キャディにラインを聞くなんて、推理小説の犯人を聞くようなもの

 ケリー・ミドルコフは、歯医者からプロゴルファーに転じて話題を呼んだ名プレーヤーである。1949年、56年に全米オープン、55年にマスターズのメジャー3勝。PGAツアー37勝。86年にはゴルフ殿堂入りを果たしており、パットの名手としても知られている。

 パッティングラインをキャディさんに聞くプレーヤーはけっこう多いが、中部銀次郎さんは「推理小説の犯人を聞いてしまうのに等しく、パッティングの面白さを放棄している」と言っている。

 どのように曲がるパッティングラインなのかを自ら推理し、自ら検証するために打ってみる。それが推理通りカップインしたときの快感は、キャディさんに聞いたラインに打って入ったときの何倍もの感激があるものだ。

 それに、キャディさんに聞いたラインに打って入ったとしても、それはたまたまでしかない。

 なぜなら、キャディさんはプレーヤーがピッタリの距離感で打とうとしているのか、あるいは強めにヒットしようとしているのか、ストロークタイプなのかタップタイプなのか、芯でヒットして転がりのいいタイプなのかインパクトがコスレ気味で転がりが弱いタイプなのか、それらのことがわかって「カップ2つスライス」なんて言っているわけではないからだ。

 そもそも、「カップ2つ」というのも曖昧で、カップの真ん中から2つ分なのか、カップの端から2つ分なのか、キャディさんとプレーヤーでは基準が違っているかもしれない。

 それで、「キャディの言ったとおりに打ったのに入らなかった」と責任転嫁されては、キャディさんも迷惑な話だ。

 パッティングラインを推理するのに、キャディさん以上に確かな情報をくれるのは、同伴競技者のパッティングである。

 同伴競技者のパッティングで、ボールがどんな転がり方をするのかを見ることによって、グリーンの主要な傾斜はだいたいわかるし、とくにカップ周辺での転がり方が見られれば、たとえそのプレーヤーと自分のストロークタイプが異なっていたとしても、自分のラインを推理する大きな手がかりにはなる。

 富士山周辺のゴルフ場など、地形全体が傾斜していて錯覚を起こしやすく、ラインが読みにくいグリーンもある。それでも、同伴競技者のパッティングはどんなときでも参考になるから、自分のボールは速やかにマークし、ほかのプレーヤーのパッティングやアプローチショットに目を向ける余裕を持ちたいものだ。

 それらを参考に、グリーン上の“推理小説の犯人”を自分で推理し、自分のストロークと照らし合わせて検証してみるほうがワクワクして楽しいし、読者諸兄のパッティングを向上させることにもなると思う。

 

読めば読むほどわからなくなる

 さて、パッティングラインを推理するにあたって、同伴プレーヤーのパッティングの結果が大きな参考になることは納得いただけると思う。しかし、実はそれ以上に第一印象がもっとも正しく重要だというのが、表題のケリー・ミドルコフの言葉である。

 そうであれば、ストロークタイプが違う他人(同伴プレーヤー)のパッティングなど、考えすぎを招く余計な情報なので、見ないほうがいいという逆説も考えられる。

 この辺は、自分にはどちらがいいのかを、自らご判断いただきたい。

 オンしたボールに向かってグリーンに上がっていくときに、少し低い位置から大きな視野でグリーン全体を見ると、グリーンのどこがいちばん高く、傾向としておおむねどちらへ傾斜しているのかを知ることができる。

 さらに、自分のボールが止まっている位置からカップへの傾斜も、グリーンに上がる前の大きな視野で読んだ傾斜がほとんど正しい。つまり、スライスかフックか、上りか下りかというライン読みに必要な傾斜は、近くで見るよりも遠くから見て感じる第一印象が正解なのだ。

 その上で、どの程度曲がるのかと、転がりのスピードがどの程度なのかを、ボールの近くに来て読むのであるが、そのときはあんまり精微に考えすぎないほうがいいようだ。

 感性は理屈とは違う。「よく考えるゴルファーは、ショットはいいが、パットはまるでダメ」という古い格言もある。ミドルコフはパッティングでは最初に見た「閃(ひらめ)き」を大事にして、感性を生かせと言っているのだ。

