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片想い探偵

2018.07.08 公開 ツイート

第3回

推理作家×探偵対談
探偵直伝・浮気がバレない方法とは 辻堂ゆめ/HAL探偵社

ストーキング体質の女子高生、追掛日菜子が事件の糸口を次々と見つける新刊『片想い探偵 追掛日菜子』の著者・辻堂ゆめさんと、大手探偵事務所「HAL探偵社」の社長、浅見さんが対談しました。今回が対談最終回。みなさま、浮気はほどほどに。
文:篠原舞(箕輪編集室)

依頼の8割が◯◯調査

辻堂 探偵であることって周囲に言っていますか? 職業を聞かれたときは何とおっしゃっているんですか?

浅見 基本的には言わない人たちが多いです。接客業です、とか、前職の仕事をそのまま言うというのもありますね。

辻堂 探偵ですと言って、一番聞かれる質問はなんですか?

浅見 「やっぱり浮気調査が多いの?」ですかね。

辻堂 みんなそれは気になりますよね。広告とか見ていると、「浮気調査をお任せください」みたいなのが多いですよね。実際、浮気調査の割合はどれぐらいなんですか?

浅見 浮気調査の割合が8割です。

辻堂 8割! 他の2割は…?

浅見 人探しですとか、企業調査ですとか、素行調査、婚前調査とかそういったもろもろですね。

辻堂 素行調査とか婚前調査とか人探しっていうと、またやり方とかかかる時間も変わりますよね。

浅見 やり方も契約も違いますね。人探しの場合はどこの探偵社さんも契約は着手金と成功報酬。これは弁護士さんと一緒です。

辻堂 人探しになると先ほどの時間給みたいなものではなく、弁護士的な考え方になるんですね。人探しの場合はおいくらぐらいになるんですか?

浅見 たぶん業界全体として最低でも50万円はしますね。一番ポピュラーなのは着手金100万円、成功報酬100万円ですね。

辻堂 やっぱりそのくらいかかるんですね。

浅見 基本的に人探しって高いんですよ。一般的な人探しって、着手金の100万円を結構ばらまくんですよ。チラシ代にしたり、情報提供してくれた人たちへの情報提供料として使ったりとか。

辻堂 チラシも結構利用するんですね。

浅見 そうですね。メールアドレスだとか携帯電話の電波だとかを調べると個人情報保護法に反するので、できないことだらけになっているんです。

辻堂 ネットを使う場合は個人情報保護法に触れない範囲でやるしかないと。

浅見 それこそ『片想い探偵 追掛日菜子』であったような、日菜子がSNS使ってキーワード打ち込んで探して、特定をしていくという作業ですよね。

辻堂 やっぱりTwitterやInstagramを見てそこから特定するケースも多いんですか?

浅見 若い子は特にそうです。でも、いなくなる子の多いパターンって、全部アカウントを削除する子が多いんですよね。そうなるとSNSからは追えない。だから、地道にネットカフェとかにチラシ配って、こういう子がいないかって聞いた方が発見に至る率が高いんですよ。

探偵業界の繁忙期は12月

辻堂 全然ミステリーと関係ないですけれど、探偵事務所は勤務時間とか、普通の企業と違いますよね。

浅見 全然違います。普通にやると労働基準法に抵触してしまう勤務体系になることがあるので、この業界で多いのは調査員個人との業務委託契約か調査専門の会社に業務委託することですね。そうすると個人事業主または企業間契約なので労働基準というのは関係ない。

辻堂 そういう感じなんですね。

浅見 あと、この仕事をやっている限り、クリスマスはないので。

辻堂 あー、そうか! 確かに!

浅見 12月後半は業界全体が繁忙期です。

辻堂:それはちょっと新感覚。面白いですね。

浅見 クリスマスは年に1回の大きな恋人たちのイベントっていうのと、プラス、忘年会シーズンだから。浮気してる方から言うと、忘年会って言い訳にしやすいですよね。「今日は〇〇部の忘年会だから遅くなる」って言えちゃう。

辻堂 ああー。なるほど! よく聞かれるかもしれませんが、探偵になってみて、自分の彼女が浮気してるって分かりやすくなるものですか?

浅見 自分が恋しちゃうと盲目になっちゃう。好きになっちゃった相手のことを怪しいなって何となく頭の奥底で思っていていても、好きが打ち消しちゃうんですよね。多分それは誰でもあると思うんですけれど。

辻堂 やっぱり普段いくら調べたりしていても、自分が好きになっちゃうと、恋の力に負けちゃうんですね。

浅見 負けちゃう(笑)。

辻堂 面白い(笑)。 逆にどうやったらバレないように浮気を完遂できるかっていうアドバイスはありますか?

浅見 よくいろんな取材で聞かれるのもそれなんですよ。

辻堂 へえー!

浅見 状況にもよるんですけれど、基本的にはラブホテルは使わない方がいいですね。

辻堂 出入りを撮られるからってことですか?

浅見 そうですね。マンションも外から見える戸だけじゃなくて、オートロックのマンションで内廊下にしか扉が付いてないところ、もしくはビジネスホテルやシティホテルがいいですね。探偵側からすると全く出入りが撮れないんで、証拠としてはかなりきつくなってきちゃう。

辻堂:おおー!

現実とフィクションの探偵の違い

辻堂 探偵さんの目から見て、主人公の追掛日菜子ってどうでしたか?「こんな奴いないだろう」とか。

浅見 これに近い子はいると思うんですよね。アイドルの追っかけをやったりしている子とか、好きになると盲目になってバーっと調べたりする。特に現代の子ってこういう傾向はあると思うんですよ。だから僕は日菜子のこれからの成長を見たいなと思って。せっかくタイトルに「探偵」ってついていているので、結果探偵になっちゃったねっていう方が良いな。

辻堂 面白い。シリーズにできたら、就職編でぜひ。

浅見 そうすると探偵の推理小説のまた一つ違う形のものができたりとかするので。それがドラマ化になったりとかするかも。

辻堂 すごい! 最後に一個質問したいのですが、ミステリー小説に出てくる探偵って推理がメインじゃないですか。ああいうものを見て現実の探偵と一番違うところはどこですか?

浅見 一番違うのは、対象者の前に探偵として出ちゃうっていうところ。

辻堂 ああ、そこか! 超根本的な所ですけれど。

浅見 金田一耕助もそうですけれど、被疑者がいっぱいいる中で、「探偵だ」って前に出ちゃう。現実は調べづらくてしょうがないです。裏でこっそり調べるっていうのが本来の探偵じゃないですか。

辻堂 確かにそう言われるとそうですね(笑)。ありがとうございました。

関連書籍

辻堂ゆめ『片想い探偵 追掛日菜子』

追掛日菜子は舞台俳優・力士・総理大臣などを好きになっては、相手の情報を調べ上げ追っかけるストーキング体質。しかしなぜか好きになった相手は、殺人容疑をかけられたり脅迫されたりと、毎回事件に巻き込まれてしまう。今こそ、日菜子の本領発揮! 次々と事件解決の糸口を見つけ出すが――。前代未聞、法律ギリギリアウト(?)の女子高生探偵、降臨。

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辻堂ゆめ 作家

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『あなたのいない記憶』(宝島社)、『悪女の品格』(東京創元社)、『僕と彼女の左手』(中央公論新社)がある。

HAL探偵社

全国に15支店を展開。出演メディア多数(https://hal-tanteisya.com/media/) HP:https://hal-tanteisya.com/

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