
SNSや動画を見ていたら思いがけず「不毛な時間」を費やしてしまった――。思い当たるフシがある人も少なくないでしょう。自己嫌悪に陥ってしまうかもしれませんが、その人がそうした行動を取ったのには理由もあります。
「アドラー心理学ベースの問いかけ」により、のべ3万人以上の「ムダな行動」を改善してきた佐藤悠希さんの著書『不毛な時間をゼロにする』(サンマーク出版)が出版されました。何も生み出さなかった「不毛な時間」が再び動き始め、「建設的な時間」が流れていく感覚をもたらしてくれる一冊。本書から、一部をご紹介します。
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「人生の主人公は誰か」、それはわたしのコーチングの土台となっている「アドラー心理学」と深く関わります。アドラー心理学の特徴は、わたしたちにこう問いかけることから始まります。
「あなたは、何を目的に、その行動を選んでいるのか?」
すべての人間の行動には、目的がある。
これがアドラー心理学の基本的な考え方です。
たとえば、スマホでSNSや動画を見ていたら、知らない間に2~3時間が経っていた。
ソファーでちょっと休むつもりだったのに、あっという間に日が暮れていた。
こういう時間の溶かし方、ついついわたしもやってしまいます。
原因があるからではなく、目的があるから行動している
一見すると無駄な時間を過ごしているように見えます。しかし、アドラー心理学に基づくと、これらの「無駄に見える行動」にもきちんと理由がある、目的がある、とされます。
もしかしたら、いまの仕事が合わなくて、その苦しみから逃れるために、スマホに救済を求めているのかもしれません。
もしかしたら、家事をこれ以上続けると心身ともにツラくなると無意識で気付き、ソファーに助けを求めたのかもしれません。
スマホやソファーという【原因】があるから行動しているのではなく、【目的】があるから行動しているのだ、という視点です。
ネガティブな行動の裏にも、すべて「目的」があると考えます。
「主人公」が不在の物語になっていないか
わたしは大企業から中小企業まで、これまでのべ3万人超のビジネスパーソンに、コーチングを通して「不毛な時間」をゼロにする方法をお伝えしてきました。そのなかで気付いたことがあります。
「あなたは、何を目的に、その行動を選んでいるのか?」
この質問にはっきり答えられない人が、思っていた以上にたくさんいるという事実です。これは言い換えると、【主人公としての解像度】が足りない状態といえます。
どういうことか。
まず、アドラー心理学では【誰もがその人生の主人公である】という大原則があります。
人間は誰しも本能的に、自分で生き方を決めたい、という欲求を持っている。
この【自己決定性(主体性)】を持っているかどうかが、人生の豊かさを決める、という考え方です。
自分の人生をどう生きるかを、自分が決める。
自分の時間をどう使うかも、自分が決める。
そのような主体的な行動を選べる人は、不毛な時間とはまったく無縁であり、文字どおり「主人公感」にあふれた人生を歩めるのです。そして、
「主体性を問う」
「未来を問う」
「多様性を問う」
これら3種の問いかけこそが、わたしたちの「主人公としての解像度」をグッと引き上げてくれるのです。
「何のために、どう行動したいか」が自分の内側からあふれ出る
「主体性」と「未来」を問うことは、直接的に「自分がこうありたいと願う姿」を具体的にイメージさせてくれます。いずれは「何のために、どう行動したいか」が、自分の内側からあふれ出るようになります。
「多様性」を問うことは、人生の主人公は自分だけでなく、そこにいる相手も「その人の人生の主人公である」と認識させてくれます。その結果、他人への無用な争いや過度な期待・妄想などが激減します。最終的には、自分の行動だけに意識を集中させられるようになります。
このように「主人公としての解像度」が高くなると、心と体のズレは一気に解消されます。何かをしていて不毛だと感じる時間が、どんどん減っていくのです。
日常生活が「あなたの生涯の物語」だとして、そこにあなたという主人公は堂々と立っていますか?
3つの問いかけを使って「主人公感」を引き上げていきましょう。
不毛時間ゼロ・ワーク「心のズレ矯正」
①1日の始まりに、今日1日「どんな1日になったらいいか?」「何を大事に過ごしたいか?」をメモしてみる。
②それぞれ「どうしてそう思ったのか?」を考えてみる。
③寝る前に「10点満点中何点だったか?」をチェックしてみる。