 自分の感性を信じ、歯切れよく打つ人にパット名手が多いと言われれば、たしかにそのような名手がたくさん思い浮かぶ。

 鬼才といわれた戸田藤一郎プロも、「第一感が正しいんや。グリーンへ上がったら、(ラインを見るため)うろうろせず、さっさと打つ奴がパットはうまいんや」というのが口癖だった。

 ラインを読みすぎると迷ってくる。そうなると、パッティングに歯切れがなくなってしまう。

 歯切れが悪くなるとストロークも緩み、ボールがラインに乗らないというのが戸田プロの言いたいことなのだろう。

 パットの名手として名高いレオ・ディエゲルも同じことを言っている。

「パットの下手な者ほど、傾斜がどうの、目がどうのとグリーンを読む。読めば読むほどわからなくなる。カップの向こうに行ったり来たりして、結局ミスじゃあ怒るぜまったく。 さっさとミスをするほうが、重いものを引きずらず、リズミカルなプレーができるというものだ」

 

直感に従い、だいたいの方向に打てばよろしい

 そのディエゲルが、史上最高のパッティングの名手と絶賛するのが、南アフリカのボビー・ロックである。

 5歳でゴルフを覚えて間もなく、父親の友人からL字型のヒッコリーシャフトのパターをもらったロックは、後生大事に手入れをしながら、ついに生涯、その一本だけを使い続けたと言われている。

 それだからであろう、「浮気者はパットが下手」とはロックらしい言い草であるが、あまりによく入るので、仲間たちは恐れと畏敬の念を込めてそのパターに「ガラガラ蛇」という異名を献上したそうだ。

 ハンディが8歳で14、18歳で+4になったロックは、まさに天才と呼ぶにふさわしいと誰もが認めていたが、ロックのもっとも得意とする必殺技こそがパッティングだったのである。

 当時の『ゴルフ・イラストレイテッド』誌には、「ゴルフではストローク数の半分がバターによって占められるのが常識。ところがこの新人は、ガラガラ蛇と呼ばれる古ばけたパターを自在に操り、この常識を変えようとしている。彼の18ホールでの総パット数は、この1年間というもの、ただの一度も28打を超えたことがない」と書かれているとのことで、これはもう、驚くしかない数字である。

 1947年から参加した米ツアーでは、2年半の短い期間に優勝13回、2位10回、3位7回。49年に出場した全英オープンに優勝、翌年も連覇し、合計4勝を挙げている。

 さらに驚くべきは、20年間で一度もベスト10位から落ちたことがないという、安定度抜群の実績である。それもこれも、「パットに優れた者は常に勝つ」という格言のとおり、ロックのパッティングがいかに優れていたかがわかろうというものだ。

 晩年は、ビッグスリーの一人、あのゲーリー・プレーヤーの師となり、すべての技術を彼に注いだと言われており、次の言葉を残している。

「パッティングでは直感で決めたラインを大切に、だいたいの方向に打てばよろしい。案外まっすぐなラインが多いものだ」

 ロックもやはり、直感を大切にすべきと言っているのだが、名手が「だいたいの方向に打てばよろしい」とは意外であり興味深い。

 ゴルフというゲームは、上達すればするほど、経験が増えれば増えるほどに、逆に難しくなってしまう部分がある。経験豊富になると、ゴルフの持つ怖さが身にしみてきて、それが心を脅かし、なめらかに体が動かなくなることがあるからだ。

 しかし、私も含めパッティングの下手な人は、いろいろと考えすぎなのが原因であるのならば、まだまだ改善する余地はあるのかもしれない(と、期待したい)。

 多くの名手が同じような名言を残しているので、パッティングでは、「(ラインを)読みすぎない」「(悪い結果を)予感しすぎない」「(多くを)考えすぎない」の3つを心がけ、第一印象・直感に従って小気味よくストロークしたほうが、名手に近づくことができるのは間違いないようである。

 

今回のまとめ

1. パッティングのライン読みは、キャディさんに聞くのではなく、自分自身で推理したほうが面白いし上達する

2. ライン読みは、グリーン全体が見える少し離れた低い位置から大きな視野で見て、最初に閃いたラインが重要

3. パッティングでは「(ラインを)読みすぎない」「(悪い結果を)予感しすぎない」「(多くを)考えすぎない」の3ない主義で小気味よくストロークしよう

 

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