
長年、ブログで生活や人生の悩みとして寄せられるあらゆるモヤモヤを解決してきた斗比主閲子さん(@topisyu)。お金や投資に関する投稿も多いのですが、実は、会社員として働きながら資産2億円を達成した億り人でもあります。そんな斗比主さんによる初のお金本『ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話』より、一部抜粋してお届けします。
ブラック労働で気付いた「お金があれば自由になれる!」
新卒で勤めた企業での働き方は、今でいえば「ブラック労働」でした。一般的に、1か月100時間以上、2~6か月平均で80時間以上の残業をしていると過労死ラインとされますが、私は平均的に毎月100時間残業をし、月130時間を超えることもしばしばありました。
毎月の勤務日が20営業日、終業時間は17時半とすると、月に130時間の残業をするには、単純計算で毎日24時まで働くことになります。当時の記憶はおぼろげですが、「終電に間に合ってラッキー!」と何度も思ったことはよく覚えています。
仕事に早く慣れたい、一人前になりたいという気持ちで何とか耐えていたものの、自分はもうダメかもしれないという出来事がありました。
ある夜、いつものように遅い時間帯の電車に乗り、周囲には酔っぱらっている人もいる中、最寄りの駅に到着しました。当時は磁気の定期券を利用していましたが、改札で定期券の代わりに自宅の鍵を挿入しようとしていたのです。すぐに気付いて定期を入れ直しましたが、金属でできている普通の形状の鍵と、プラスチックカードの薄い定期券を間違えるなんて相当疲れているんだなとさすがに自覚しました。
自宅でも会社の携帯電話を常に手元に置いていて、起きている限り何時でも電話を受けていました。当時付き合っていた人には、私が就寝後に突然起きたと思ったら、正座をして空中に向けて誰かと話をし、パタッと倒れるようなことが何度もあったと指摘されました。異常な緊張感で、寝ていても心が休まっていなかったのでしょう。ちょっとしたホラーです。
会社にはうつ病で休職する人もいましたし、ブラック労働の中で生き残ったサバイバーの先輩からは「この仕事は、新卒5人のうち二人は辞めて、二人は病気になり、生き残れるのは一人だけ」という話も聞き、いよいよもって「今度は自分の番ではないか?」と思うようになります。
そんなある日、たまたま読んだのが、『ゴミ投資家のための人生設計入門』(海外投資を楽しむ会)です。タイトルも特殊だし、著者名もよく分からない、表紙もリゾート地で一家団欒しながら夫はノートパソコンに向かっているというイラストで、どうして私がこの本を手に取ったか正直よく覚えていません。ゴミ屋敷に住んでいるから、ゴミというキーワードに敏感だったのでしょうか。
ざっくりと本の中身を紹介すると、日本人がこのまま総中流ではいられなくなると予想される中、日本人のこれまでのお金との付き合い方への批判と、理想的な生き方が語られていました。具体的には、当たり前に行われてきた住宅ローンを利用することや多額の生命保険を批判し、経済的な自由を獲得するための国に縛られない生き方や、海外への投資方法等が多岐にわたって紹介されています。
本の主張や内容は今となっては目新しさはないかもしれませんが、私が読んだ頃は、この本に書かれていることはまだまだ一般的ではなく目から鱗の連続で、興奮しながら読み切ったことを今でも覚えています。
20代半ばでブラック労働に辟易し、「自分は何のために人生を生きているのか」「仕事に潰されていいのか」と悩んでいた私は、この本の影響を受け、「世の中には早期に資産形成をして海外で悠々自適に暮らしている人がいるじゃないか」と、自分も経済的自由を獲得しようと考えるようになったのでした。今で言うところのFIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指し始めたのです。
「ライブドア・ショック」が吹き荒れる中、投資スタート
ブラック労働の中で「経済的な自由」を得るために投資を始めようと考えた私。
そうはいっても、投資経験はゼロでしたから何から始めていいか分かりません。『ゴミ投資家のための人生設計入門』では、海外の証券口座を開設し、海外の金融商品を購入することを推奨していましたが、正直言ってハードルが高すぎました。
私が投資を始めようとした2000年代前半は、アメリカではGoogle、日本ではライブドア、楽天、サイバーエージェントが上場し、IT企業への投資がちょっとしたブームになっていました。
私の周囲でも、IT企業に投資する人はたくさんいました。私も便乗して投資をしようと思ったものの、どの企業の株価が上がるのか、いくら投資したらいいか、どうにも決めきれません。
投資をする決断ができない私を尻目に、「今日は〇〇万円儲かった! 働いているのが馬鹿らしくなるね!!」とわざわざ報告してくれる友人の話を聞きながら、まずは投資の知識を身に付けることにしたのです。
主な情報収集源は、インターネットと本です。
当時はネット証券の勃興期で、マネックス証券、楽天証券、SBIイー・トレード証券(現在のSBI証券)が個人投資家向けにたくさんの情報発信をしていました。マネックス証券では内藤忍さん、楽天証券では山崎元さんが有名でしたが、一方で、証券会社のセールストークを聞いているだけでは良くないと思い、検索して引っかかった個人投資家のブログを大量にお気に入りに登録し、毎日巡回していました。
また、個人投資家がブログでお勧めしていた本を片っ端から読んでいきました。その中で、私の金融リテラシーを大幅に向上させてくれ、投資方針を決めるのに役立ったのが、『金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか』(吉本佳生著/光文社新書)と『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント』(北村慶著/PHP研究所)です。
『金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか』は、預金、外貨運用、国債、保険、投資信託など、世の中に存在している金融商品の広告を取り上げて、当たり外れを紹介している本です。
『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント』は、当時流行していたデイトレーディングのような短期投資が「負ける投資」で、世界の大手年金基金が行っているような長期投資が「負けない投資」だと紹介している本です。
私がこれらの本を読んでいた、ちょうどその時期に「ライブドア・ショック」が起きました。2006年1月、ライブドアへの粉飾決算疑惑で強制捜査が行われ、パニックに陥った個人投資家による売り注文の増加に耐えられなくなり、東京証券取引所が全銘柄の取引を停止したのです。その後、証券取引法違反で堀江貴文さんが逮捕され、ライブドアが上場廃止となったのは皆さんもご存じの通りです。
個人投資家界隈は阿鼻叫喚の地獄絵図でした。まだTwitter(現X)は普及していませんでしたが、個人ブログで損失額を公表する人はたくさんいましたし、何より、投資の利益でブイブイ言わせていた友人が「〇百万円の損が出た……。もう投資なんてしない……」と投資家引退を宣言していました。
私はそれらを眺めつつ、「一時のブームに流されず、長期的に資産を増やすのが大事!」と固く誓って、投資を始めることにしたのです。
ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話

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