、シャワーで気を失った。

予め、大量の血液失ってるし気持ち悪くなったりしたら声かけてね、と言われていたので、心の準備ができていたのがよかった。シャワーを浴びている最中に立っていられなくなり、同じシャワー室にあるトイレに腰をかけて、しばらく意識が飛んだ。

助産師を呼び、彼女が来るまでの数秒で食べたばかりの軽食を全部吐いた。これでこの日吐くの3回。つわりも出産も終わったのについてない。

助産師に手伝ってもらい、ゆっくりと身支度をしてベッドに戻る。気分は最悪で、へろへろの状態だった。

つわりも終わったのに吐く女

夫が寿司を提げて戻ってきたので、気を失ったこと、吐いたことを報告する。コニャック飲んだ、と告げると、私のアルコール耐性のなさをよく知っている夫は血相を変えて「それやばいやつ」と言う。

私が酒で気を失ったという前科はありすぎる。酒に鎮痛剤を合わせると、完全に気を失うか吐くかもしくはその両方かで、それも過去に数例、夫は目の当たりにしている。

ベッドに戻るとまた一回ぐらい吐いて、吐きすぎたため結局尿は出ず、そのため入院病棟に移るのも夜中になった。

車椅子に座らされ、相変わらず毛布でぐるぐる巻きの息子をどうぞと腕に抱かせてもらい、その格好で病棟に移る。2人目の時も同じだったからどうやらこれが伝統らしい。

せっかく買ってきてもらった寿司は吐き気が酷くて食べられず、病室に移ってからようやくフィンランド名物ベリーのスープを飲めた。この時24時。破水してから24時間経とうとしていた。

スパルタの予感

病室に入ってからは看護師の管轄になる。

息子は車輪のついた小さなベビーベッドに置かれ私のベッドの横に寝かされ、ああようやく私も眠れる、となったとき、看護師が「じゃあこれから3時間置きに起きて授乳してね」と悪魔のような言葉を投げかけて爽やかに去っていった。日本のように新生児室に並べられる、なんてことはないのだ。

ここからスパルタの入院生活が始まるのだけれど、それはまた今度。

(お祝い用)

→「フィンランドで産んでみた」シリーズの他の回を読む

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フィンランドで暮らしてみた

気づけばフィンランド人と結婚して、ヘルシンキに暮らしてた! しかも子どもまで産んだ!

日本人の大好きな「かわいい北欧」。でも、その実態は?

暮らしてみて初めてわかった、フィンランドのちゃっかり賢く、ざっくり楽しい、意外な一面。

ゆるゆるまったり、マイペースにご紹介。

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芹澤桂 小説家

1983年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。2008年「ファディダディ・ストーカーズ」にて第2回パピルス新人賞特別賞を受賞しデビュー。ヘルシンキ在住。

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