ちょっとせつなく、気づけばやたらと愛おしい。共感あり、笑いあり、感嘆ありの新連載。
北海道で活動する芸人・岡本雄矢さんの“短歌”と、それにまつわるミニエッセイは、何度噛んでも味が抜けない、魔法のチューインガムのようです。
“だいたい31文字”1本勝負、スタートです!
…と、その前に、自己紹介からまいりましょう。
* * *
はじめに ――僕の不幸を短歌にしてみました
はじめまして。「芸人歌人」の岡本雄矢といいます。スキンヘッドカメラというコンビを組んでいます。
芸人歌人? スキンヘッドカメラ? 聞いたことないな、別の記事に移動するか……と思ったあなた。ちょっと待ってください!
これは、 “不幸の手紙(不幸をお届けしちゃうやつ)”ならぬ、「あなたの不幸をちょっとずつ吸い取ってさしあげる連載」です。
この文章を最後まで読んでも、あなたになにかいいことが起こるとは言えませんが、ある人を笑顔にすることができます。そうです、僕です。
僕は札幌で芸人をしながら、自由律短歌を作っています。
短歌っていうのは、国語の時間に習ったように、57577の31音でできてます。
ところが「自由律短歌」というのは、そのルールから解き放たれたもので、もっと自由に、定型に捉われずに作っていこうじゃないかというものなんです。僕が作っているのは、それです。
短歌を作る人のことを歌人と言いますので、僕は「芸人歌人」というわけです。おそらくそんなふうに名乗ってるのは、この世の中に僕だけです。
僕が何を短歌にしているのか。
ひたすら小さな不幸に見舞われる日々を、短歌にしています。
僕の生活には、なぜ自分だけこんな目に合うんだ、と思うようなことが頻繁に起こります。
生きるのって難しいなと、いつも思っています。
言いたいことが今日も言えなかったなと、昨日も思ったし、今日も思ったし、明日も思うでしょう。
そんなことを短歌にし続けていたら、ありがたいことに幻冬舎さんに見つけていただき、ここに文章を書かせてもらうことになりました。
これを読んでくれている人の中にも、自分は不運だな、不幸だなと思っている人がいるでしょう。でも大丈夫です。僕があなたよりも、小さな不幸にたくさん遭っているよと“だいたい31音”で証明してみせましょう。
なぜ自分ばかりがこんなつらい目に遭うのかと自信を失ってる人がいるでしょう。大丈夫。僕もあなたと同じようなつらい目に遭っていると、“ほぼ31音”で綴りましょう。
生きるのって難しいなあと思っている人がいるでしょう。大丈夫。僕も同じくらい難しい人生を生きていると、“31音前後”で語ってみせましょう。
あなたに明日笑ってもらうために、僕の不幸を短歌にしてみました。
(※8月23日に1首目をアップします)
* * *
新刊『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』に続き、
『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』が文庫に!
読めば読むほど、なぜか幸せな気持ちにしてくれる短歌&エッセイをお楽しみください。
僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)
著者は、主に”不幸短歌”を詠む「日本にただ1人(たぶん)の歌人芸人」。
よく失敗する、言いたいことが言えない、反論したくても返せない、なぜ自分だけこんな目に合うのかといつも思う、自分には劇的なことが起こってくれないと嘆いて生きている……。
そんな著者から見える”世界”を、フリースタイルな短歌(&ときどきエッセイ)にしてお届け。
もしあなたが自分のことを「不幸だ」と思っているなら、「もっと不幸な男」がここにいると思ってください。
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