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夏の怒りのデス・ロード

2018.06.29 更新 ツイート

「ご飯論法」「きな粉餅論法」を日常で使ったらただの無能大山くまお

論点をすりかえ、ごまかし、無視して、ねじ曲げる

iStock/fotokon


「ご飯論法」というものを聞いたことがあるだろうか? 

政治に多少なりとも関心がある人なら耳にしたことがあると思う。国会で議論する際、安倍晋三首相をはじめとする政府の人々が頻繁に使う「言い逃れ」の一種だ。法政大学の上西充子教授が発信して広まった。

「ご飯論法」とは「朝ごはんを食べましたか?」という質問に「(朝、パンは食べたけど、お米のごはんは)食べていない」と答えるようなやり方である。パンは食べたけど、お米の「ごはん」は食べていないから嘘をついたわけではない、と強弁するわけだ。質問に答えているように装って、実は答えていない。おまけに、やり取りが噛み合っていないことに質問者がすぐに気付けない言い方でもある。

上西氏が「ご飯論法」の典型として挙げるのが、立憲民主党の長妻昭政調会長と安倍首相のやり取りだ。獣医学部新設を目指す加計理事長が首相や秘書官と食事をしたり、食事代を支払ってもらうことは問題ではないかと長妻氏が質すと、首相は「別に食事を私がごちそうしてもらいたいから戦略特区で特別にやる、(中略)そんなことするって考えられないですよ」と反論した。利害関係者と食事をしたこと、食事代を払ってもらうことが問題だとするのかどうかという質問に首相は答えていない。

安倍首相だけでなく、佐川宣寿前国税庁長官、柳瀬唯夫元首相秘書官、加藤勝信厚労相らも「ご飯論法」の使い手だ。論点をすり替え、相手を煙に巻いて時間を稼ぎ、時間がなくなれば議論を打ち切る。「野党はいつまでモリカケやってるんだ」という声もあるが、原因は明らかに「ご飯論法」を続けている与党側にある。国会は空転が続き、莫大なお金がムダになった。

では、政府の要人たちが使う「ご飯論法」を、我々が日常生活で使ったらどうなるだろうか?

会社で上司に「取引先にアポイントをとる電話をしましたか?」と尋ねられ、「(アポをとる電話はしていないけど、電話自体は友達としたので)しました」と答える部下がいるとする。そんなバカな、と思うが、これが「ご飯論法」である。

部下の答えに上司は安心するが、していなかったことはすぐにバレる。そのとき、上司に責められた部下が「電話したかどうかの質問だと思っていました。丁寧さに欠けて申しわけありませんでした」と謝ったとしたら、上司は叱責する前に「ちょっとこの人は大丈夫か?」と心配するかもしれない。しかし、重要な仕事は任せられなくなるだろう。

例をもうひとつ。異性と甘い雰囲気になったとき、女性に「あなた、妻がいなかったっけ?」と聞かれたとする。そのとき、男性に「結婚式は挙げていない(妻はいるけれど)」と言われたら、女性は「ああ、結婚式を挙げていないのなら独身なのね」と思ってしまってもおかしくない。あとから妻がいることが露見して女性から責められても、男性は「嘘は言っていない」と開き直る。こんな男性、周囲からどう思われるだろうか? 

「ご飯論法」は急に思い浮かぶものではない。日常的に使いこなすのは難しい。だけど、「ご飯論法」を身につける良い方法がある。それは話す相手を尊重しないことだ。相手の真意がわかっていても、論点をすりかえ、ごまかし、無視して、自分の都合の良いほうに話をねじ曲げる。そのためには、相手を徹底的に見下せばいい。

「ご飯論法」はモラハラやDVを行っている人たちの考え方にもよく似ている。モラハラ加害者の特徴には「対人関係で相手を不当に利用する、つまり、自分自身の目的を達成するために他人を利用する」「他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない」「尊大で傲慢な行動 または態度」などがある(「Human Navi」より引用)。どこかで見た態度だと思わないだろうか?

「ご飯論法」のほかに「きな粉餅論法」というのもある。立憲民主党の川内博史衆院議員が「笑い話」として紹介したものだ。

部屋の中に一人しかいない。部屋の中に一つあったきな粉餅がなくなっていた。部屋の中にいた彼に「あなた、きな粉餅食べたでしょ?」と聞いたら、「絶対食べてない」と言う。「だけど、きな粉が口のまわりについているよ」と追及すると「この口のまわりのきな粉については現在調査中である」と答えた、というものである。

子どもがやっていれば微笑ましいが、大人がやっているのであればどうかしているとしか言いようがない。

安倍首相は加計理事長と食事もゴルフも頻繁に一緒にしているが、獣医学部新設の話は一切聞いたことがないと主張している。まさに「きな粉餅論法」だ。日常会話には録音テープも議事録もない(誰かのメモがあったとしても否定するだろう)。だからまったく問題ないというのだ。

既婚者が別の男性や女性とホテルに入って一夜を過ごしたことが夫や妻にバレたら確実に揉めるだろう。証拠写真だってある。だが、そこで「何もしていなかった」と強弁するのが「きな粉餅論法」だ。あまつさえ「それなら(セックスした事実を)証明してみろ」と逆ギレする。そんな相手とは、さっさと別れたほうがいい。

「ご飯論法」を使っていると、結局、他人からの信頼・信用を失ってしまう。「きな粉餅論法」はもっとヤバい。現在の内閣を支持しない人の約半分が「安倍首相の人柄が信用できない」と理由を挙げるのも無理はない。「ご飯論法」「きな粉餅論法」を首相をはじめとする政府の要人たちが国会という場で日常的に使っていることに、もっと危機感を持ったほうがいい。

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夏の怒りのデス・ロード

2018年上半期、不正と嘘と隠蔽が大量発生し、ほとほと怒り疲れている人も多い。最近は、そんじょそこらの嘘に驚かなくなってもいる。が、それでいいのか? という問いを牛のよだれのようにし続けるロング企画。

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大山くまお

1972年1月生まれ、名古屋市出身。著書に『名言力 人生を変えるためのすごい言葉』(SB新書)、『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方』(双葉社)など。現在、文春オンラインにて政治家の失言や問題発言を集めたニュース記事を連載中。「文春野球」中日ドラゴンズ監督も務める。

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